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バイアスとは何か

2022.02.18

バイアスは認知のゆがみ

近年、バイアスという言葉を耳にする機会が増えました。
バイアスとは「人が様々な対象を認知する際に生じるゆがみ」のことを指します。

先入観などが分かりやすい例でしょう。過去の経験則や個人的な思い込み、
周囲の状況により、人は特定の事象や対象を自分都合で判断してしまうことがあります。

このように書くと人間関係に不和が生じたり、仕事でミスをしたりするのは、
全てバイアスのせいで、バイアスがあるからいけないと思ってしまいそうです。
しかし一方でバイアスがあるからこそ、私たちの祖先は生き延びてこれた、とも言えるのです。

そんなバイアスの世界について、紹介しているのが、
タイトルそのままに本書「バイアスとは何か」です。

タイトル:バイアスとは何か
著者:藤田 政博
出版社:ちくま新書 (2021年6月発売)

人は五感で外の世界の多種多様な情報を集め、
それを脳内で構築することで"認知"をしています。

この認知の過程でゆがみが生じてしまうことがバイアスなのですが、
その働きを自分の意志や意識で抑え込むことはできません。

そもそも私たちの祖先は、何万年にもわたり経験則に基づく直感的な意思決定をしてきました。
意思決定のスピードが遅ければ遅いほど、危機を察知して回避する行動も遅れてしまうからです。

狩猟採集をしていた時代、狩りは非常に危険を伴う行為であり
いつ、どこで獰猛な生物に遭遇するかも分からなかったはずです。
そのため獰猛な生物の痕跡、例えば近くに糞や足跡を見つけたり、
匂いを感じ取ったりしたのであれば、すぐにその場から逃げ出すのが賢明でしょう。

こうした自分の経験、あるいは予測や思い込み(仮説)を無意識に選択し、
生き延びてきたからこそ、現代の私たちにもバイアスが備わっていると考えるのが合理的です。

バイアスを知る意義

バイアスは生きている限り、切っても切り離せない関係であることは間違いありません。
しかし、だからといってバイアスの為すがままに意思決定をするのではなく、
バイアスについての知識を深め、多少なりともそのゆがみを解消する努力をしていくことが大切です。

「日本は貧富の差が拡大している」と思っているとします。
そのような思い込みがあると、情報番組やネットニュースを見ていても、
富裕層や貧困層の話題ばかりが目に入るようになります。
これは確証バイアスといい、自分の思い込みや考えを肯定するような情報ばかりを
無意識に選択してしまうことで、ますます自分の考えが強化されてしまうことがあります。
これでは、貧富の差が縮まってきているという別のデータが出てきたとしても、
無意識のうちに除外してしまい、検証することさえ難しくなってしまいます。

この情報にはバイアスによる塊が含まれているのではないか?
自分が知らず知らずのうちに持っている思い込み(仮説)に頼りすぎていないか?

自問自答を行うことで、対策を取ることは可能です。
本書は、常に身近に付きまとうバイアスだからこそ、一度立ち止まり、
普段の自分の思考や行動を見つめ直すきっかけの一助になるはずです。

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