企業活動の中止・自粛が及ぼす影響
2020年2月25日、政府が「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定したことを受けて、経団連の中西会長は同日の会見で、政府の基本方針への協力姿勢を表明しました。これによって、今後、企業の感染拡大予防対策がいっそう進むことが予想されます。
この影響は、テレワークや時差出勤といったビジネスパーソンの働き方シフト、企業の広告・宣伝活動の中止、営業活動の自粛から、新卒採用イベントの中止や企業の集合研修の取りやめなど、広範囲にわたって深刻な影響を及ぼしています。
新入社員研修、管理職研修、財務・法務といった実務研修、あるいはITトレーニングなどのスキルアップ研修など、3月、4月の実施を予定していた集合研修の中止を検討せざるを得ない企業も少なくないでしょう。
代替的な取り組みを考える必要性 人事領域では「社内勉強会」の価値見直しも
どの企業も、さまざまな企業活動を制限される環境下にありながら、同等の、もしくはそれに近い効果を上げられる代替策を模索することを求められています。
日産自動車は、新型軽自動車「ルークス」の新車発表会を、多数の報道陣を招いて行う一般的なスタイルではなく、インターネット中継で実施しました。KDDIでは、主催する大規模イベント「MUGENLABO DAY2020」を、例年の会場実施からVR(仮想現実)で参加者がプレゼンを行う形式に切り替えることを表明しています。
人事領域においても同様に、代替策の検討を迫られています。
新卒採用市場の合同説明会中止や、大学側からの外出自粛の通告にともない、対面型採用から、WEB説明会やオンライン採用にシフトする動きも見られます。
やむなく集合研修の中止に追い込まれた企業も、人事戦略上、人材育成や能力開発が不可避であることから、その代替となる効果的な対策を急ぎ検討する必要があります。この対策のひとつが「社内勉強会」であると考えられます。
「eラーニング」ではなく「社内勉強会」で得られる効果とは?
集合研修の代替案として真っ先に思い浮かぶのは、個人でオンライン教材を使って学ぶ「eラーニング」によるオンライン研修かもしれません。しかし、「社内勉強会」には、eラーニングにはない、仲間と直接的に意見交換や情報交換することによるエンゲージメント向上効果があり、集合研修に近い効果が得られます。
近年では、ICTの基盤となるクラウド環境の整備によって、eラーニングは一般的な学習形態として認識されています。人材育成や能力開発において、多種多様な企業からさまざまな種類の教材が出ています。
ただし、eラーニングの特性上、すべての集合研修の代替となるわけではない点や、エンゲージメント向上に結び付くか否かは判断が難しい点に十分な注意が必要です。
次項以降では、eラーニングと社内勉強会を比較しながら、集合研修の代替となる要件を洗い出していきましょう。
eラーニングのメリットとデメリット
eラーニング最大のメリットは、場所を選ばず目的のスキルや知識を効率的に自学自習できる一方で、同じ内容の教材を多数の受講者で共有できることにあります。研修主催者側の負担を軽減できることや、学習時間の短縮化もポイントになります。
eラーニングはインタラクティブ性を備えた教材であるため、教材提供者から受講者に向けてのフォローメール配信や、受講者からの質問受付など、教材提供者と受講者間で必要に応じてコミュニケーションもとることができます。オンライン環境なので、受講者の進捗管理も容易です。
こうしたメリットを備えたeラーニングですが、インタラクティブ性があるとはいえ、学習の成果はあくまでも受講者個人のモチベーションに大きく左右される点は、決定的なデメリットであるといえるでしょう。
モチベーションの維持にも一定の効果があると考えられる仲間との情報交換や刺激は、教材提供者側と受講者の双方向コミュニケーションに限定されるeラーニングから得ることはできません。
オンライン環境に依存した学習形態であるため、eラーニングをとおして体験学習することも不可能です。
さらに、オンライン教材を自社で制作しようとするならば、教材提供側がオンライン教材制作のノウハウを習得し、実際に教材を企画・制作・編集するための手間とコストが想定以上にかかってしまう点も看過できません。
eラーニングのデメリットを補う「社内勉強会」
上述のようなeラーニングのデメリット、とりわけモチベーション維持が難しいというデメリットを効果的に埋めることができるのが、比較的小人数、短時間で同じ目的をもつ仲間同士で行う「社内勉強会」であるといえます。
大人数で一堂に会することができない現状においては、任意参加という強制力のない集まりではあるものの、社内勉強会はもっとも現実的な選択肢でもあります。
そもそも社内勉強会は、集合研修のような、人事部の企画・運営による業務の一環ではありません。特定のスキルや知識などを社内で共有する必要があると考える個人の呼びかけで行われる有志の勉強会です。
社内勉強会のメリット ― 意識の高い仲間との横のつながりも構築できる
この社内勉強会の大きなメリットは、特定のスキルや知識の習得だけにとどまらず、社内のコミュニケーション活性化の手段にもなりえることです。
同じ目的をもった意識の高い社員の集まりであることから、モチベーションアップにつながりやすく、企業や業務に対して愛着をもち、自らが組織のパフォーマンス向上に貢献しようと考える「従業員エンゲージメント」を高める効果もあります。
社内勉強会は業務外であるため、一般的には短時間に効率よく進行されるのも魅力の一つでしょう。
もちろん、少人数とはいえ、複数の参加者が集うため、内容次第ではロールプレイングによる体験学習も可能です。
社内勉強会のデメリット ― 発案者に負担が偏りやすい
持続的に運営できれば、エンゲージメント効果が高く、企業のパフォーマンス向上に結び付きやすい社内勉強会ですが、発案者が勉強会のテーマやコンテンツを煮詰めて資料を収集し、配付できるように必要部数のコピーをするなど、負担が偏りやすいことは紛れもないデメリットです。
社内勉強会が継続的に運営されるかどうか、あるいは効果が表れるかどうかは、発案者に偏りがちな負担をいかにして軽減するか、さらにコンテンツの充実度や勉強会の進め方が鍵になります。
負担軽減と実効性のある社内勉強会 外部委託という手段も
社内勉強会を成功させるためには、プロの手を借りる、つまり外部委託するという方法をとることも考えられます。この方法であれば発案者の負担が軽くなり、一定の成果も期待できます。その一例が、弊社の定額制社内勉強会コンテンツ電子テキスト「ロクゼロ」です。
ロクゼロでは、従業員を内定者、新人、若手、中堅、管理職といったフェーズに分類し、フェーズごとに必要とされる学習テーマで、人事領域のプロフェッショナルが60分完結スタイルのコンテンツを制作しています。専用マニュアルが用意されているので、誰でも勉強会を無理なく進行することができます。
従業員1人あたり600円の月額定額制でコンテンツは使い放題、事前準備の必要もないため、誰でも気軽に、思い立ったらいつでも、仲間を募って勉強会を実施することができます。これがロクゼロ導入の最大のメリットです。
新型コロナウイルス感染拡大の防止対策で、集合研修の取りやめが決まったからといって、学びを諦めることはありません。逆風を逆手にとって社内勉強会を積極的に実施して、スキルと知識の習得だけでなく、横のつながり強化や従業員エンゲージメント向上につなげていきたいものです。
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