奇跡の経済教室【基礎知識編】
2019.11.07
ツイートMMT理論って何だ?
趣味でも読書でも食べ物でも一度ハマるとしばらくそれだけになってしまうE氏です。
(最近は"○○学"に夢中)
さて、前回は統計学についての話でしたが、今回は経済学です。
少し前から巷を賑わせているMMT理論というものを皆さんはご存知でしょうか。
Modern Monetary Theoryの頭文字を取ったもので、現代貨幣理論とも呼ばれています。
恥ずかしながら私は全く知らず、聞いたこともない有様でした。
そもそも経済って何となく取っ付きにくく、
興味関心が薄いので勉強する気も起きにくい。
でもビジネスパーソンとして最低限は知っておかないとマズいよね。
というジレンマにずっと苛まれてきました。
そんな私の状況を知ってか知らずか、今年の春にとても面白い本が出ましたので、
私と同じく経済が苦手だぁ!という方にオススメの一冊をご紹介します。
著者:中野 剛志
出版社:KKベストセラーズ (2019年4月発売)
要約
●日本は1998年以降、基本的にデフレ傾向が続いている
経済成長率(名目GDP)の伸び率は最下位で、調査国の中で唯一のマイナス20%
●デフレとは「需要不足かつ供給過剰」
デフレは物価が下がり、お金の価値が相対的に上がっている状態
需要は個人消費と企業投資の2つに分けられる
デフレ脱却には需要を増やせばよい
●なぜデフレが止まらないのか
デフレ下では個人や企業は消費や投資を控えるのは合理的な判断
ミクロでは正しくてもマクロ(経済全体)では逆に好ましくない結果を生む
これを「合成の誤謬(ごびゅう)」と呼ぶ
●デフレ脱却は政府主導でしか成し得ない
合成の誤謬がある限り、デフレは政府が積極的に介入しなければならない
しかし、平成の時代は小さな政府で市場原理主義であった
●失われた20年間の真実
1996年の橋本龍太郎政権の構造改革は英サッチャー政権や
米レーガン政権のモノマネであり、以後は規制緩和・自由化・民営化など
基本ずっとインフレ対策だった
●経済政策をビジネスセンスで語るな
デフレ対策は競争抑制や保護主義、無駄な公共投資によるバラマキであり、
一般的なビジネス感覚、家計簿感覚と同じで判断してはいけない
●お金の正体(MMT理論、現代貨幣理論にあたる部分)
貨幣は負債の一種であり、貸借関係を記録したものに過ぎない
貨幣は銀行が貸し出した時に創造され、返済と同時に消滅する
貨幣の信用・価値は国家権力が納税手段とすることで担保されている
●日本財政再建への道
国債、公共投資など財政赤字を拡大させ、民間にお金を流す
アルゼンチンやギリシャと違い、自国通貨の発行権がある日本がデフォルトすることはない
E氏の私見
個人的に非常に興味深い本でした。
世間一般のニュースや経済学者の言い分は財政健全化が必要不可欠で、
公共投資を抑えて、グローバル化競争することこそが日本再生の道だという
印象を受けていたのですが、MMT理論はそれとは真逆に位置します。
もしも企業や家計が借金まみれだったら、すぐに破綻です。
私たちには借金や赤字は少ない方が良いという固定観念があります。
国債をバンバン発行して、とにかく公共投資をやりまくる。
赤字を垂れ流すことこそが日本を救う、と主張されても、
経験や直感に反するので受け入れがたいんですよね。
こうしたこともあって読んでいる時は何となく理解できるんですが、
人に説明することが出来ない。
つまり、真に理解はできていないということです。
というわけで久しぶりに二度、三度と読み直しをした本でもあります。
MMT理論が正しいか正しくないかは意見が分かれるところです。
これまでの経済理論が100%全て誤りかというとそうとも言い切れません。
大事なのは「情報を仕入れて自分で考えてみる」ことでしょう。
経済学者が言っているから、官僚がやることだから間違いがない、
と考えるのはあまりにも軽率と言わざるを得ません。
本書においてもAmazonのレビューを見ると、
上記のようなコメントが散見されるのは実に残念です。
無知より恐ろしいのは"右に倣え"の精神ではないかと思うのです。
ぜひ皆さんも本書を手に取り、
ご自身の考えに想いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は本書をきっかけに
「そもそも経済って成長し続けないといけないものなのか?」
という疑問を持ちました。
一つのことを知ると、それ以上に知りたいことが別に出てくる。
読書は旅みたいなもので終わりがありませんね。
私の知的好奇心を満たす旅はまだまだ続きそうです。
今回は以上です。
それではまた次回お会いしましょう!