リモートワーク化で今までのビジネスマナー研修は不要となるのか
2020.10.29
ツイート2020年初からのコロナ禍は、リモートワークを推奨する企業が増え、オンライン会議・商談も当たり前のこととなり、働き方が大きく変わるきっかけにもなりました。新型コロナウイルスの終息が未だみえない中、2021年度の新入社員研修の検討を進めている企業様も多い時期かと思います。2021年度の新入社員研修で、従来の対面コミュニケーションが前提だったビジネスマナー研修は不要なものとなってしまうのでしょうか。考察しました。
リモートワーク実施率について
カオナビHRテクノロジー総研が「緊急事態解除後のリモートワークはどうなった?」として、本年8月に9,816名を対象にしたアンケートの結果は下記の通りです。
出典:カオナビHRテクノロジー総研
完全リモートワークを実施している割合は僅か7.5%です。70%以上は毎日出社をしていると回答しています。また、このアンケートは緊急事態宣言中の5月にも実施しておりますが、解除後に出社の割合が増えています。
出典:カオナビHRテクノロジー総研
感染症が発生しやすい冬時期には、毎日リモートワークという割合はまた一時的に増えるかもしれませんが、緊急事態宣言下のもとでも約80%の人が出社の機会があったということです。
つまり、人数・頻度に変化はあるかもしれませんが、社内外で対面コミュニケーションをする機会は引き続きあると考えられます。もちろん働き方は変わっているので、一部のビジネスマナーは不要になったり、簡略化されたり、変化をする可能性はあるでしょう。しかし、多くの労働者のおかれている環境下では、従来のビジネスマナーが必要とされるシーンが多いであろうことが推測されます。
そもそもビジネスマナーはなぜ必要か
環境の変化が大きい時期だからこそ、ビジネスマナー研修のあり方についても、ニューノーマルを意識して考察を行いがちですが、大切なのは「ビジネスマナーはなぜ必要なのか」という原点に立ち戻ることです。
ビジネスマナーは、会社(職場)や自分と関わる全ての人と、良好なコミュニケーションを図り、より良い人間関係を築いて、会社における自分の役割を果たすために必要なことです。年齢・性別・経験・価値観の異なる人たちで構成されるビジネスの世界において、ビジネスマナーは、最低限守るべきルール、周囲の人々への気遣い・思いやりであるという事を忘れてはいけません。
特に新入・若手社員が意識すべきなのは、ビジネスシーンには自分より年長者が多いということです。今までの経験から染み付いているビジネスマナーは簡単に抜けないので、年長者の意識は簡単に変わることはありません。つまり、従来のビジネスマナーを知らないままでは、相手を不愉快にさせ自分の印象も悪くなる可能性があるのです。初対面での印象は重要であり、印象の良い人間の話したことには信頼ができ、信憑性が高まります。社外であればその会社自体にも好印象を持つことになりますし、社内であれば印象の良い人には協力者が集まります。企業としては、ビジネスマナーの学びの場はやはり必要であると考えられるでしょう。
ビジネスマナーを知っていることがまず大切
お客様先への訪問・来客対応・名刺交換等、実施頻度が以前より少なくなるビジネスマナーはあるでしょう。研修で学んでも実践する機会がなければマナーの型は忘れてしまうかもしれません。しかし、ビジネスマナーがあるということを知っているか知らないかでは差が出ます。
例えば、急遽お客様への対応が必要となった場合、マナーの重要性と来客対応のマナーがあることを理解していれば、作法を忘れてしまっていても、先輩にアドバイスを求めたり、自分で調べることができるでしょう。
また、リモートワーク化によって新しいビジネスマナーも生まれてきています。しかし、まだその妥当性は検討の余地がありますし、一般化するほど浸透しているとは言い難いです。新しいビジネスマナーを考える上でも、マナーの重要性と型は理解している方が良いでしょう。
繰り返しにはなりますが、ビジネスマナーは周囲の人々への気遣い・思いやりであるという事、その体現をするための最低限の型・ルールがあるということを従来のビジネスマナーを交えて研修で学ぶ必要はあると考えます。
最後に余談ではありますが、筆者は社会人歴も10年を経過したころ、名刺交換の際に失敗をしました。訪問側・目下から名刺を差し出すという名刺交換の基本ルールがすっかり抜けたままだったのです。(おそらく、同時交換の形で実施することが多かったからだと思います)
40年続く企業の創業社長へのご挨拶を営業責任者として訪問した場面におきました。社長が、名刺を(少し性急に)私の名刺入れの上に差し出されたので、ありがたく両手で丁寧に受け取りました。私としては最大限の敬意を伝えていたつもりです。
しかし、この名刺交換の順序によって先方社長の怒りを買ってしまいました。自分のマナーの不勉強さを恥じると同時に、相手が求めるマナーの型から外れれば信頼関係構築が難しくなるということを改めて認識したのでした。(初めの印象が悪かった分を、その後の商談でリカバリーして、今では笑い話に昇華できました)