研修の効果測定 理解度を的確に把握できるテストの作り方
2020.04.10
ツイート内製した研修プログラムをより充実させ、効果の高いコンテンツに改善していくことは、携わっている人事・研修担当部門の大きな関心事です。この目的を達成するには、受講者の理解度を的確に測ることができるテストを作成しなければなりません。
アンケートと並んで普及している理解度確認テスト
新入社員研修に限らず、研修を実施した直後に、アンケートや理解度確認テストを行っている企業は多いのではないでしょうか。
理解度確認テストは、講義スタイルで行われる知識付与型研修プログラムに広く採用されている効果測定ツールです。
理解度確認テストの質問は、アンケートのように、研修内容や講師の教え方などについて直接問い掛けるスタイルのものばかりではありません。受講者の本当の理解度を反映させるために、質問内容だけでなくテストの実施時期にも配慮を要します。
テストの実施は研修前、研修後、さらに数カ月後の3回が基本
知識付与型研修プログラムの理解度確認テストは、研修直前と研修直後、加えて受講数カ月後の3回実施が基本だと考えるとよいでしょう。
それぞれのテストの狙いは以下のとおりです。あわせて、研修プログラムのタイプが知識付与型以外である場合の、テストに代わる評価測定ツールについても簡単に紹介します。
① 研修直前―レベルチェックテスト
研修前の受講者のレベルを確認するために実施します。
② 研修直後―理解度確認テスト
研修中に学んだ知識やスキルをどれほど理解しているかを測ります。テストの受験が学習意欲向上のきっかけになることも期待できます。
同じテストを研修前後で2回実施することで、能力の向上具合を確認できます。
<代替ツール>
ビジネススキルやビジネスマナーといったスキル習得型研修プログラムの場合は、テスト以外の形式による効果測定が効果的です。
講習中または講習終盤に、数人ごとのグループに分かれてロールプレイングやグループワークに取り組む、あるいは受講者によるデモンストレーションやプレゼンテーションで、研修内容のアウトプットを行うことで、理解度を測ることができます。
意識改革やモチベーションアップを目的とする研修プログラムでは、受講者が少なければ、受講によって学んだことや気付いたことを、受講者に直接インタビューする方法をとってもよいでしょう。
③ 研修3カ月後を目安―定着度確認テスト
現場に配属後一定期間を経て、研修で学んだことが受講者に定着しているかを確認します。測定結果によって、受講者の課題点が浮き彫りになるため、ブラッシュアップしやすくなります。
向上心を喚起して、一層の知識の習得や検定試験にチャレンジする効果も期待できます。
<代替ツール>
意識変革や行動変革を目指した研修プログラムでは、研修後一定期間を経過してから定着度を測る際に、配属先での受講者の行動観察で代替できます。
この場合、配属先の上司あるいは先輩社員に対して、受講者の日頃の様子に関するアンケートやヒアリングを行って、研修内容の定着度を確認します。
テストの実施方法
上述のテストを実施する際には、研修の形式や、テストの実施時期に応じて、テストの実施方法を選ぶことができます。
集合研修による新入社員研修プログラムの場合は、筆記試験による理解度確認テストの一斉実施が多く見られます。研修期間中に受講者全員分のPCが装備されている、あるいは配属後に定着度確認テストを受験する際には、Web受験も可能でしょう。
e-ラーニングによる研修プログラムであれば、プログラムの受講前と受講後にレベルチェックテストと理解度確認テストを組み込んで、一連の流れの中で受験する形をとります。受講数カ月後の定着度確認テストも、同様にe-ラーニング教材の一環としてWeb受験します。
理解度確認テスト作成上のポイント―研修内容の理解と定着を促すテストを作成する
効果測定で取り入れる理解度確認テストは、ビジネス用語や専門用語、業界動向を暗記して、高いスコアを獲った人に高評価を与えるテストではありません。
テストを通して研修内容をリマインドし、理解を高め、定着を図ることが理解度確認テスト、ひいては定着度確認テストの狙いです。
重要ポイントやキーワードをテスト紙面に盛り込む
テストを作成する際には、理解してほしい要点やキーワードを問題文やコラムに盛り込むことを検討してもよいでしょう。これによって、受験者は研修内容を振り返りながら、重要ポイントを整理できます。
用語を選択するだけの簡単な問題ばかりではなく、研修内容を総合的に理解していないと回答できないような問題を作成するのも良い方法です。こうした問題の回答結果から、研修主催者側は受講者の真の理解度を測ることができます。
研修内容の理解が必要になる問題については、解答・解説で答えにつながる詳しい説明も添える必要があるでしょう。正解を出せなかった受講者が、重要ポイントを再認識して、理解を深化させる手助けになります。
研修数カ月後に実施する定着度テストも同様です。研修内容の重要ポイントを再確認できるような問題作りや解答・解説作りを心掛けます。
テスト結果のフィードバックとフォローアップ
受講者に、理解度の度数分布表が提供されれば、受講者本人が自分の課題点を認識しやすくなります。得点ランキングなどの資料が添付されることがモチベーションアップにつながることもあります。
研修受講者の効果測定結果を研修内容とあわせて、配属先の上司や先輩社員と共有するのも有効です。身近な上司や先輩社員から受講者に対して、必要に応じて注意喚起してもらうなど、多方面からフォローアップする体制は、受講者の研修効果の維持と定着に役立ちます。
研修主催者側から受講者に対して、定期的にフォローアップメールを送ってもよいでしょう。研修内容の振り返りやアクションプランのリマインドなどを促して、新入社員研修で学んだことを実践に活かすように興味喚起することも大切です。
理解度確認テストを人材開発ツールとして有効活用
新入社員研修で行われる理解度確認テストは、新入社員の人材開発ツールのひとつです。研修の内製化にあたっては、このテストをPDCAサイクルの一環として活用できるように組み込んで、研修内容の定着を図ることが求められます。
新入社員研修の内製化は、こうしたテストの利用価値を工夫次第で最大化できる機会であると考えてよいでしょう。