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HRD用語【OODA】

2020.06.24

【OODA】

OODA(:ウーダ)は、Observe(観察)、Orient(判断)、Decide(決定)、Act(実行)の頭文字をとった意思決定プロセスで、外部環境を観察して判断し、対応策を決めて実行する思考・行動手法。もともと戦況に応じて臨機応変に応戦するためのアメリカ空軍による戦略思考であったが、変化が激しく先が読めない今日のビジネス環境にも適用できる手法として欧米を中心に広まった。

 

PDCAの次はOODA?

OODAはPDCAの次の思考術といわれている。しかし、OODAPDCAは派生がことなるため同列に述べるフレームワークではない。まずPDCAは戦後、統計的品質管理を目的として日本で生まれ、昭和の高度経済成長のなかで枝葉まで浸透した。一方、OODAはアメリカ軍の戦闘機パイロットだったジョン・ボイドが、朝鮮戦争での自軍の戦闘機の高い撃墜率を分析して導いた思考術である。ボイドの分析によると、自軍の戦闘機は、敵機よりスペックは劣るものの、広い視野が確保できるようにコックピットが設計され、かつ、素早い方向転換が可能であったことがわかった。このことから、戦況を観察して瞬時に次の行動に移すことが、敵軍にパニックを起こし戦意を喪失させ、刻々と変わる戦況で勝利を招くと確信したのである。その後、アメリカ軍はもとより、NATO軍、ロシア、中国までが有効な戦略思考として採用し、現在では広く一般にも適用できるフレームワークとして広がっている。

ちなみに、ジョン・ボイドは多くの兵法を学んでいたが、OODAの思考を整理し確立していくとき、宮本武蔵の『五輪書』からも着想を得ている。五輪書は相手を倒すための兵法である。死と隣り合わせの真剣勝負のさなか、相手を倒すための計画を立てている時間はなく、即座の判断が勝敗(生きか死か)を分ける。五輪書もOODAも目的を果たすための最速の思考術なのである。

O」「O」「D」「D」のブレイクダウンと柔軟性

OODAの要素について、ブレイクダウンして説明する。

O=Observe:観る

主観を排して客観視することが理想だが、本当の意味で全てをあるがままに見ることは不可能だ。自分が見ている景色は自分の主観的背景をフィルターにしていることを知っているだけで、観察眼は向上する。

O=Orient:理解する

確固たる判断基準を持つことが望まれる。変化の激しい現代のビジネス環境において、次のトレンドや展開を確実に理解できる人はいない。判断基準とは“行動を起こすときに拠り所となる理念や信念”を指す。拠り所は、一見主観的なようでいて、「観る」「理解する」を繰り返して知見を積み重ねることで、正確性が向上し幅が広がる。

D=Decide:決める

理解したことを受け、どのように行動するかを決めるプロセスである。「理解する」から「決める」に移るとき、選択肢を並べて比較検討している時間はない。スピードが肝心。

A=Act:行動する

決断にそって行動するプロセス。自分の判断基準に沿って決めた行動が、たとえ間違っていたとしても、行動せず傍観していた不利益に比べれば得るものは大きい。失敗は成功のもと。

 

OODAはPDCAや論理思考のフレームワークのように、必ずしも要素順に回さなくてよいとされている。観察の必要がなければ、即「理解」でよいし、即時的に判断ができるのならば「決める」プロセスを抜きにすぐに「行動」してもよい。要素を飛ばすことで矛盾が生まれることはなく、これこそOODAが素早く柔軟な思考術と言われる所以である。

私たち日本のビジネスパーソンにOODAが求められる理由

先に述べたようにPDCAは多くの日本企業に浸透し、これさえ回すことができれば仕事の進め方としては完璧であるように取り扱われている。しかし、変化の激しい現代にトップマネジメントがこの方法で経営をしていては、時代の流れに取り残されることは必至である。

OODA思考がハーバードビジネススクールで講義され、アメリカの企業を中心に民間に適用されるようになったのは1980年代後半のことである。現在では「デザイン思考」や「リーンスタートアップ」へと展開を見せるまでになっている。

では、なぜ日本企業で受け入れが遅れているのか。私たちが農耕民族であることも一つの理由だろう。農耕民族は長い年月をかけて土地を開墾し穀物を育む。集落は強固な組織で、他者を出し抜けば穀物の分配にありつけない。また、生死をかけるようなことはないが、かわりに収穫期は年に1回でとても少ない。それに比較して、狩猟民族は、死の危険は高かったものの食料を得るチャンスは頻繁にあっただろう。農作物を育てることはまさにPDCAの繰り返しである。こうした民族的背景から日本人はPDCAが得意でOODAが苦手なのだ。

私たち組織人が素早く動くための判断基準は企業理念である。社員の一人ひとりが企業理念を行動レベルに落とし込む意識が必要だし、場合によっては社員が行動目標にしやすいように企業理念を修正することも必要かもしれない。アメリカ軍は、隊員が瞬時の判断に迷わないよう「ビジョンドキュメント」を発行し、実現したい世界を具体的に示している。

誰が一歩を踏み出すのか、様子を見ていては取り残されてしまう。デジタルネイティブの若い起業家や部下に驚いてばかりではいけない。自分(自社)は何をするべきか。Trial and error、現況を判断して即時に対応することが望まれる。参戦すべき市場はその先にしかない。

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