企業における女性の活躍推進は、ダイバーシティ&インクルージョン(DE&I)推進の中でも最優先課題の1つとされています。近年、この取り組みが急速に広まってきています。政府も『女性版骨太の方針』において、女性役員数や管理職登用に関する目標値を設定するなど、積極的な施策を打ち出しています。しかしながら、この推進には課題を抱えている人事担当者も少なくない現状にあります。
男性管理職が女性を管理職に登用する際の具体的なノウハウについて、有識者の宮原氏が基調講演を行いました。 宮原氏は、女性部下を持つ男性管理職が、これまで女性の登用実績がなかった状況を踏まえ、効果的な女性登用の方法を解説しました。 具体的な事例を交えながら、女性の管理職への登用を推進していくための実践的なアプローチを紹介しました。
女性活躍推進の壁を打ち破れ!管理職の気づきを促して次なる一歩を加速させる方法
男性管理職特有の行動原理 ~J-Winでの男性NWの会 研究成果~
女性活躍推進支援団体のNPO法人J-Winは、「女性活躍推進を阻む壁」の調査結果から、さらに職場のマジョリティ(オールド・ボーイズ・ネットワーク)による、マイノリティ排除問題に注目し、J-Win加盟企業の女性管理職にアンケートを取り、男性上司から受けた問題行動を自由記述式で回答いただいた上で、男性を科学する研究チームを結成して女性活躍を阻害する男性管理職固有の行動分析と行動を変えるポイントを提言しました。
男性の行動分析
一番の問題は、これらの行動を男性が「無意識に」「悪気なく」行っていることです。
日頃の自身の言動が、女性のモチベーション低下につながっていることに「気づき」「自分ごと」として変えていくことが重要なのです。
男性の”あるある”行動を変えるポイント10カ条
1. 行動(成功体験)の押し付け
成功体験は押し付けず、自身の宝物として心にしまっておく
2.上司への忖度
上司の顔色より、部下の仕事の成果を見る
3.男女間の不平等
仕事の進めやすさ、振りやすさに関係なく、 平等に仕事が分担できるよう、マネジメントする
4.傾聴が無い
話の腰を折らず、最後までしっかり聞く
5.理解不足・決めつけ
一人ひとりの仕事に対する価値観を尊重する
6.放置
仕事の目的、背景をしっかり説明した上で、部下に仕事を任せ、伴走する
7.男性固有のネットワーク
部下から誤解を招く固有のネットワークづくりはやめる
8.男性固有のイベント
物事はオープンな場所で決める (喫煙所、飲み会、ゴルフ場等では決めない)
9.生活リズムの男女差
歩行や食事のスピードに配慮する
冷房のかけすぎに注意する
10.合間(ランチタイム、移動時)の使い方
歩行中もランチタイムも(部下との) 貴重なコミュニケーションの機会と捉える
無意識に悪意なく行っている行動なので、気づきに変えていきながら、男性と女性の本音の思いをすり合わせていくことがとても大事です。
女性活躍推進は第四段階へ
1986年に男女雇用機会均等法による男女の処遇の是正から始まりました。それから1992年に仕事と育児・介護の両立支援のための育児介護休業法ができて、女性活躍推進法が施行されたのは、2016年になります。昨今では、2022年に改正助成活躍推進法女性版骨太方針ができました。女性活躍推進の加速化や女性役員数値目標が発表される中、我が国の男女共同参画の現状は諸外国に比べ立ち遅れております。
昭和の時代に形づくられた各種制度や男女間の賃金格差を含む労働慣行、固定的な役割分担意識など構造的な問題となっているのです。
女性活躍推進は、ダイバーシティマネジメントのイントロダクション
経営学者で早稲田大学商学学術院教授の谷口真美氏は「女性をいかにマネジメントし、人材としていかしていくか。これさえできない企業は、もっと高次なダイバーシティマネジメント(グローバル環境や新規事業に求められる多様性マネジメント)が必要になった時に対応できるはずがない」と言っています。
もはや女性活躍は、啓発段階に終焉し、組織の中でいかに進めていくのかというステージに至っているのです。
では、どのように育成していけばよいのでしょうか。
育成の視点からの男性管理職の関わり
女性管理職の育成・登用に関する調査によると、上司の励ましや評価が昇進意欲を高める結果が男性よりも女性の回答が顕著にでております。
また女性の中には、自分の能力を過小評価し、 実力を偽っているように思い込む傾向が散見される(※「インポスター(詐欺師)症 候群」と呼ぶ)こともわかっております。
そのため責任ある仕事を任せたということは、それだけ評価されていると上司が関わることによって本人が思うことが重要です。その他に、男性管理職の望ましい関わり方をご紹介します。
1.共感力を高める
男性と異なり、女性は共感されることでモチベーションが向上する傾向がある。まずは“傾聴スキル”を磨き、気持ちに寄り添う
2.背中を押し、フォローする
難易度の高い仕事をアサインする場合、リスクを避けがちなタイプがいることを知り、「挑戦することでの成長」や「自分がフォ ローする」ことを明言する
3.体調面(健康に充分配慮する)
つい自分の経験をベースに仕事を任せてしまうが、女性特有の疾病、ライフイベントを知り、体調面を日頃から気遣う
4.過度な配慮はせずに、本人としっかり話し合うこと
「仕事と育児の両立は大変」や「責任ある仕事を任せるのは難しい」などと勝手に思わず、こちらの要望を伝え、本人としっかり話し合う習慣をつける
まとめ
皆さまが日々活動されている職場で展開されてこそ、成果が出る取り組みとなります。
女性活躍推進の壁は単に”女性の問題”、“男性の問題”ということではなく、多数派が作りだす組織風土や文化からきている構造的な問題のため、女性部下の能力に応じて期待値を上げ、育成することに労力をさいていくことが鍵を握ります。
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【登壇者プロフィール】
株式会社東レ経営研究所
DE&I共創部 部長
宮原 淳二氏
化粧品大手の資生堂に21年間勤務し、多岐に亘る業務を経験。
中でも人事労務全般に携わる期間が長く、人事制度企画から採用・研修まで幅広く担当。男女共同参画・ワークライフバランスの分野では社内で中心的な役割を担い、社員の意識調査や先行他社事例などを研究し実践。100名を超す女子社員をマネジメントした経験を持つ。
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