連載「芝を刈らないリーダー」第5回
資料づくりを型に任せたリーダーは、演出家として場を動かす側に回ります。今回は、演出家にとっていちばん効く技術である沈黙の使い方と、沈黙を活かすための空気づくりについてお話しします。
熱心に語るほど、メンバーは聞き役に回る
リーダーが熱心に語るほど、メンバーは聞き役に回ります。熱意があるからこそ一方通行の講義になり、メンバーは次に何を言われるかを待つだけになってしまう。
メンバーが自分から動く場をつくりたいなら、主役を彼らに渡すことです。演出家にとっていちばん大事な技術は、上手な説明ではなく、空白をつくることです。伝えるべき情報は型に任せ、リーダーは問いを投げたら黙って待つ。そうすることで、学びの主導権がリーダーからメンバーへ移っていきます。
7秒待つ
経験の浅いリーダーほど、勉強会の沈黙に耐えられず、つい言葉を足してしまいます。沈黙が怖いのは、私も同じでした。
けれど、問いを受けた人が考えをまとめるには、どうしても時間がかかります。私が目安にしているのは7秒です。
3秒ではただの間です。7秒待つと、自分で考えようという程よい緊張が場に生まれます。ここでリーダーが我慢できずに答えを言うと、動き始めた考えを途中で止めてしまいます。
7秒たっても声が出ないときは、「隣の人と30秒だけ話してみてください」と声をかけます。そのとき「あとで考えを聞かせてください」と添えておくと、雑談で終わらず、前向きな議論になります。
沈黙の間に、すること・しないこと
7秒間、ただ固まって耐える必要はありません。待つ側の振る舞いで、沈黙の質は変わります。
すること
視線を少し外す
水を一口飲む
問いをスライドや板書に残しておく
しないこと
答えのヒントを言う
問いを何度も言い換える
特定の人をじっと見つめる
考えているメンバーをじっと見つめると、指されるのではと身構えさせてしまいます。少し視線を外して水を飲む。それだけで、急かしていないことが伝わります。
沈黙の前に、空気を温めておく
一つだけ注意があります。沈黙がメンバーにとって、試されている、間違えたら評価が下がる、という圧力に感じられたら、考えは止まってしまいます。
だから先に、何を言っても大丈夫だと思える空気をつくっておく。それが沈黙を使う前提です。
私がよくやるのは、自分の失敗や苦手なことを軽く話すことです。「私も昔、ここでつまずきました」「実はこの部分、今でも苦手なんです」。深刻にならず、さらっと言うのがこつです。
リーダーが弱みを見せると、メンバーの肩の力が抜け、正解でなくても口にしていいんだと思えるようになります。答えが一つに決まらない今、リーダーが正解を語ることをやめるのは、謙虚さというより、組織が生き残るための現実的なやり方だと思います。
何を言っても大丈夫だと思える空気のつくり方は、無料の「心理的安全性の型」にまとめています。
無料「心理的安全性の型」をダウンロード答えが出たら、評価より先に受け止める
7秒待って出てきた一言は、勇気を出した一言です。そこでのリーダーの反応が、次に手が挙がるかどうかを決めます。
- まず受け止める:「ありがとう、その見方はなかった」と、内容の良し悪しより先に、言ってくれたことを受け止める
- すぐに評価しない:「それは違う」と正す前に、「どうしてそう思った?」と理由を聞く
- 周りに広げる:「ほかの見方をした人はいる?」と、場全体の対話につなげる
メンバーから質問が出てきたら、場に入り込んでいる証拠です。答えるときは、正解だけを渡すのではなく、自分ならこの場面をどう見るか、なぜそう判断するのかを話してください。リーダーの判断基準を知ることで、メンバーは自分で次の一歩を決める手がかりを得られます。
次回は、慎重なベテランを味方にする方法と、場を動かす問いのつくり方をお伝えします。
まなびスライド
資料づくりは型に任せて、リーダーは場づくりに集中する
研修業界で16年、650社を超える現場で磨いてきた学びの型を、そのまま使えるPowerPointにまとめました。100を超えるテーマから、1テーマずつ買い切りで選べます。
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- 心理的安全性の不足によって生じる4つの不安
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- 管理職・リーダーの側から問いかける
- 発言した内容に着目する
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この記事を書いた人
渡邉良文(わたなべ・よしふみ)
株式会社ヒップスターゲート FOUNDER 兼 CEO
人が勝手に育っていく職場の仕組みづくりをテーマに、株式会社ヒップスターゲートを16年かけてゼロから育ててきた。同社が研修を手がけた企業は650社を超え、現在は上場企業ビズメイツ株式会社のグループに加わっている。著書に『勝手に人が育っていく! 社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け』(かんき出版)。
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