「私は今回も失敗する…」それは“認知の歪み”によるストレス。その解消法とは?
2020.10.01
ツイート新型コロナウィルスの影響が続く中、本日10月1日より東京発着のGoToトラベルキャンペーンもスタートしました。東京のホテルの予約は増えているようです。今までは自粛していた観光や旅行を解禁するという方もいるでしょう。
また、以前よりも都市部の人出も増えています。朝の満員電車も復活しつつあり、コロナ禍でいかに多くの人が行動を制限していたかを再認識させられ、そしてwithコロナの生活様式へシフトしていることを実感します。
しかし、まだまだコロナ禍により仕事もプライベートも行動制限はあり、注意を払わねばならないことも多く、コロナ禍前の生活よりもストレスを感じやすい人は多いのではないでしょうか。
今回はストレス予防のための「認知の歪み」について取り上げたいと思います。
「認知の歪み」とは
「認知の歪み」とは、人の誇張的で非合理的な思考パターンのことを指します。「認知の歪み」があると、その人の現実を不正確に認識させ、ネガティブ・マイナスな思考や感情を生み出すことにつながるというものです。
例えば、“A社でのプレゼンテーションを上手にできなかった”と本人が感じた後、A社の別の部署にプレゼンテーションをすることになった時、“A社でのプレゼンテーションは上手にできないに違いない”とネガティブの思考になるという時は、目の前の事実に対する「認知の歪み」があります。
同じ会社でも別部署であれば、違う機会とも捉えられますし、プレゼンテーションが失敗していたらそもそも別部署でのプレゼンテーション機会はなかったかもしれません。“上手にできなかった”ことはあくまで自己評価に過ぎず、相手方は評価している可能性もあるのです。「認知の歪み」があると、上記のように状況を様々な角度で分析することができずに、ネガティブ思考のスパイラルに陥り、ストレスフルの状態になってしまいます。
認知の歪みの10パターン
自分がストレスと感じた時に、「認知の歪み」を整理するのが有効です。まずは、代表的な「認知の歪み」のパターンを知りましょう。
1. 全か無か思考 all-or-nothing thinking
ものごとを白か黒かでしか考えられない、極端な “完璧主義” の思考パターン
『すべての仕事で良い結果を出さねばならない。1つでも失敗があれば、成功している部分があったとしても、全て失敗したと同然である』
2. 一般化
1度や2度起こっただけの失敗・悪い出来事を、常に当然のごとく起きるコトだと思いこむ思考パターン。先のプレゼンテーションの例があてはまります。
3. 心のフィルター
物事の良い部分を意識できなくなり、悪い部分のほうへ目が行ってしまい思考パターン。
『そういえば、ここ最近良いことなんかなかったな…』と、実際は良いことはあったかもしれないのに、悪いことに心が引っ張られている状態
4. マイナス化思考 (プラスの否定)
上手くいったら「これはまぐれだ」と思い、上手くいかなかったら「やっぱりそうなんだ」と考える。良い事を無視してしまうばかりか、悪い方にすり替えてしまう思考パターン。
5. 結論への飛躍
根拠もなしにネガティブな結論にジャンプしてしまう思考パターン。2種類に分けられる。
“心の読みすぎ”
他人の言動から、ネガティブな可能性を推測すること。本人に尋ねることなく、起こりうると考える最悪のケースを推測し、その予防措置を取る。
”先読みの誤り”
物事が悪い結果をもたらすと推測すること。悲劇的な結論に一足先にジャンプしてしまう。
『私は一生不幸だ』『私はまた失敗するのだ』
6. 拡大解釈と過小評価
自分の悪いところを必要以上に大きく、自分の良いところを極端に小さく考える。あるいは他人の場合はその逆に考える思考パターン。
『部下に対してつい声を荒げてしまった。自分は暴力的な上司だ』
『あの人の素敵な笑顔は最強だ。私はまったくできないつまらない人間だ』
7. 感情的決め付け
感情を根拠にモノゴトを決め付けてしまう思考パターン。
『わたしはダメ人間のように感じる。それが何よりもダメ人間の証拠だ』
このように、ネガティブな感情は、物事の真実を覆い隠し、その感情にリンクした考えが現実と錯覚してしまう。
8. すべき思考
「~すべき」「~でなくてはならない」という自分で考えた基準が当然であるとする思考パターン。
『上司なのだからもっと大人らしい行動をするべきだ』
『私は、全ての人に愛されなければならない』
9. レッテル貼り
自分や他人に勝手なイメージを創り上げて、そのイメージを固定してしまう思考パターン。
2.の一般化を行き過ぎたパターンでもある。
『こんな失敗をするなんて、自分は全くダメな人間なのだ』
10. 個人化
物事の原因の所在が、責任のない自分にあると考えたり、必要以上に自分に原因があると考える思考パターン。
『今日雨が降ったのは、私の責任だ』
『プロジェクトの失敗はみんなには責任がない、わたしが全部悪いのだ』
逆パターンとして責任転嫁もあり得る。
『プロジェクトの失敗は私に責任はない、あいつが全部悪いのだ』
「認知の歪み」を解消するには
ストレスを感じる状況に陥った時に、状況や自分の感情を整理して捉えていきます。
「状況」「考え」「行動」「気分」をできるだけ詳しく書き出します。
例えば
状況:取引先からクレームが入り上司から注意された
考え:私はだめな人間だ。上司も私を見放しているだろう
行動:上司の目を避ける、話しかけるのが怖い
気分:とても憂うつで苦しい・怖い
どの項目も正直に書くことが肝要で、否定的な内容でもかまいません。書き出すことで心の中を整理することが重要なのです。
心の中を書き出したあとはその内容を検討し、認知の歪みがないか、ほかの考え方がないか見つめ直します。「私はだめな人間なのだろうか」「上司は見放しているだろうか」と自分の問いかけていきます。また、状況や行動も同様に見つめなおしていきます。
結果、このように捉えなおしたら気持ちが軽くなるのではないでしょうか。
状況:取引先からクレームが入り上司から注意された
考え:そもそも他の人が進めても難しい取引だったのではないか。原因究明をしたい。
クレームが入ったことで注意をされたが、それは上司としては当たり前のことだ
行動:取引先へ行こう、取引先への対応について上司に相談しよう
気分:クレーム対応のことは気が重いが、やるしかない!
それぞれの変化も書き出します。このように物事の認知の仕方を見つめ直すことでストレスをため込まず予防する効果があります。
精神医学の分野では「認知行動療法」という名で、カウンセリングで実施することも多く効果が認められている方法です。ストレスに感じる出来事があった時に、負のスパイラルに陥る前に、いち早く自分の心の整理をしてみましょう。
早速、明日からの社内勉強会・共有会等でストレス予防策として考えてみてはいかがでしょうか。コロナ禍の不安定な状況下にて、一人でも多くの人がストレスを予防・軽減して、心身共に健康的な社会生活を送ることを願っております。