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行動経済学の使い方

2022.09.16

ちょっとしたことで人間の心理・行動は変わる

近年、「ナッジ」という言葉はだいぶ市民権を得てきたように感じます。
ナッジとは、「ひじで小突く」「そっと押して動かす」の意味で、
行動経済学の中でしばしば用いられてきました。

ナッジの成功事例は数多くありますが、有名どころでは小便器の「ハエ」のナッジでしょう。
男性用トイレを清潔に保つために、ハエの絵を小便器の底に貼り付けたことで、
利用者の飛沫​​を80%減らすことに成功しました。

今でも居酒屋などに行くと、ハエではありませんが、
小便器に赤いシールが貼られているトイレを見かけたりします。

このように、ほんの少しの工夫や後押しによって、
人間の心理や行動はおもしろいくらいに変わります。
そのナッジを上手に使い、よりよい意思決定を行って、
行動を改善していきましょう、というのが今回紹介する書籍です、

タイトル:行動経済学の使い方
著者:大竹文雄
出版社:岩波新書(2019年9月発売)

プロスペクト理論

従来の伝統的経済学では、人間は計算能力が高く、複数の選択肢が与えられたとしても、
適切に情報を分析し、最も自分の利益が最大化できるように行動すると考えられていました。
しかし、既にお気づきのとおり、実際のところ人間はそれほど合理的な生き物ではありません。

  • 確実性効果

例えば、目の前に2つのくじがあり、そのうちの1つを選択するとします。
A:確率80%で4万円が得られる
B:確率100%で3万円が得られる

この場合、多くの人がBのくじを好む傾向があることが知られています。
一方で次のようなくじでは、どうでしょうか。
C:確率20%で4万円が得られる
D:確率25%で3万円が得られる

この場合には、Cのくじを選ぶ人が多くなります。
BとCのくじを選ぶ人は、伝統的経済学における合理性とは相反するものです。

ここから見えてくることは何か。
それは人間は確実なものとわずかに不確実なものでは、確実なものを好む傾向があるし、
10%や20%という低い確率は、実際よりも高く感じることです。

後者の小さい数字をより高く感じる点をもう少し補足するならば、
例えば、あなたがおおきな病気にかかったときに
「手術後に後遺症が起こる確率は1%です」という情報を得た時に、
それを過大に受け止め、評価してしまうということです。

もし、小さな確率の影響を最小限にとどめたいのであれば、
1%の確率 → 100人中99人には該当しない
という別の表現に置き換えることが有効でしょう。

  • 損失回避

続いて、次の選択肢では、あなたはどちらを選びますか?
A:コインを投げて表が出たら2万円をもらえるが、裏が出たら何ももらえない
B:確実に1万円もらえる

もう一つ別のパターンを考えてみてください。
C:コインを投げて表が出たら2万円を支払うが、裏が出たら何も支払わない
D:確実に1万円支払う

この質問においては、BとCを選ぶ人が多いことが知られています。
平均的な利得は、AとBが1万円の利得であり、CとDでは1万円の損失です。

最初の選択のような利得局面では確実な選択を好みますが、
後の選択のような損失局面では、リスクが大きい選択を好みます。
つまり、同じリスクであっても利益を得られる局面ではリスクを回避し、
損失を被る局面では、積極的にリスクを取る傾向があるのです。
これを損失回避といいます。

ナッジをどのように設計するか

プロスペクト理論を見て分かるように、私たち人間が意思決定する際には、
合理性だけを判断基準にしているわけではありません。
そこには様々なバイアスや心理的な歪みがあります。

こうしたバイアスや歪みを、行動経済学的特性を用いて、
よりよい行動や方向性に変えていく考え方がナッジです。

うまくナッジを設計できれば、仕事を先延ばしにする傾向がある人を
先延ばしすること自体が面倒に感じるようにすることができるかもしれません。

よいナッジの設計に関して、OECDがナッジの設計プロセスフローを提唱しています。
興味がある方は、ぜひフローを確認してみてはいかがでしょうか。

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