人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。これまでは人材は「コスト」として考えられていましたが、これからは人材にかかるコストを、価値創造に向けた「投資」と捉えようという考え方です。
2020年にアメリカの証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して、人的資本の情報開示を義務づけたことから、日本でも注目が集まっています。
企業における人材の大切度を数値化
上記にあるように、アメリカでは人的資本の情報開示が義務化されました。つまり、企業は「私たちの会社は人材を大事にしています。」ということを数字で示すことが義務化されたのです。
また、日本においても2021年6月に東京証券取引所から改訂コーポレートガバナンス・コードが施行されたことで、企業は「自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識した、人的資本投資等についての開示」が求められるようになりました。
実は投資家は企業の人的資本に関する方針や取り組みに大きな関心を持っているため、企業は「自社は人材を大切にしています」ということを数字で表すことが出来るかどうかは、企業の価値評価や投資判断に影響してくるのです。数字で表せない企業はたとえ今利益を出していたとしても、持続可能ではないと判断され、十分な投資を受けられない可能性があります。つまり、資金が足りず新たな事業に挑戦できず、企業として成長できない可能性が高くなるのです。
人的資本経営は採用にも大きく影響する
近年の傾向として、現代の若者はSDGsに関する知識を学校教育で学んでいることから、自ずとSDGsに興味・関心を持つ人が多いです。実際に、2020年度に電通Team SDGsが実施した「第3回SDGsに関する生活者調査」では、小学生から大学生を含む2人に1人の学生がSDGsという言葉を認知しているそうです。
また、2019年に経済広報センターが実施した「SDGsに関する意識調査」では、「SDGsに取組んでいる日本企業の製品・サービスを利用したいか」という問いに対して、「そう思う」(45%)、「ややそう思おう」(41%)と回答しており、合わせて86%が「利用したいと思う」と回答しているのです。
これらから、近年の若者はSDGsへの取り組みを積極的に行っている企業に対して好感度が高いことが分かります。そのため、もし人的資本を数値化できなければ、持続可能な企業ではない(SDGsではない)、そして信頼を得ることのできない企業とみなされ、最も優秀な人材を採用することは難しくなることが想定されます。
このことから、企業は人的資本を数値化できるよう取り組みをしなければならないのです。
まとめ
今までも「人材は大切にしていこうね」という考えは重要だと言われていましたが、とうとう数値化が求められるようになってきました。今回紹介したように、経営資源の調達と優秀な人材の獲得という2点から、人的経営資源の開示はこれからの企業の成長において重要となります。
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