新型コロナウイルス感染症拡大の余波 新入社員研修もリモート実施へ
一般的に、新入社員にとって3月または4月は、新社会人としてビジネスマナーやビジネススキルを学び、OJTで実際の業務に初めて触れる、人生においても大きな変革の時期です。ところが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2020年の春は大きく様変わりしています。
同年2月25日に発表された政府による新型コロナウイルス感染症対策基本方針によって、閉鎖的な空間に不特定多数の人が集まる従来型の入社式や新入社員研修の中止や実施方法の変更を決定した、あるいは検討している企業が出てきています。
従来型の新入社員集合研修はeラーニングなどのオンライン研修中心に
とりわけ、中長期にわたって実施される新入社員研修は、実施方法の変更が新入社員に大きな影響を及ぼします。感染症拡大リスクが高くなる集合研修のうち、座学中心の研修はITとの親和性が高いため、自宅などで受講できるオンライン研修による実施に変更される傾向があります。
主な手段となるのは「Webセミナー」、「eラーニング」、「マイクロラーニング」でしょう。
オンライン研修の最大のメリットは、特定の研修会場に縛られることなく、それらに代わる小会場でも、あるいは自宅でも受講できることです。それに加えて、すべての受講者が同じ内容の、質の高い講義を受けることができる、さらには、新入社員のスキル統一化が可能であることも重要なメリットです。
さらに、eラーニングの新潮流であるマイクロラーニングなら、項目や分野単位で短時間に学ぶスタイルであるため、集中力を高める、復習しやすい、または定着度を確認することもできます。
総じて、Webセミナーやマイクロラーニングをはじめとするeラーニングは、新入社員の研修スタイルの変更にあたって、知識やスキルのインプットに最適な手段になると言えるでしょう。
学習機会確保ためのWeb会議システムの無料提供
新型コロナウイルス対策として、社員のリモートワークを導入した企業では、既存の社内Web会議システムの活用や、自宅から社内のイントラネットへのリモートアクセスなどが実施されています。
企業ほど遠隔コミュニケーション環境整備が進んでいない学校の一斉休校が始まり、新入社員向け集合研修の自粛拡大も現実的になりつつあります。こうした流れの中、学校やリモートワーク環境が未整備の企業向けに、オンライン学習用プラットフォームや学習アプリ、各種遠隔コミュニケーションツールを期間限定で無料提供する企業が増えています。
Web会議システム「Zoom」の無料提供が開始 期間は4月30日まで
中国で新型コロナウイルス感染者が拡大した際に、無料サービスの時間制限をなくすことでいち早く支援を打ち出したのは米Zoom社でした。Zoom社のテレビ・Web会議システムである「Zoom」は、本来アカウント作成と1対1通話は時間無制限無料、3人以上のグループ通話は40分間まで無料であったところ、この40分間の無料サービスが拡張されたわけです。
日本でも全国の小中高に対して休校要請が出たことを受けて、2020年3月1日に、米Zoom社が同年4月30日までの期間限定で、教育関係者に対するZoomの無料提供を発表しています。
Zoomは、オプションによって1会議の参加者を最大1,000人まで増やすことができる上に、最大200人までの小グループに分割することも可能です。
テキストやホワイトボード、ファイルを画面で共有する機能があり、Web会議を視聴するデバイスやOSを問わないという特徴もあります。
Zoomに引き続き、Googleも「Hangouts Meet」の無料提供を発表
日本国内でのZoomの無料提供発表に続いて、2020年3月4日には、米Google社がWeb会議システムである「Hangouts Meet」の有料プレミアム機能を7月1日まで無料提供することを発表しました。
米Google社の生産性向上ツール「G Suite」の一部であるHangouts Meetでは、Web会議に最大250人が参加でき、最大10万人のドメインとユーザーにライブストリーミングを配信できます。会議の進行を録画して、Googleドライブに保存することもできるため、議事録をとる必要もなくなります。
このように、クラウド型Web会議システムが複数無料提供されるため、同年春の新入社員研修が実際に集合研修からオンライン研修に変更になった場合でも、実効性のある研修を行うことができる環境が整ったと言えるでしょう。
Web会議システムを使ってできること―体面によるコミュニケーションの代替
新入社員研修が集合研修からオンライン研修に変更される場合には、対面による集合研修本来の目的をしっかりと再確認した上で、具体的な研修方法を検討する必要があります。
本来の集合研修は、講義による知識やスキルのインプット、グループワークやロールプレイングによる体験型学習などをブレンドして、最大限の効果が得られるように設計されています。
中でも、グループワークやロールプレイングなどの体験型学習は、講義で学んだことを、他の参加者と協力しながら実践するアウトプットの場です。
体験型学習では、考えの違うさまざまな人たちとの忌憚のないやり取り、講師からの当意即妙なフィードバック、企業風土の体感などをとおして、新入社員同士の一体感を醸成し、その後の仕事に対するモチベーションアップにつながる貴重な体験を積むことができます。
集合研修ができないことによる、こうしたアウトプットの場の喪失は、実はWeb会議システムを使うことで補うことができます。
つまり、新入社員向けのオンライン研修は、スキル・知識の習得を目的としたWebセミナーやeラーニングと、アウトプットの実践やコミュニケーションの活性化を目的とするWeb会議システムのブレンド活用で、本来の集合研修の代替になると考えられます。
Web会議システムの機能性
働き方改革や東京オリンピックの開催、リモートワーク需要などによって、先に触れた「Zoom」と「Hangouts Meet」以外にも、「Microsoft Teams」、「Skype for Business」、「Cisco Webex Meetings」、「V-CUBEミーティング」など、さまざまなベンダーからクラウド型・オンプレミス型、無料版・有料版のWeb会議システムが多数提供されています。
これを機に、本格的に遠隔コミュニケーション環境を導入する場合は、今後の社内の使用状況を見積もり、必要なスペックを備えたシステムを選別する必要があります。
新たに、もしくは新型コロナウイルス対策として一時的に、Web会議システムを導入するのであれば、期間限定で無料提供されるZoomやHangouts Meetを利用するのもよいでしょう。
基本機能は、複数の参加者によるリアルタイムでの音声・ビデオ通話、PC画面共有など
いずれの製品でも、遠隔地にいる複数の参加者が、インターネットを介して、リアルタイムで音声通話やビデオ通話ができる以外にも、テキストチャット、PC画面の共有、ファイルの送受信などを行うことができます。
専用端末や専用回線が必要なテレビ会議とは異なり、インターネットに接続できれば、PC、スマートフォン、タブレットなど、デバイスを問わず、内蔵(もしくは外付け)カメラとマイクを使って通信したり、録音・録画したりすることも可能です。
Web会議の主催者がURLを指定することで、参加者を簡単に招待できるのも特徴です。
製品によっては、ホワイトボードのリアルタイム閲覧や、他の参加者または拠点を常時画面上に映し出す「空間共有」機能を利用できるものもあります。
対面コミュニケーションに代わるWeb会議システムを使ったコンテンツとは?
Webセミナーやeラーニングだけでは不足する、新入社員同士、あるいは講師と新入社員とのコミュニケーション活性化、意見交換、情報交換を目的としたコンテンツであれば、Web会議システムの特性を十分に活かすことができます。
次は、新入社員研修の一環としてWeb会議システムを使用する場合、どのような活用方法があるかを具体的に見ていきます。
少人数グループによるグループワーク—特定の人だけに参加権限を付与
Web会議システムは、招待されているメンバーをいくつかの小規模グループに分割することができます。
特定のメンバーだけに参加権限を付与する機能も搭載されているため、各グループに属するメンバーだけに参加権限を付与して、集合研修の体験型学習で見られるような小人数グループを、仮想的に構成することができます。
グループワークでは、与えられた課題について参加者で話し合い、協働して一定の時間内にグループとしての結論をまとめます。
発表形式や課題の進め方などがあらかじめ指定されていたり、ワークシートが用意されていたりするので、Web会議システムのファイル共有機能やPC画面共有機能を活用して、情報共有する、ホワイトボード機能を使って参加者の意見を取りまとめて保存する、さらにワークシートを完成させると効果的です。
社内会議のリハーサル グループディスカッション
グループワーク同様に、Web会議システムに招待したメンバーを少人数グループに分割し、特定の人に権限を付与する機能を使って、小グループを作ります。
グループディスカッションでは、与えられたテーマについてグループのメンバーと話し合いを重ねる中で、自分の意見を述べたり、他者の意見を受け入れながら自分の考えを修正したりして、グループとしての結論をまとめるトレーニングをします。
実際に職場に配属されてから、会議やミーティングにおいて必ず必要になる対面コミュニケーションスキルなので、あえてテキストチャットを使わずに、積極的に口頭で意見交換を行う体験を積むことが望まれます。
ZoomなどのWeb会議システムでは、「手を挙げる(挙手発言)」機能が搭載されており、誰が発言したいのかがわかるようになっているので、意見交換をスムーズに進めることが可能です。
任意参加の少人数制社内勉強会―人事担当者や先輩社員による発案も
所定の新入社員研修の内容以外に、より業務に密着した内容の、あるいは特定のビジネススキルの習得、業務につながる資格取得などを目的とした社内勉強会を、Web会議システム上で仮想的に実施することもできます。
Web会議システムに招待されている新入社員が発案者となり、興味をもった内容の勉強会や、特定の分野に特化した勉強会などを呼び掛けて、任意の参加者を募ることができます。人事担当者もしくは社内の先輩社員などが自分のもっているスキルや、最低限知っておいてほしい業務上の知識を新入社員と共有する場として、Web会議システムで勉強会を発案するのもよいでしょう。
少人数の任意の集まりなので、勉強会のファシリテーター役を発案者が担っても、得意な人が担ってもかまいません。あくまでも任意の勉強会なので、練習のためにファシリテーター役を買って出るのもよい考えです。
時間の効率化や、自発的な発案にこだわらず、勉強会を進めるプロセスと成果に着目するのであれば、既成の社内勉強会コンテンツの利用もおすすめです。
弊社の定額制社内勉強会コンテンツ「ロクゼロ」は、新入社員だけでなく、内定者や中堅社員、管理職など、社内のあらゆる階層の社員に最適なコンテンツを網羅した電子テキストです。
ロクゼロのテキストにはテーマに沿った進め方などがわかりやすく説明されているので、社内勉強会を始めて発案した人やファシリテーターに初挑戦する人も、テキストに沿って勉強会を進めることで、参加者全員にとって実りある勉強会にすることができます。
基本的に任意参加となる社内勉強会なので、活発な情報交換やコミュニケーションが予想されます。こうした場では、ビジネスコミュニケーション機能に特化したWeb会議システムが、対面に匹敵する仮想社内勉強会の成功を後押しします。
在宅勤務によるオンライン研修の成果 研修内容のポートフォリオが重要
新型コロナウイルス感染拡大によって、企業の新入社員集合研修は在宅勤務によるオンライン研修に切り替えられる可能性が少なくありません。働き方改革やリモートワーク化が進み、今後はOJTを含め、さまざまな研修や社内勉強会がオンラインで実施されるようになることも予想されます。
実際に研修のスタイルが変わったとしても、Webセミナーやeラーニング、Web会議システムそれぞれのメリットを活かしたコンテンツをバランスよく取り入れることで、集合研修と同等の成果を上げられるのではないでしょうか。
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