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オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題

2022.10.14

オンラインの落とし穴

コロナで一気に社会に普及したオンラインコミュニケーション。
多くの企業で、オンラインによるリモートワークが推進されました。

オンラインコミュニケーションやリモートワークは、
移動コストもかからず、私たちの生活を一変させました。

しかし、オンラインで便利になったのと引き換えに、
私たちの脳活動を阻害してしまっていることが明らかになりました。

先日、テスラ社CEOのイーロンマスクはリモートワークを否定し、
社員に出社をするよう宣言していたことが話題になりましたが、
脳の活動から見れば、それは正解のようです。

オンラインの限界はどこか。
脳に与える悪影響とは何か。
具体的な答えは今回紹介する書籍の中にあります。

タイトル:オンライン脳 東北大学の緊急実験からわかった危険な大問題
著者:川島 隆太
出版社:アスコム(2022年8月発売)

オンラインコミュニケーションでは共感や協調は生まれない

著者は対面とオンラインのコミュニケーションにおける
脳の活動の違いを見極める実験を行いました。

東北大学の学生5人1組(全25人)に集まってもらい、
次の2つの条件で自由に対話をしてもらうことにしました。

①顔を直接見ながらの「対面会話条件」
②モニタを介しての「ウェブ会話条件」

実験の結果、①では参加者5人の脳活動の同期が観察されましたが、
②では同様の事象は確認されませんでした。

同期とは、平易に言い換えれば「共感」のことです。
脳科学の研究から私たちは他人と共感するとき、
脳のどの部位が反応するかは既に明らかになっています。
今回の実験では、その共感をするときに働く部位が、
②では全く活性化しなかった、ということです。

さらに、学校の授業でも似た実験が行われました。

①生徒・教師間や生徒同士でやりとりがある双方向型の授業
②教師がひたすら語りかけ、講義をするだけの一方向型の授業

結果は①の双方向型の授業のほうが、脳の活動同期が確認されました。

オンラインでは共感しない理由

脳の活動では差異があることが分かりましたが、
私たちは対面とオンラインでそこまで違いを感じません。
それゆえにオンラインがここまで普及したとも言えます。

なぜオンラインコミュニケーションでは、共感が生まれないのでしょうか。
その理由は主に2つあると著者は言います。

オンラインでは相手の目を見れないから

オンラインコミュニケーションで相手の目を見ようと思うと、
その視線はどこに向かうでしょうか。

基本的にはカメラのレンズではなく、相手の顔でしょう。
そうすると実際に相手のモニタに映し出されるのは、
微妙に視線がズレたあなたの顔なのです。

些細なズレであっても脳は大きな違和感として受け取り、
結果として視線が合っていない状態が常に発生してしまうのです。

オンラインはパラパラ漫画だから

一般的なオンラインでは通信速度の問題から、
映像と音声は微妙なズレが生じます。
オンライン上で映し出される画面は、
電子的なパラパラ漫画と言えます、

しかし、私たちの脳はミリ秒単位の
ごく短い瞬間瞬間を捉えられるほどの高性能であるため、
オンライン画面は目の粗いパラパラ漫画を見せらせているようなものなのです。

まとめ

一応はリアルなコミュニケーションを出来ていると思えてはいますが、
脳を騙せるほどの品質には至っていないのが、現代の科学技術です。
もしかしたら、これから技術革新が進み、
より対面に近い環境下でのコミュニケーションが取れるようになるかもしれませんが、
それはまだ随分先の話でしょう。

今やスマホやタブレットがあれば、遠隔地にいる人々とも、
ほぼタイムラグなく、コミュニケーションを取ることができます。
しかし、その便利さを享受する一方で、
脳には多大な負担やダメージを与えているかもしれません。

本書では「スマホを頻繁に使う人は感情コントロールが下手である」
との調査も行っています。

今やデジタルデバイスは切っても切り離せない存在です。
ただ、その便利さゆえに常に頼り過ぎては、
私たちの脳は衰えていく一方であることを忘れてはなりません。

 

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