世界一カンタンで実戦的な文系のための統計学の教科書
2019.10.24
ツイートビジネスと統計学の関係
30代になってからは感情より事実やデータを優先するようになったE氏です。
統計学は知っておくと何かと便利、という声はよく聞きますが、
皆さんは統計学と聞いて何を思い浮かべますか?
大量のデータから何かを分析すること。
相関関係とか因果関係を見つけること。
数式を使って何やかんやすること。
正直よくわからん。
色々な感想が出てくることでしょう。
ちなみに私はこれまでに3~4冊の書籍を読んできましたが、
いまいち仕事でどう活きるのかを掴み切れずにいました。
今回は統計学を勉強してみたいけど、何となく苦手意識がある、
という方にぜひ推薦したい本をご紹介します。
著者:本丸 諒
出版社:ソシム (2019年5月発売)
要約
●偶然か必然かを判断する絶対的な正解ラインはない
多くの人が納得するであろう"5%"を線引きとして設定している
5%以内の小さな確率のことが起きたら「まぐれや偶然ではない」とすることになっている
例えば2分の1の選択肢を5回連続(3.125%)で当てたら、それは偶然ではないと判断する
●ビジネスの現場において、例えば5%ラインはセキュリティ分野に応用されている
顔認証のセキュリティは、判定が厳密すぎてもゆるすぎてもいけないので、
本人はOK、ニセモノはNG、とするときの線引きに使用されている
●どこで線引きするかはトレードオフに関わってくる
上述のセキュリティであれば、本人が入れることを優先すれば顔の似た人が侵入するリスクが高まる
逆にニセモノを締め出すことを優先すれば本人までNG判定される可能性が高まる
こちらを立てればあちらが立たず、という悩ましい状態に陥る
●統計の代表値は「平均値、中央値、最頻値」の3つ
平均値…数値の総数を平らに均したもの
中央値…数値を小さい順に並べた時、どまん中にくる数値
最頻値…最も頻繁に現れる数値
●平均値は外れ値に弱い
あるところに3名のビジネスパーソンがいて、資産の平均が3000万円だった
そこにビルゲイツのような億万長者の資産(約11.2兆円)が入ってくると、
平均は実態から大きく乖離してしまう
●データのバラツキ度合いを示すのが分散や標準偏差
バラツキを見るには各々の数値が平均値からどれだけ離れているかの距離を見る
分散のルート(平方根)を取ったものが標準偏差
●正規分布とは「よく見かける分布」のこと
ピラミッド型のヒストグラムで(中央が一番高くて左右対称)ベル型曲線とも呼ばれる
平均値と標準偏差で正規分布の形が決まる
●サンプリング、品質チェックは正規分布を利用している
平均値から大きく離れたもの(±3倍の標準偏差)がないかをチェックしている
●相関関係があると、そこに因果関係があると思い込むのは危険
交番数と犯罪の発生件数を調べると、そこに正の相関があるグラフが出来上がるが、
その2つに直接的な因果関係がないことは明らかである
実際には人口と犯罪件数がリンクしているだけだったなど、
グラフや相関関係から安易に結論を導き出さないように注意する
E氏の私見
「文系のための」というタイトルにもある通り、難しい数式の類はほとんど出てきません。
たまに入門書と位置付けられる本でも、中盤から劇的に難易度が上がっていき、
最後は専門的な説明で全く付いていけなくなる、ということが起こるのですが、
本書は終始一貫して中学数学程度の知識レベルで読み進めていくことができます。
さらに統計学が社会やビジネスの現場でどのように活用されているかの例示もあり、
より身近なものとして興味を持てるような仕組みになっています。
この背景として、著者が統計学の書籍を30冊以上つくってきた経験の中で、
真に分かりやすい統計学の入門書は何かという問いによるところが大きいでしょう。
本書は言葉のままに統計学の門扉を開くところまで連れて行ってくれるので、
もっと詳しく知りたい、勉強したいという方は、
ご自身の業務に照らし合わせて更に深掘りしていくのが良いでしょう。
わたし個人の気づきとしては、サンプリングは「全体の縮小形」になっていなければ、
大きな間違いを導き出してしまう可能性があるということです。
本書では、これを味噌汁の味見を例に出して説明しているのですが、
小学生が読んでも分かるような平易な言葉で語られているため頭にスッと入ってきます。
またイラストやキャラクターが多用されており、語り口調で物語が進行していくため、
このあたりが「世界一カンタン」と謳う所以なのでしょう。
ただ、一つだけ苦言を呈するとするならば、もう少し「実戦的」であってほしかったです。
仕事での活用方法までイメージできると、もっと勉強してみたいという次の行動に
繋がっていくことでしょう。
これからガッツリと本格的に学びたいという方には、少し物足りなさがあるでしょうが、
統計とは何ぞや、ということをザックリと理解しておきたい人にはオススメに一冊です。
今回は以上です。
それではまた次回お会いしましょう!