マルチステージが当たり前の時代
これまでは「教育を受ける→仕事に就く→引退生活を送る」という3ステージが
いわゆる人生の王道的ストーリーとして世間一般に浸透していました。
しかし、人類の長寿化によって人は昔より長くステージに留まることになり、
社会の変容とともにその在り方も様変わりしました。
現代に生きる人間にとって3ステージはもはや過去の遺物であり、
これからを生き抜くためにはマルチステージの考え方を取り入れ、
自らの意思で人生のストーリーを紡いでいかなければなりません。
人生100年時代をどのような戦略を持って生き抜いていくか。
そのヒントが凝縮されているのが、本書『LIFE SHIFT2』です。
タイトル:LIFE SHIFT2 100年時代の行動戦略
著者:アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン 訳:池村 千秋
出版社:東洋経済新報社 (2021年10月発売)
考え方を変えよう
3ステージを前提に生きてきた人が、急にマルチステージに鞍替えをすることは難しいものです。
まずは、いくつかの考え方を変えていくことから始めていきましょう。
年齢に対する考え方
普段、私たちは年齢を数える時、生まれてから現在までの年数という単一の基準でしか考えません。
しかし、肉体の若さを基準とした年齢(生物学的年齢)や社会でどのように扱われているかを基準とした年齢(社会的年齢)、さらには自分がどれくらい若い・老いていると感じているかを基準とした年齢(主観的年齢)といった概念で捉えてみるとどうでしょうか。
人がどのような老い方をするかは、その人が加齢にをどのような主観的感覚を抱いているかにも影響を受けます。ある研究によると、年齢を重ねることを前向きに捉えている人は、否定的に捉えている人に比べて平均7.5年も長生きするそうです。
気は持ちよう。日本では昔から伝承されてきた言葉ですが、心の在り方次第で肉体は大きく変わる、ということです。
時間に対する考え方
教育→仕事→引退という3ステージの人生を生きる人の時間の使い方はこうです。
第1の教育ステージでは、スキルを育むことに時間を費やします。第2ステージでは、引退後の資金を蓄えるために仕事に打ち込みます。そして第3ステージの引退では、蓄えた資産を取り崩しながら、余暇を楽しみ過ごします。
この3ステージモデルでは、第2ステージの仕事に費やす時間が圧倒的に大きいことは言うまでもありません。老後資金を蓄えるためにも猛烈に働いてキャリアを確立していく必要があるからです。これは非常に大きいストレスでしょう。
人生が長くなれば、様々な活動を行う時間を確保することができます。学習や余暇を適宜取り入れながら過ごすことで、仕事のストレスや負担を低減することもできます。マルチステージの生き方では時間の割り振り方を考える必要があります。
幸福に対する考え方
平均寿命が延びたとしても、年齢を重ねるにつれて人は死に近づいていくという現実は変わりありません。
一つ年齢を重ねるごとに自分の未来に限りがあるという意識は強まっていくものです。加齢の結果により人生の終末が近づきつつある、と考えると幸福度は加齢とともに下がっていくと考えるのが妥当かもしれません。
しかし、実際にはそうではありません。多くの人は高齢になっても幸福度が低下しないどころか、逆に中年期よりも幸福度が高まるケースが少なくないのです。これは一体どういうことでしょう。
スタンフォード大学のローラ・カーステンセンによると、「人生最後の移行を遂げた人たちは、情緒面で価値を見いだせる活動の比重が大きくなるからだろう」と指摘しています。
高齢になるにつれて、活動領域は狭まり、活動エネルギー自体も少なくなってきます。その一方で限られた肉体的資源を好ましい経験をもたらしやすい人間関係に注ぎ始めます。つまり、貴重なリソースを無駄遣いすることなく、情緒的な価値を与えてくれるであろうものに遣う、ということなのでしょう。
まとめ
ある人にとって加齢は楽しみであり、ある人にとって加齢は苦痛となりうるものです。特に若者にとっては、老いていくことに恐怖や嫌悪感を抱くものです。しかし、年齢を重ねることは生きている限り、誰も逃れることができないルール。これまでの王道であった3ステージモデルが立ちいかなくなりつつある今、長い人生というステージを最後まで生き抜くためには、年齢・時間・幸福といったものに対して柔軟な考え方を持つことが何よりも大事となってきます。
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