マズローの「自己実現理論」に基づき、コロナ禍のメンバーマネジメントを考える
2020.06.21
ツイート新型コロナウィルスの影響下、リモートワーク等を継続している企業も多くあるでしょう。それぞれの場所で各々業務にあたっている状況の中、1人で漠然とした不安を抱えたり、自分のキャリアを見つめなおしたり…そのような方も多いのではないでしょうか。
イレギュラーな状況下だからこそ、個人に寄り添った支援が必要と考えられています。アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「自己実現理論」に基づいて、コロナ禍のメンバーマネジメントについて考えてみます。
マズローの自己実現理論とは
マズローの自己実現理論とは、原題を“Maslow's hierarchy of needs”と言い、欲求段階説・欲求5段階説等とも言われています。「人は自己実現に向かって絶えず成長する」と仮定し、人の欲求を5段階の階層で理論化したものです。
人はある欲求が適度に満たされると、さらに高次の欲求を満足させようと努力する、その欲求を5段階の階層に分けて上図のように表すことができます。
人が「可能性を発揮したい」「成長したい」と欲する⑤の自己実現欲求に到達するまでに4つの前段階があることがわかります。メンバーマネジメントの観点で①~④の欲求を満たす職場・組織を維持できているのか考えてみましょう。
まずは「生存・安全に関する欲求を満たす」
まず、①②の生存や安全に関する欲求が満たされなければ、その上の③の社会的な欲求が沸き上がりません。コロナ禍で不安視される①②に対し、企業として①②の保障は非常に重要です。また、本人にとって①②のメンタル不安が拭えなければオンライン面談の実施や、カウンセリング等の専門職への紹介等を行い、企業として①②の欲求を満たす支援をする姿勢が重要です。
①②の欲求が満たされると③の社会的な欲求を満たすために、所属する集団で受け入れられたい・理解されたいという行動をとるようになります。仕事で求められることに応える、結果を残す原動力が③の欲求です。ある程度の自走をする段階となります。
次に「承認欲求」を満たすために「承認」を伝えること
③の欲求が満たされると④の承認欲求を満たしたくなります。④の承認欲求の段階は企業とのギャップもおきやすく、「仕事がルーティン化してきて面白くない」「私ではなくてもできる仕事を任されている」と承認欲求が満たされていないと感じる場合があります。
その時に企業側は「責任ある仕事を新たに任せる」「ジョブローテーションを行う」等、期待する職責とあわせて新たなジョブアサインを行うこともあるかと思います。しかし、それが本人の承認欲求を満たす解決策とならないこともあります。
マズローは「人の自己実現欲求が湧きおこる前提は、所属する集団の中で他の人に受け入れられる経験やその独自の存在を認められ、尊敬される経験が必要なのである」と述べています。つまり、まずは遂行中の業務に対しての十分な承認・評価・報酬で認められていると感じさせることです。企業としては評価をしていても、面談の場面等でフィードバックできていなければ、承認欲求は満たされないままです。
物理的な距離があるリモートワークでは、上長はより意識的に「承認」をせねばなりません。オフィスワークでは「ありがとう」「良かったよ」「おめでとう」等、ちょっとしたやり取りの流れで承認の言葉を自然にかけていたこともあるでしょう。多人数がいる中での承認も効果的です。しかし、リモートワークでは意識をしなければ、声をかける回数は確実に減るため、オンライン面談やミーティング等「承認」の場を上長から作り出すよう心掛ける必要があります。
自己実現者の「15の特徴」
④の承認欲求が満たされると⑤自己実現欲求を満たす行動をおこすようになります。この段階はすでに自走をしているため、組織内で自己実現のために自ら立ち回ることができる人材となるでしょう。
マズローの自己実現者の15の特徴
①現実をより有効に知覚し、それとより快適な関係を保つこと
未知なものを拒まず、むしろ好む
②自己・他者・自然に対する受容
③自発性、単純さ、自然さ
④課題中心的
物事の本質を捉えようとする
⑤プライバシーの欲求からの超越
孤独を好む
⑥文化と環境からの独立・自律的・能動的人間
⑦認識が絶えず新鮮である
⑧至高なものに触れる神秘的な体験
⑨共同社会感情
人類を助けようと心から願っている
⑩対人関係において心が広く深い
⑪民主主義的な性格構造
⑫手段と目的の区別、善悪の区別
手段より目的のほうに惹きつけられる。道徳を持っている
⑬哲学的で悪意のないユーモアのセンス
⑭創造性
⑮文化に組み込まれることへの抵抗、文化の超越
社会の規制ではなく、自らの規制に従っている。
企業・組織のメンバーマネジメントやキャリア支援に、マズローの自己実現理論を参考とされてみてはいかがでしょうか。
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