2026.10.30

慎重なベテランと、眉間のしわ。場を動かす問いのつくり方|芝を刈らないリーダー 第6回

The Leader Who Doesn't Mow the Lawn

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連載「芝を刈らないリーダー」第6回

前回は、7秒の沈黙とその前提になる空気づくりについてお話ししました。今回は、反発するベテランへの向き合い方、言葉にならないサインの読み方、メンバーを当事者に変える問いのつくり方を紹介します。

ベテランの反発を、改善の材料にする

新しいやり方を示すと、慎重な姿勢を崩さないベテランが必ずいます。「現場はそんなに甘くない」「理想論だ」。そう言われて場が張り詰めたとき、力で押し切ろうとするのは得策ではありません。

その違和感は、仕組みを良くするための意見として受け取ります。

「まさにその、現場を知っている人の目が欲しかったんです」

そう伝えて、どこが実情に合わないのかを教えてもらう。そのとたん、相手は外から批判する人から、中で一緒に直す人に変わります。よく出る一言には、次のように返してみてください。

言われがちな一言
返し方の例
現場はそんなに甘くない
どの場面で、いちばん難しくなりますか?
前にもやったけど、だめだった
そのとき、何がうまくいきませんでしたか?
それは理想論だ
現場でやるなら、どこを変えれば回りそうですか?

どれも、反論を具体的な改善点に変える問いです。言い負かすのではなく、知恵を借りる側に回ると、ベテランは心強い味方になります。

眉間のしわを見逃さない

演出に回ると、視線は資料から離れ、メンバーの顔に向くようになります。ここで見るべきは、全員がうなずいている様子ではありません。困った顔や、腑に落ちていない顔です。

見えたサイン
考えられること・声のかけ方
眉間にしわが寄る
説明では片づかない問題が現場にあるのかもしれない。「引っかかるところはありますか?」
メモの手が止まる
話が抽象的で、自分の仕事とつながっていないのかもしれない。具体例を一つ足す
腕を組んで黙っている
納得していないか、言い出しにくいのかもしれない。休憩中に個別に聞いてみる

サインはあくまで手がかりで、決めつけは禁物です。理由を聞き、内容を現場に合わせて直していく。型を実情に合わせて磨き、成果につなげるのも、演出家の大事な仕事です。

問いのつくり方1:自分事に切り替える4つの問い

メンバーを聞き役から当事者に切り替えるには、本音を引き出す問いが要ります。状況に応じて使ってみてください。

  1. 違和感を出してもらう:「このやり方を入れたら、現場でいちばん無理が出そうなのはどこだろう?」
  2. 責任を自分のものにする:「この手順を飛ばしてトラブルが起きたら、いちばん困るのは誰だと思う?」
  3. 現場の感覚に合わせる:「今の話で、現場では工夫が必要だと思うところはどこかな?」
  4. 最初の一歩を決める:「明日、出社して最初の1時間で試せそうなのはどれだろう?」

どれも正解を教えるための問いではありません。メンバーが自分で考えて出した答えだから、本人が納得して動けるのです。

問いのつくり方2:足すより、削るを聞く

「何か意見はある?」と聞いて誰も話さないとき、効く問いがあります。何が必要かではなく、何をやめるべきかを聞くことです。

「スライドにはこう書いてあるけど、現場で足かせになりそうなところはある?」

ゼロから提案を考えるのは難しくても、要らないものを挙げるのなら口を開きやすくなります。どこを削るかをメンバーに任せると、仕組みが彼ら自身のものになっていきます。

上司からの問いかけ方は、無料の「心理的安全性の型」でも扱っています。

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自分がいなくても回る教育へ

演出家に回るのは、リーダーにとって手応えのある挑戦です。ただ、一人の腕や人柄に頼っている限り、リーダーの負担はいつまでも減りません。

あの人にしかできない教育、あの人がいないと成り立たない勉強会。それは誠実さの表れですが、裏を返せば一人に頼りすぎている危うさでもあります。リーダーが抜けたとたんに学びが止まるなら、組織が自分で育っているとは言えません。

演出のやり方を型に落とし込み、誰でも再現できるようにする。問いを投げる場所や待つタイミングまで組み込まれた型があれば、経験の浅いサブリーダーでもメンバーのスイッチを入れられます。一人の知見を組織の資産に変えて、次の世代に渡していく。それが演出家としてのリーダーのいちばん大きな仕事です。

次回は、組織が大きくなると起きる教育の劣化と、知見を組織の資産に変える考え方をお話しします。

まなびスライド

資料づくりは型に任せて、リーダーは場づくりに集中する

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この記事を書いた人

渡邉良文(わたなべ・よしふみ)

株式会社ヒップスターゲート FOUNDER 兼 CEO

人が勝手に育っていく職場の仕組みづくりをテーマに、株式会社ヒップスターゲートを16年かけてゼロから育ててきた。同社が研修を手がけた企業は650社を超え、現在は上場企業ビズメイツ株式会社のグループに加わっている。著書に『勝手に人が育っていく! 社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け』(かんき出版)。

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