ヒップスターゲート

あゝ人材教育!3分ななめ読み

研修会社の「今」と「今後」

2014.11.11

職業を聞かれ「研修会社」と答え、「??」な顔をされた事が何度もある。「研修を売る会社」という認識が世の人にはないらしい。
それでも、社員研修の様子を説明し、カリキュラムやテキストが私たちの商品だと言うと納得をする。
誰でも、「研修」という商品があることを知ってはいるのだ。しかし、自動車業界や家電業界のように研修業界が認知されているかと言えばそうではない。「研修会社??」な顔をされるのはそのせいだ。

2013年度の研修サービスの市場規模は4790億円(売上高ベース)だそうだ。前年度比2.6%増だとういう。
リーマンショックの影響で急激に景気が悪化し、震災のあった2011年に市場が一時停滞した。

その後、復興特需やアベノミクス効果で業績 が回復し、見合されていた人材育成への投資がされ始めたのだ。しかし、研修を専門業者に外注しない「教育研修の内製化」は間違いなく 進んでいる。社内に人材スクールを設置して研修プログラム開発、講師育成に取り組んでいる企業も少なくない。 こうした時代の研修会社の存在意義とはなんだろうか。

企業が研修を外部委託するときに何を基準に研修会社を選定するのか。この事はいくつかのシンクタンクが調査結果を公表している。
調査結果として共通しているのが過去の実績だ。大手研修会社ならば、会社規模の観点で信頼がおけるし研修の実施数も桁外れに多い。
評価も出揃っているので実績を問うに事欠かない。中小の研修会社でもスター講師が在籍していたり、個性的なプログラムなどの得意分野で評価が高ければ、人事・教育担当者の目に触れる機会も多い。その上で、企画内容が自社の人材要件に合致するものであれば、選択基準を満たすということのようだ。

人事・教育担当者が研修を企画するときに望ましいのは、まず会社の長期的な展望に立つことである。研修には必ず「目的」があるが、自社が必要とする人材要件が整理されていればその目的を設定することができる。企業の長期的展望を把握すると、どのような人材をいつまでにどれだけ揃えねばならないかが明確になる。HRD部門では、そうして明確化された人材要件を構造的に確立できる人材育成計画を立てることになるのだ。その一つが研修であり、私たち研修会社はそこに商品を提供する。

人材要件だが、実は流行があり、それは国際社会における日本の立ち位置や成熟度に影響される。1930年代後半からの軍国主義、戦後の復興、その後の経済成長とバブル経済、人材要件は時代とともに変遷する。最近ではさしずめ“グローバル人材”だろうか。

いわゆる「ゆとり世代」と呼ばれる新入社員に対する教育研修も一つの流れである。

当然だが、企業の成熟度によっても人材要件は変わる。研修会社は顧客企業がどの段階にあるのか、見極める能力が必要なのだ。

HRD部門担当者との面談で研修対象層の課題が伝えられる。企業サイドで把握する問題点は具体的で観念的なことはあまりない。どの企業も社員教育の思いは強く、何を目的に研修を実施するか明確だ。しかし、私たち研修会社はヒアリング中(あるいは研修中)、受講者の仕事環境が少し見えてしまうものだ。誤解を恐れずに言うのならば“本当の問題はどこにあるのか”という事。

例えば、「積極性がなく覇気のない若手のモチベーションを上げたい」という課題があるとする。若手にも問題はある。しかし、その原因は職場環境にあって、どこかの官庁ように縦社会で風通しが悪い。とか。そうした場合、単純に動機づけの研修をしても場当たり的で、効果は出ない。別のアプローチで研修を提案するべきだろう。

もちろん、顧客企業担当者との良好な関係が成立している必要はあるが、研修会社はその企業が属する業界の特徴、企業規模や創業年度などから、陥りやすい問題を予測して仮説をたてる能力が求められる。

冒頭にも述べたが、研修を内製化する動きは、今は止めようがない。自社の社員を自ら育成するのだから、本来の姿だとも思う。

しかし、研修プログラムは日々更新されていく。心理学とも深く関わりがあり、新しい理論が発表されれば、それによる教育方法が生み出される。その理論は、研修プログラムとして目に触れる頃には平易に噛み砕かれているが、企業の人事部門担当者が研修に落とし込むとなるとやはり難しい。また、受講者をファシリテートする講師のスキルは特別なものだ。

こうした事から、全てのテーマや階層の研修を内製化するのは、恐らく無理だろう。

企業のHRD部門と研修会社は“人材”という同対象を見ながら、視点が違う。研修会社はマクロから企業の教育体系を見るものである。

また、そうしなければ研修会社の存在意義はない。研修内製化の動きのなか、私たち研修会社は人材、社員教育の専門家として、これまで以上に高次のプロ意識が求められる。研修は一旦、内製化されるだろう。しかし、この流れも一部のテーマに限られ、研修会社に戻される機会もあるはずだ。戦後長年にわたり、研修会社が存在してきた意味が必ずある。

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