あなたは研修講師として、あるいは企業の教育担当者として、参加者の心をつかむためにスライド作成にどれだけのエネルギーを注いでいますか?
研修業界において、避けては通れない「現実的な数字」があります。 それは、「1時間の研修を成功させるには、20〜30枚程度のスライドが必要であり、その1枚を仕上げるのに30分から1時間はかかる」という事実です。
つまり、たった1時間の登壇のために、20時間から30時間という膨大な時間が、資料作成のためだけに費やされることになります。通常業務を抱えながら、この「数日間分の工数」を捻出するのは至難の業です。多くの講師が、本番直前までPCに向かい、睡眠時間を削って資料を仕上げ、肝心の本番では疲労困憊……という「本末転倒」な状況に陥っているのが実情です。
本記事では、この「1枚1時間の壁」と戦うすべての講師・教育担当者のために、スライド作成の本質的な極意を整理するとともに、限られた時間の中で最大の教育成果を出すための「賢い向き合い方」を提案します。
なぜ、スライド作成はこれほどまでに時間を奪うのか?
1. 「20〜30枚」というボリュームの正体
1時間の研修でスライドが20〜30枚必要になる理由は、受講者の「認知リズム」にあります。1枚のスライドを5分も10分も出しっぱなしにすると、受講者の視覚的な刺激が途絶え、集中力は急激に低下します。 適切なタイミングで画面を切り替え、新しい情報を提示するためには、2〜3分に1枚のペース、つまり1時間で20〜30枚という分量が、教育工学的な「適正値」となるのです。
2. 「1枚1時間」かかってしまう構造的な理由
スライド1枚に1時間かかる理由は、単にパワーポイントを操作する時間だけではありません。 「何を載せないか」を決める苦しみ: 1枚のスライドに情報を詰め込みすぎると、受講者は混乱します。膨大な情報からエッセンスを抽出し、「1スライド・1メッセージ」にまで削ぎ落とす「情報の取捨選択」に最も時間がかかります。 デザインと視覚誘導の設計: 文字サイズ、色使い、そして受講者の視線をどこからどこへ誘導するか。これらを論理的に組み立てようとすると、配置ひとつに数十分が瞬く間に過ぎていきます。 構成との整合性: 前後のスライドとのつながりを確認しながら作成するため、「作っては戻り、直しては進む」の繰り返しが発生します。
スライド作成の基本原則 ― 最小の労力で質を担保する
制作時間を少しでも短縮しつつ、受講者に響く資料を作るには、以下の「極意」を守ることが不可欠です。
1. 目的の解像度を限界まで上げる
いきなりPCを立ち上げるのは厳禁です。まず「この研修で受講者がどう変わるか」を明確にします。目的が曖昧なまま作成すると、10枚作った後に「やっぱり方向性が違う」と全て作り直すことになり、制作時間はさらに倍増します。
2. 認知負荷をゼロにする「シンプルデザイン」
受講者は「講師の話を聞く」と「スライドを見る」というマルチタスクを強いられています。 文字数は最小限(1枚に100文字以上は載せない) フォントは32pt以上を推奨図解は「左から右」「上から下」の流れを徹底これらをルール化し、「迷う時間」を削ぎ落としましょう。
3. ストーリーテリングの型を活用する
ゼロから構成を考えるのではなく、「課題提示→解決策→具体例→まとめ」という鉄板の型に内容を当てはめていきます。ストーリーの「型」があることで、20〜30枚のスライドそれぞれの役割が明確になり、制作の迷いが軽減されます。
テクニカルなポイントと、奪われるリハーサル時間
1. ツールの習熟と「デザインの罠」
機能を覚えるほど凝った装飾をしたくなりますが、それは受講者のためでしょうか?プロの現場では、凝ったアニメーションよりも「潔い白背景に、力強い一言」の方が、圧倒的に受講者の心に刺さることが多々あります。
2. 視覚情報の質と「画像検索」の落とし穴
内容に合致する画像1枚を探すために1時間彷徨う……。これも制作時間を肥大化させる正体です。しかし、質の低い画像は資料の信頼性を損なうため、妥協もできません。このジレンマが講師を苦しめます。
3. 最大の仕事は「デリバリー(伝え方)」にある
スライドが完成して燃え尽きてしまい、一度も通し練習をせずに本番を迎える講師が少なくありません。しかし、研修の成否を決めるのは資料の美しさではなく、あなたの伝え方です。資料作成に20〜30時間かけている間に、本来最も時間をかけるべきリハーサルの時間が奪われている事実に気づかなければなりません。
令和の研修戦略 ― 効率化というプロの選択
ここで、現代の研修担当者が取り入れ始めている「新しい選択肢」についても触れておきたいと思います。それは、「資料をゼロから作ることをやめ、ベースとなる部分はプロの知見を借りる」という考え方です。
一つの選択肢としての『まなびスライド』
もし、どうしても資料作成の工数が確保できない、あるいは専門外のテーマで構成に自信がないという場合、弊社が提供している『まなびスライド(https://manabislide.base.shop/)』のようなサービスを活用するのも一つの手です。 これは、創業15年における研修会社のノウハウが凝縮された20〜30枚規模の研修資料を、編集可能なPowerPoint形式で導入できるものです。
「作る」から「最適化する」へのシフト
こうしたツールを活用するメリットは、単なる「手抜き」ではありません。 プロの構成(型)をベースにできる デザインや画像探しの時間をゼロにできる 浮いた時間を、自社独自の事例の盛り込みやリハーサルに充てられる すべてを自前で作ることにこだわらず、信頼できるベース(80点)を使い、そこに「自社ならではのメッセージ(20点)」を加えることで、短時間で100点の研修を完成させる。この「最適化」こそが、令和の教育現場に求められるタイパ(タイムパフォーマンス)の形と言えるでしょう。
まとめ:賢い講師は「1枚1時間」を卒業する
研修講師にとって、スライド作成は避けて通れない道です。しかし、その道が「20時間の苦行」である必要はありません。 目的を明確にし、シンプルなデザインを心がけ、そして『まなびスライド』のようなプロの武器を賢く取り入れる。これによって、資料作成のプレッシャーから解放され、あなたは「伝えること」そのものに全神経を集中できるようになります。 「もう作らない。賢く買う。」 この選択が、あなたの研修講師としてのキャリアを、そして受講生たちの未来を劇的に変えるはずです。限られた時間を、最高の教育のために。次回の研修では、ぜひこの「タイパ戦略」を実践してみてください。
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