「男性版産休」を新設、改正法が成立
男性育休義務化とは、何が義務化されるのか、というところから始めましょう。
2021年6月3日、男性の育休取得推進のさらなる強化施策が国会で可決されました。この中に、出生時育休(いわゆる男性の産休)の新設が含まれています。これは子どもが生まれて8週間以内に最大4週間、男性社員が休める制度です。
同時に、企業は子どもが生まれる(生まれた)男性社員に対し、育休制度の周知し取得意向確認をしなければならず、育休を取得しやすい職場環境を作らなければなりません。
つまり、男性の育休義務化は、育休を取る男性個人ではなく、「企業」を対象にしています。企業が課される義務は次のようになります。
「企業は出生時育休取得の対象となる男性社員へ個別に周知し、取得の意向を確認し、育休を取得しやすい職場環境を整備すること」
さらに従業員1,000人以上の大企業については、育休取得状況を公表する義務が追加されます。
嫌な顔をされるのを覚悟しないと取れない休暇
なぜ義務化の対象が企業なのでしょうか。
日本の法定の育休制度、特に男性が活用できる育休については、世界でも最高水準の制度であると評価(ユニセフ調査)されています。しかし、実際の取得率は7%程度(2020年)に留まり、9割以上の男性は育休を取得していません。
男性にニーズがないわけではありません。
さまざまな調査から男性の育休希望は7割~9割であると言われています。しかし、「職場に迷惑をかける」「職場が取得できる空気じゃない」などの理由で取得ができていないのです。男性の育休取得が進まない原因は往々にして職場にあるのです。
子どもが生まれたので育休を取得しようとした男性社員は、批判的な職場の空気を“あえて読まず”、取得期間の1か月前までに育休の取得申請書を恐る恐る提出していた、というわけです。つまり、男性の育休は周りから嫌な顔をされるのを覚悟しないと取れない休暇でした。これは育児に関心が高い男性でも相当に勇気のいる行為であることが想像できます。
そこで今回の改正では、子どもが生まれる男性社員に対して、その男性社員が育休を取りたいか、取りたくないかに関らず、まず企業側から「育休制度があるよ、取得したらどう?」と聞かなければならなくなります。ここで「育休制度はあるけど、まさか取らないよね?」なんて言い方はNGです。
「取得を控えさせるような形での周知および意向確認は認めない」(労政審発1251号)と厚労省文書にはっきり明記されていますし、当該指針にも具体的に明記されるでしょうから、法律違反にならないように気を付けなければなりません。
ここで一つ問題があります。それは「出生時育休」の会社への申請は「2週間前」で良い、という点です。
これまで男性育休取得には「1か月前」の申請が必要でした。
数日や数週間の短期間の育休でも取得しづらい雰囲気があり、休暇までに1か月間の猶予があっても取得を断念する男性が多かったのです。
それを「出生時育休取得の申請は2週間前でよい」という制度が新設され、その期間は最大4週間なわけですから、現状のままの職場がこれを導入したら大混乱に陥るでしょう。
大混乱はなぜ起きるのでしょうか?
それは、日本の職場のある特徴が作用するからです。
<執筆>
東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部
チーフコンサルタント、NPO法人ファザーリング・ジャパン理事:塚越 学
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