ジョブ型雇用が話題
日立製作所が2022年7月から全社員を対象に「ジョブ型雇用」に切り替えると報じられたことが話題になりました。同社では既に2021年の春には管理職に導入していましたが、その対象を約2万人の全社員に拡大することとなります。この背景にはDXをはじめとしたデジタル人材などのスペシャリストを採用する狙いがあるようです。
そもそもジョブ型とは何かを整理しておきましょう。ジョブ型とは、あらかじめ職務内容を明確に決めた形で働くものです。組織における職務をジョブディスクリプション(職務記述書)で定義し、そのポジションに最適な人材を割り当てます。ジョブディスクリプションがあることで、社員は自分自身に期待される職務を正確に理解し、職務遂行に集中することで、生産性向上につなげることができるとされています。また、経営者や管理者側からすれば、社員それぞれの職務に応じた明確な処遇、評価を下しやすいメリットもあります。
ジョブ型の対義語として挙げられるのが、「メンバーシップ型」です。メンバーシップ型では業務内容・勤務地・労働時間などが定められておらず、年功序列や終身雇用が前提とされる日本の企業で多く取り入れられています。職務ではなく、人ありきで仕事が割り振られますので、社員は異動や転勤などを繰り返しながら、キャリアアップをしていきます。経営者や管理者側は、社内で欠員が出た場合には、辞令によって社員を配置転換させることも可能です。
ジョブ型は日本に根付くのか?
前述の日立製作所がジョブ型雇用に全面的に切り替えることが話題となった要因の一つには、伝統的な日本の大企業は終身雇用制度と一体化する形であることがスタンダードであり、職務内容を限定せずに勤務する「メンバーシップ型」雇用が一般的だという印象が強いことが挙げられるでしょう。
ただ実のところ、歴史を紐解いてみれば「ジョブ型」の導入は日立製作所が初めてではありません。1990 年代後半から2000年代初頭にかけてのいわゆる成果主義ブームがその一例です。果たしてジョブ型はこれから日本に徐々に定着していくのか。日立製作所をはじめとした日本企業の動向が気になるところです。しかしながら、過去の成果主義を鑑みると、その道のりは楽なものではなさそうです。その要因は3つ考えられます。
ジョブディスクリプションの煩雑さ
組織における全ての職務を定義付けしていくには多大な労力と時間が掛かります。多種多様な職務がある大企業ほど、そのコストは比例して大きくなります。さらに、各部署がジョブディスクリプションをバラバラに作成すれば、会社全体としての統一感や品質が安定せず、社員の不平不満につながるリスクもあるのです。そこまでの労力を投資してまでジョブ型に切り替える必要性があるのか。各企業は慎重に見極めなければなりません。
新卒一括採用の文化
日本企業は4月に新入社員を一括採用するのが慣例です。DX人材などIT分野においては通年採用を導入しているケースもありますが、まだまだ限定的であると言わざるを得ません。ジョブ型雇用ありきとなれば、学生は企業側が求める要件を満たせるよう、これまで以上に早期のキャリア形成や能力開発が求められることになります。勉学に励む時間が奪われ、就業訓練に費やすことになれば、学生の本分、意義が損なわれてしまうことでしょう。
解雇のハードルが高い
海外ではジョブ型雇用が広く一般的ではありますが、決定的に違うのが解雇のハードルです。欧米諸国では、ジョブがなくなったり、会社が求める役割や基準を満たせていないと判断したりした場合には、社員は解雇されます。日本ではどうでしょうか。労働契約や組合があるため、海外のように簡単に解雇することはできません。つまり、ジョブ型を導入したとしても継続的に運用を続けていく難しさもあるのです。
ジョブ型で人材育成はどう変わる?
ジョブ型を導入すれば、当然ですが雇用契約、賃金形態、人材育成などの人事制度もそれに合わせた形に変わっていく必要があります。「人ありき」から「職務ありき」に変わるわけですから、計画的な能力開発が必須となります。これまでのように異動や転勤を繰り返しながら、スキルアップを図っていく総合職的な鍛え方では通用しなくなるでしょう。
そのため、ジョブ型における能力開発は、基本的に社員の自助努力が前提となります。しかし、ただ社員に一方的な自主性を求めるばかりでは、会社への信用や愛着が育っていきません。キャリア開発機会の提供など、企業側からの育成支援が非常に大切です。
その際に留意すべきことが、一人ひとりの資質や能力、スキル、経験に基づいた育成を行う、いわゆるタレント・マネジメントを行うことです。例えば、現在では各部署から管理職だけを集めて研修を行うこともあるでしょう。しかし、ジョブ型においては各部門の管理職の職務、役割は大きく異なります。それにも関わらず、管理職だからという名目だけで集めて研修を実施したとしても、期待以上の成果を得ることは難しいものです。より個人にフォーカスをして、パーソナライズされた能力開発の在り方を探っていく必要があるでしょう。
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