企業風土に適したハラスメント対策~各社の取り組み事例~
2019.10.04
ツイートハラスメント教育の必要性
職場でのハラスメントを放置すると、被害者の心身の不調を招くだけでなく、委縮して意見が言えなくなる、ミスが多くなる、離職率が上がる、あるいは職場の生産性も低下するなど、従業員と企業の成長の足かせになります。
そのため、ハラスメントは他人ごとではなく自分の身に起きうる問題として認識し、あらゆるハラスメント防止対策を講じて、気持ちよく働ける職場環境を整備することが何より重要になります。
職場や企業風土に適したハラスメント対策
各企業は、それぞれ職場でのハラスメント防止対策の一環として、さまざまなハラスメント防止教育や取り組みを導入しています。
今回は、ユニークなハラスメント教育を実施する、あるいは独自の取り組みを取り入れている事例を5例ご紹介しましょう。
事例1「企業理念を反映した全社員お揃いの手帳」―ユニ・チャーム
ユ二・チャームの全社員は、A5サイズのお揃いの手帳を持っています。この手帳には、企業理念や社員としての行動指針、一人ひとりの成長発展が経営の根幹であるとする「社員への誓い」などが書かれています。
手帳には、「社員への誓い」実現のためにはハラスメント行為の禁止が不可欠であることや、自社で細かく設定したパワハラ基準が守るべき行動指針として明文化されています。
こうした行動指針の遵守と、定期的なパワハラ研修がハラスメント対策の根幹になっています。
事例2「『さん』づけで醸成する、のびのびとした企業風土」―ソニー
ソニーでは、多様な人材や視点から価値を生むカルチャーをはぐくみ、ビジネスに最大限に活かす取り組みを全社挙げて実施しています。
その一環として、人権やダイバーシティおよび関連する問題に関する勉強会や講演会なども数多く開催しています。年1回、ソニーグループの多くの社員が参加する「ダイバーシティメッセージ(人権標語)」募集も、人権意識の向上に役立っています。
さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの効果によって、上司や先輩との垣根もなく、「さん」づけで呼び合うため、お互いの立場を意識せずのびのびと意見を言える風土を作り上げています。なんでも相談できるので、仕事上の不安も解消されやすいメリットがあります。
事例3「人権啓発推進リーダーの育成」―東京ガス
東京ガスの行動規範は「人権の尊重」と「元気の出る職場づくり」という2つの指針に基づいています。
元気の出る職場づくりという目的のためには、パワハラ、セクハラ、アルハラ(アルコールハラスメント)などの各種人権問題の解消が急務です。この人権問題の相談窓口であり、解決手段にもなっているのが「人権啓発推進リーダー」です。
それぞれの現場からしかるべき人材を1名選出して、1年間の専門研修後に「人権啓発推進リーダー」として登用します。人権研修の講師役、相談窓口としての対応など、パワーハラスメントに限らず、現場の状況や人間関係をよく知る人権啓発推進リーダーに幅広く対応を任せます。
仮にパワーハラスメントの問題が発生しても、人権啓発推進リーダーが対応することで、早期解決につなげていくことができます。
事例4「ハラスメント警告ポスターの掲示と全従業員との個人面談」―物流会社A社
社長の「パワハラは許さない」宣言以後、ハラスメント防止研修を徹底すると同時に、自覚がなくパワハラに気付きにくい上司たちに注意喚起する目的で、ハラスメント警告ポスターを毎年作成し、職場の目に付きやすい場所に掲示しています。
担当者が全事業所を巡り、全ての従業員から直接ハラスメントに関する聞き取り調査も行っています。
事例5「朝礼で1事例ずつ読み上げて、全員で考える」―建設業B社
建設業は下請業者との関係上、パワーハラスメントが起こりやすい業種と言われています。
そこで、B社はパワハラをリスクの一つに位置付けて、コンプライアンスマニュアルにセクハラやパワハラの禁止を明記し、社員全員に配布しています。
一昨年前に実施したパワハラ防止研修は20回ほど実施しており、現場担当者が交代しながら全員が参加できるように配慮しました。
親会社ではハラスメント事例を含めたコンプライアンス事例集を作成しており、そこにB社独自の事例を追加して、こちらも全員に配布しています。
職場単位で毎日行われる朝礼で、その事例集の中から1事例ずつ読み上げて、朝礼参加者全員で何が問題でどうすべきかを考える取り組みを行っています。
ハラスメント教育の浸透 働きやすい職場づくりへの布石
職場でのハラスメントを未然に防止するには、ハラスメントを明確に定義して、職場や企業の風土に合った方法で、人権意識またはハラスメント禁止意識を全社ベースで共有する必要があります。
このようにハラスメント教育が浸透することで、職場が誰もが働きやすい環境として整備され、従業員と企業の生産性向上につながるのです。