2020.03.19

エンジョイ型経験学習 効果的な能力開発と充実した人生のキーワード

あゝ人材教育!3分ななめ読み

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経験学習―経験→内省を主体とした人材開発方法のひとつ

人材育成の領域においては、「経験学習」とは、実際の経験を経て内省し、教訓を得て、次への成長につなげていくという考え方を指します。

組織行動学者のデービッド・コルブはこの経験学習の概念を進化させ、「経験→省察→概念化→実践」の4つのサイクルで構成される「経験学習モデル」理論を提唱しています。この理論に則れば、経験をとおした4つのサイクルを効果的に活かし、継続していくことで、一層の成長を促すことができます。

コルブの提唱する経験学習モデルを見るとわかるように、経験学習とは、実際の経験を成長につなげていくという概念であり、受動的な研修などの教育機会とは明らかに区別されているのがポイントです。

経験学習の重要性―7・2・1の法則から

人材開発や能力開発においては、上述のような概念にもとづく経験学習の重要性は広く知られており、現在も研修などの教育の場で頻繁に取り上げられています。

経験学習の重要性を端的に表現しているのが「7・2・1の法則」と呼ばれるものです。

「7・2・1の法則」が初めて発表されたのは、米国の人事コンサルタント会社であるロミンガー社創業者 マイケル・ロンバルドとロバート・アイチンガーによる共著、『Career Architect Development Planner』(1996年初版)でした。

二人は優れたビジネスリーダーを対象に「キャリア形成に影響を与えた機会」に関するアンケートを実施しました。その結果、大きな影響があったのは「仕事上の経験」が7割、「他者から学ぶ」が2割、「研修あるいは書籍から学ぶ」は1割であることがわかりました。

この調査結果から、ビジネスパーソンの能力開発には、研修やトレーニングの大切さもさることながら、OJTをはじめとした経験学習の重要性がはるかに上回っていることがわかります。

エンジョイ型経験学習とは?経験をとおして楽しみながら成長する

経験学習の研究者である北海道大学大学院 経済学研究科の松尾教授は、コルブによる経験学習モデルとは若干異なる経験学習モデルを提唱しています。

経験学習の基本概念を「経験→内省」を主体とした学びと成長であると考える点では同じですが、松尾教授の理論の特徴的な点は、経験学習にとって重要な要素は「挑戦、振り返り、楽しむ」の3つであると定義していることです。

本稿では、この「楽しむ」ことで成長を促す点に着目して、この経験学習モデルを「エンジョイ型経験学習」と呼ぶことにします。

仕事を「楽しむ」という要素を経験学習に取り入れることで、より一層の成長を促すことができるとする考えは、仕事を収入の糧としてだけでなく、仕事からやりがいや充実感を得たいという風潮にマッチしていると言えるでしょう。

エンジョイ型経験学習モデルのサイクルと進め方

松尾教授が提唱する経験学習の3要素、「挑戦、振り返り、楽しむ」は人材開発のサイクルとして、それぞれ以下のように置き換えられます。

「チャレンジ」―設定された目標に向かって挑戦する
「リフレクション」―内省や他者からの指摘やアドバイスによって振り返る
「エンジョイメント」―教訓を実践に活かして、達成感や充実感を得る

こうした3つのサイクルが効果的に繰り返されることで、持続的に成長できると考えられます。

次に、エンジョイ型経験学習を構成するサイクルそれぞれの効果的な進め方と注意点を確認していきましょう。

「チャレンジ」サイクル

少し頑張れば手が届く程度の目標を設定し、取り組むのが理想です。頑張ったことで達成感が得られるため、次へのモチベーションにつながります。あまりにも高いレベルの目標を設定し、尻込みしてしまうような事態は回避すべきです。

「部下を育てる」立場で、部下にチャレンジさせる場合は、本人に全面的に任せてしまう、あるいは細かな指示を出してやらせることも避けます。仕事を割り振る際には、仕事の目的や意義、重要性、困った時の乗り越え方などをしっかり伝えた上で、本人の力で最後まで取り組む必要があります。

「リフレクション」サイクル

経験したことを内省しながら、他者からも良かった点や悪かった点などを指摘してもらうことで、経験を総合的に振り返り、次につながる教訓や改善点を導き出します。

気を付けたいのは、本人に対する指摘や助言などの内容が細かくなりすぎる、あるいは懇切丁寧な指導をしないことです。本来の目的を再認識できるような助言や、本人が自ら考え抜くためのアドバイスを適宜与えるようにします。

「エンジョイメント」サイクル

自分自身で経験し、導き出した教訓を次の実践に活かしてやり遂げることで、仕事に対する充実感や達成感が得られます。仕事を楽しむことを実感できると、さらなるチャレンジへの意欲が生まれ、持続的な成長が促されます。

エンジョイ型経験学習は、仕事だけでなく生活にも応用できる

経験を糧に、仕事を楽しむことで成長するエンジョイ型経験学習モデルは、仕事における能力開発だけでなく、生涯学習や趣味などのフィールドでも活かすことができます。

仕事での自己の成長と、プライベートでの知識欲や技術の向上をいずれも実現させて、人生のより一層の充実を目指してみてはいかがでしょうか。

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