「原因と結果」の経済学 データから真実を見抜く思考法
2021.06.15
ツイートテレビばかり見ているとバカになる?
皆さんも子どもの頃に一度は親から言われたことがあるのでないでしょうか?
「そんなにテレビばっかり見ているとバカになるよ」と。
筆者も例外ではありません。
(テレビというよりゲームでしたが・・・)
いま子どもを持つ親の立場となり、その当時の親の気持ちが少し分かるようになりました。
しかし、ここで冷静に考えてみたいのです。
本当にテレビやゲームをやると、子どもはバカになってしまうのでしょうか。
ここでのバカとは、学力が下がる(テストの成績が下がる)ということです。
因果関係と相関関係は違う
厚生労働省の全国学力調査によると、
1日3時間以上テレビを見ている子どもは、1時間以下しか見ない子どもに比べて
学力テストの成績が悪いことが分かっています。
ほら、やっぱりテレビばっかり見ている子どもはバカになるんだ。
そう結論づけたくなる気持ちも分かりますが、ちょっと待ってください。
テレビの視聴と子どもの学力の関係が、
「因果関係」なのか「相関関係」なのかを考える必要があります。
両者は似ているようで全く違います。
つまり、こういうことです。
因果関係 = テレビを見るから学力が低下する
相関関係 = 学力の低い子どもほど、テレビばかり見る
この両者を混同してしまうと、誤った解釈や理解をしてしまうので注意が必要です。
同じような問いはビジネスでも起こりえます。
例えば、このようなものです。
因果関係 = 女性管理職を増やしたから会社の業績が上がった
相関関係 = 業績の良い会社ほど、女性管理職が多い
因果と相関を取り違えて解釈をしてしまうと、
「うちの会社でも女性管理職や役員のポストを用意しよう。
そうすれば業績も右肩上がりになるはずだ。」
と安易で誤った戦略を取ってしまうことになりかねません。
身近に潜む罠に引っかからないために
ビジネスだけに限らず、日常でも建設的な議論や会話、
そして思考を巡らせるためには、正しい理解が必要です。
・テレビばかり見せると子どもはバカになる
・メタボ検診を受けていれば長生きができる
・偏差値の高い大学に行けば収入が上がる
一件すると、全て「イエス」と答えたくなってしまいますが、
経済学の有力な研究は、これらに全て「ノー」を突き付けています。
え、そうなの?なんで?
そう思う人こそ、「原因と結果」の経済学という本を
読んでみてください。
きっと様々な驚きや発見があるはずです。
それっぽい通説に騙されることなく、
自分自身の頭で本質を見抜くための手助けとなるはずです。
そして、物事や事象、思考の捉え方が
以前とは一回りも二回りも違ってくるでしょう。
タイトル:「原因と結果」の経済学
著者:中室 牧子・津川 友介
出版社:ダイヤモンド社 (2017年2月発売)
補足
ちなみに、テレビを見るとバカになるのか問題に
一つの答えを導き出したのがスタンフォード大学の研究です。
その研究によって判明した驚くべきことは、
テレビを見ている時間が長くなると逆に学力は高くなる、
ということだったらしいですよ。
ただ、この研究結果は1948年~52年までの子どもを対象にしており、
現代と全く同じ環境下での測定ではない、ということです。
その当時のテレビの持つ娯楽の比重が今とは全く異なりますので、
もしかしたら再調査をすると、また別の結果になるかもしれませんね。