近年よく耳にする「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉、
なんとなく意味は分かるけど実際どういった取り組みが行われているかまで
理解をできている方は多くはないのでしょうか。
実はすでに多くの企業が、職場におけるダイバーシティとインクルージョンを目標としています。
ダイバーシティ&インクルージョンとは
多種多様な人がお互いの考えや価値観、個性を受け入れながらともに成長することです。
さて、企業は具体的にどういった取り組みを行うのが効果的なのでしょうか。
研修の場を設けて理解を深めるべきでしょうか?
それとも様々な人とコミュニケーションをとる時間を作るべきでしょうか?
たしかに研修の場を設けてダイバーシティ&インクルージョンの全体像を把握し、
理解をすることはとても大切です。
しかし、一度の研修で理解を深めただけでは、職場ではその成果を活かすことは難しいものです。
そこで、今回紹介したいのが「リバースメンタリング制度」です。
リバースメンタリング制度とは
若い社員が年上の社員を導くよう設定されたもので、
若手が上司に助言をする逆方向(リバース)の人材支援活動の仕組みのことです。
管理職など次世代のリーダーを育成することを目的として発案されました。
1999年にアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)社がリバースメンタリング制度をスタートし、
日本では2004年にP&G日本本社が初めて導入しました。
また、2017年3月に資生堂がリバースメンタリング制度を導入してニュースにもなり、
この言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
GE社がリバースメンタリング制度を開始した当初は、
年配社員が新しいICTの動向や使い方を若い社員から教えてもらうことが主流でした。
しかし、時代とともにリバースメンタリング制度がもつ意味も変化し、
現在は「お互いの感覚や価値観を共有するために」行われるようになりました。
まさに、いま企業の目標であるダイバーシティ&インクルージョンを
リバースメンタリング制度を使うことで、
様々な価値観を持つ人をお互いに理解し、認め合うことができるのです。
実際にリバースメンタリング制度を導入した台湾の事例を紹介します。
台湾といえば、若い世代の政治投票率が高いことで有名です。
2020年1月には世界中の台湾人が選挙投票のために
故郷に戻ったことがニュースに取り上げられるほど、
政治参加への大切さを重んじでいることがわかります。
では、なぜこんなにも投票率が高いのでしょうか。
その答えがリバースメンタリング制度にあるのです。
台湾では2014年からソーシャルイノベーターを各大臣のリバースメンターに登用しています。
この制度は女性閣僚のジャクリーンによって導入されたものであり、彼女には
「権力は政府に集中するものではなく、民間の想像力こそ大事にされるべき」という考えがありました。
それまでの政治は、長く政権に関わっている人は強い気持ちで物事に向き合ってはいるが、
民間は政府に対して何も意見することができない状態でした。
このことから、民間の意見を政治に反映させるためにリバースメンター制度を登用することで、
政府に権力が集中してしまうのを抑え、民間が主体となって大部分を
イノベーションしていくことができるようにしたのです。
まさにリバースメンター制度が台湾の「国会の透明化」に繋がっているのです。
台湾の事例は政府組織ではありますが、同様の取り組みを企業に落とし込むことができれば、
ダイバーシティ&インクルージョンへの理解が深まるだけでなく、
組織のイノベーションにつながる可能性もあるのです。
日本ではなかなかリバースメンター制度が浸透していないのが実態です。
リモートの時代となり、部下とのコミュニケーション不足で
お互い本音が言いにくい場面もある今だからこそ、
リバースメンター制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
また、お互いの価値観や多様性を理解することだけが目的ではなく、
めまぐるしくトレンドが変わる世の中で、
若い世代の感性やスキルをリバースメンター制度を通して学ぶことで、
いつもと違う情報を収集でき、新たな発見があるかもしれません。
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