マイクロラーニングとは、短時間で受講できる学習方法のことで、動画などのWebコンテンツを教材とするのが一般的。パソコンやスマートフォンなどのモバイルデバイスの普及に呼応して、各社のサービスや自社制作のコンテンツが充実した。学習時間は長い場合でも10分程度。仕事の合間に集中力を切らさず学習ができるため、忙しいビジネスパーソンが活用しやすい学習スタイルといえる。
これくらいの時間がちょうどいい
平成28年の総務省・社会生活基本調査で、社会人の「学習、自己啓発の時間」が1日たったの6分だったのは有名な話だ。人は常に学びたい生き物ではあるが、十分に学べているかといえば、そうではない。だれにでも平等に与えられるのは時間だけだが、それにしても現在のビジネスパーソンは忙しい。世界経済のグローバル展開が極小な隙間にも迫っていて、小さな企業の小さなオフィスにも、多角的な情報の波が絶え間なく打ち寄せている。
人的リソースの大小は問題ではない。とにかく負けないように攻め続けなければならない。
新しいと思えた技術が明日には過去のものとなり得るのが現代である。短時間で学ぶマイクロラーニングの学習テーマはコアなトピックで構わない。「せめてこれだけは知っておきたい」という内容をピンポイントで学ぶのに向いている。忙しい、時間がないと言って学びを放棄していては置いていかれてしまう。時間のない現代のビジネスパーソンにこそ取り入れてほしいシステムだ。
若い世代に向いている?
とは言え、勉強といえば、本を読み、ノートに学習内容を整理するものだと考える世代もある。そうした世代にとっては「モバイル機器での学習」がピンとこない。動画で学習する“脳作り”から始めなくてはならず、マイクロラーニング受講者としては、スタートから差がついている。
一方で、ミレニアム世代にそのハードルはない。彼らは、友人との会話、流行、企業広告、社会情勢、あらゆる情報にスマートフォンからアクセスしている。現在、モバイル機器を通して得られる情報のカテゴリーは様々だが、ミレニアム世代の彼らにとって、それが学習コンテンツであることは、もちろん特別ではない。マイクロラーニングは2016年ごろに登場した学習スタイルだが、ミレニアム世代が企業の中心的な役割を担っていく今後は、さらに発展的に広がりを見せるだろう。
マイクロラーニング、向き不向き
マイクロラーニングのメリットは、隙間時間でどこでも学習ができるということだ。2020年の今日、起床から就寝まで、通信環境にない場所を探す方がむずかしい。自宅はもちろん、地下鉄、会社、街中、どこからでも学習サイトにアクセスができる。
そして、短時間の学習は学びの定着率も高い。脳研究者である東京大学の池谷教授によれば、休憩をはさんで「15分×3回(計45分)」勉強したグループと、60分続けて勉強をしたグループでは、前者の方が、学習内容を長期的に記憶にとどめることができたという。言い換えると「身についた」のである。マイクロラーニングは、「短時間で集中して学習する」「コンテンツを繰り返し見にいける」といったスタイルであることから、学びの定着を高める要素を持ち合わせている。
しかし、短時間学習という意味では、資格試験対策や事例研究、論理構築が必要な複雑なテーマには向いていない。また、集合研修や社内勉強会のように対話を介して気づきを得るような内容にも不向きだ。
上述した「学びの定着」についても、実は学習者本人の取り組み如何によるところが大きい。繰り返し視聴して海馬に刺激を与えなければ「身についた」状態には至らない。
結局、学びは本人次第。自分流のマイクロラーニング
短いコンテンツの作成で済むマイクロラーニングは、自社内で内製化することも可能だ。例えば、新入社員向けのオリエンテーションなどは、いつでも見られるようにしておくとよいと聞く。このように、社内ルールの周知などにも使われるマイクロラーニングは、便利な学習スタイルだが、結局のところ学ぼうとする意思がなければ始まらない。これからも便利なツールはいくらでも世の中に登場するだろう。それを利用する人としない人には、歴然とした差が生まれるはずだ。
さて、通勤中に本を10ページ読み進むことも学びである。学びたいことがあれば、自分なりのマイクロラーニング法で構わないのかもしれない。学習をやめない、それがどの世代にも共通して言える生きる術である。
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