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ちょっと勝手に歴史から教訓抽出

コロナ禍のリーダーシップを米沢藩中興の祖、上杉鷹山に学ぶ

2020.11.12

上杉鷹山(ようざん)とは、第35代米国大統領ジョン・F・ケネディが日本で最も尊敬する政治家として名を挙げたことで、注目をあびた人物です。戦国の雄・上杉謙信から続く名門上杉家の9代藩主です。

当時の上杉家は困窮を極めていました。関ケ原の戦いで敗れ、越後から米沢へ減封されたにも関わらず、名門上杉家の威信から家臣はそのまま重用され、家臣も上杉家へ仕えることを誇りとして離れず、縮小した藩の規模に対して家臣の割合が高く、藩財政の人件費が高額でした。また、冬は雪深い土地柄、重なる飢饉や自然災害で農村は荒れ、収入面も悪化。先代は藩領の返上も考えたほどでした。

そこへ現れたのが上杉鷹山(隠居前の名前は治憲)。

当時、跡継ぎがいなかった先代の婿養子として17歳の若さで上杉家藩主となります。米沢入りをする際の関所の荒廃ぶりに驚愕し、困窮を極める藩の情勢への改革を行っていくことになります。

まずは鷹山が残した、有名な言葉をみていきましょう。

 

なせば成る なさねば成らぬ 何事も 成らぬは人の なさぬなりけり 

「何事も意志を持って行えば必ず実現する、結果が得られないのは成し遂げる意志を持って行動していないからである」

上杉鷹山の残した有名な言葉「なせば成る」は、聞いたこともあるのではないでしょうか。鷹山が次期藩主へ家督を譲る際に申し渡した言葉です。“結果を出すために意志を持ち続け実行をすること”の重要性をシンプルではありますが、力強く伝えるメッセージ性があります。

 

伝国の辞

一、国は先祖から子孫へ伝えられるものであり、我の私物ではない。
一、領民は国に属しているものであり、我の私物ではない。
一、国・国民の為に存在・行動するのが君主であり、君主の為に存在・行動する国・国民ではない 

(※注 現代語訳済 国=藩、我=藩主)

「なせば成る」と同じく、次期藩主へ家督を譲る際に申し渡した心得で、明治の版籍奉還まで、上杉家の家訓として代々継承されていきました。

藩は自分に属するものではなく、藩主としてすべきことは、領民のための行動をとること、ひいては領民の生活を守る行動をとることであると説き、鷹山は隠居後も引き続き米沢藩の再生策を立案・実行を続けその生涯を終えました。困窮極める状態での改革の成功・家臣や領民の信頼を得るリーダーシップを発揮した、鷹山のポリシーが表れています。

 

次に、鷹山が行った改革の代表的なものをあげてみましょう。

自らが模範となり大倹約の実施

上杉家の誇りを捨てきれない君主と家臣による財政圧迫が大きな要因と考えた鷹山は、藩の困窮状況をすべて家臣に伝え大倹約の実施を宣言します。下記はその一部です。

 ・藩主の生活費を1/7以下に大幅カット
 ・奥女中の人数を50人から9人にカット
 ・藩主の衣服を絹から木綿に変更
 ・藩主の食事を一汁一菜に
 ・年間行事の規模縮小&中止
 ・贈答の禁止

藩主自らが極めて質素な生活を送り、率先垂範することでリーダーシップを発揮していきました。もちろん反旗を翻す家臣もいましたが、「なせば成る」意志をもってやり続けることで、従う家臣も増え、領民からの信頼も高まっていきました。

 

資源を活用した新商品の開発

藩の財政を立て直すために、鷹山自らが鍬をふるって開墾をしたというエピソードも残っていますが、元々寒冷地で雪深い米沢では、稲作以外の収入源が必要でした。そこで、漆やこうぞ、桑、紅花などの栽培を奨励しました。

農民だけではなく、藩士にも自宅の庭で作物を植えて育てることを命じ、自らも城内で栽培します。また、藩士の家族に漆からロウソクを、こうぞから和紙を、紅花から染料を、桑の葉で蚕を飼い絹織物を作ることを命じました。“米沢織”はここからスタートしました。

さらに、城のお堀では栄養豊富なタンパク源としての鯉を養殖。領内の池や沼、さらには藩士たちの屋敷にも池をつくらせ鯉の養殖を推進しました。今も米沢では祝いの席では鯉がふるまわれ、文化継承されています。

また、農民の手も空く冬時期を利用して、木彫りの工芸品をつくることを奨励しました。こちらも“お鷹ぽっぽ”という愛称で親しまれている“笹野一刀彫”として今も土産物店に多く並ぶ伝統工芸品となっています。

活用できるリソース(人と土地)を生かした、新しい取り組みが成功をおさめたといえます。

その他に

・貧しさからの脱却に、教育の重要性を説き、閉鎖されていた藩校を再興(現・米沢興譲館高校)
・豊作時に籾を大量に保存しておく、リスクマネジメントの実践(天明の大飢饉の時に功を奏す)
・上書箱を設置し、領民より広く意見を集め、改革に採用する 

 

など…鷹山が取りくんだ改革は枚挙にいとまがないです。そして、鷹山の逝去した翌年には藩の借財が完済されました。

「なせば成る」を生涯かけて実践してきた上杉鷹山。

コロナ禍による厳しい現代社会に、鷹山の発揮したリーダーシップは約200年の時を経ても学べることは多いのではないでしょうか。

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