ライフキャリア・レインボーから考える彩りあふれる人生デザインのかたち
2020.06.14
ツイートキャリアとは仕事の視点から見た人生である
新型コロナウィルスの影響による外出自粛要請は、多くの人々の働き方や生活に大きな変化をもたらしました。「職業人」としての自身の在り方はもちろんのこと、「家族」や「余暇の過ごし方」「社外の活動」についても考えさせられた方は多いのではないでしょうか。
キャリアという言葉を聞くと仕事と結び付けがちですが、元々、キャリア(career)の語源は、英語の馬車(carriage)の轍(わだち)だと言われています。そこから意味が転じて、人の足跡や経歴なども意味するようになりました。
人を乗せる馬車が道を進むと、そこには轍ができます。キャリアという言葉は人生そのものを表す言葉とも捉えることができます。
また、ドナルド・E・スーパー(アメリカのキャリア研究者)は「キャリアとは仕事の視点から見た人生である」と定義しています。
キャリア発達を職業選択の問題だけではなく、その後の生涯にわたって継続する職業生活・家族や地域など職業生活以外の生活領域における様々な役割を含めて、生涯発達の中に位置づけてとらえる「ライフキャリア」という考え方を提案しました。
ライフキャリア・レインボーとは
ドナルド・E・スーパーはライフキャリアを「人生それぞれの時期で果たす役割(ライフ・ロール)の組み合わせである」と定義しています。
「キャリアは一生発展し続ける」という理念のもと、ライフキャリアを年齢・役割(ライフロール)・場面(ライフステージ)の組み合わせであるとする理論をライフキャリア・レインボーといいます。
人は生涯にわたり、社会生活や家族の中で経験や役割を積み重ねていきます。その中で人のキャリアは形成されます。その役割をバランスよく統合することができれば満足感や達成度の高い生活がもたらされると考えます。下図の虹のような図で表すことができることからライフキャリア・レインボーという名がつけられています。
ライフ・キャリア・レインボーの図。Donald E., Ph.D. Super、Branimir Sverko、Charles M. Super編『Life Roles, Values, and Career International Findings of the Work Importance Study』(Jossey-Bass Publishers刊)の24ページの図を基に簡易化し、日本語で表記
8つの役割(ライフロール)
①子ども
親との関係における自分、親に対して注がれる時間。幼いころは、子供としての役割がほとんどです。
②学生
学ぶ立場にある生徒や学生。働きながら社会大学、大学院、専門学校に通う人は学生の役割も兼ねます。
③職業人
仕事をする立場、アルバイトなども職業人としての役割です。
④配偶者
夫・妻の役割。法律上の夫婦ではなくても、共に生活を送るパートナーとしての役割です。
⑤家庭人
親元を離れてから始まる役割。家事全般をする役割。日曜大工的なことも入ります。
⑥親
子どもを持った時から始まる役割です。
⑦市民
社会を構成する一員。ボランティアなど、社会に貢献をするということです。
⑧余暇を楽しむ人
趣味やスポーツなど、好きなことをして楽しむ立場、それに費やす時間
ライフキャリア・レインボーを描く
上記の図を参考に、自身の過去~現在~未来の役割を整理しましょう。その時に、親・配偶者・子どもの年齢やライフイベントも記入します。人生で自分のおかれている役割を認識しながら、自分の職業人生も描くことで充実した社会生活を送ることができるのです。
特に女性は出産や子育てなどの特有のライフイベントがあるため、キャリアの中で職業人以外の役割(ライフロール)を意識することが非常に有益です。また、共働き世帯も増えている折、男性も「親」「家庭人」としてのライフロールを意識することが求められているのではないでしょうか。
そして、今「人生100年時代」という言葉があります。人生が100年に延びると想定されている現在は、定年後のセカンドライフも視野に入れて自分の生き方を考える必要があります。人生100年時代では、定年後も人生は30年以上続きます。
その時に備えてお金や余暇の過ごし方を含む「生き方」を考えなければならないのです。
「彩りある人生」という言葉もある通り、カラフルな人生の虹を是非描いてみてはいかがでしょうか。