2020.02.14

「大人の学び直し」で能力開発 激変するビジネス環境をセカンドキャリアで迎え撃つ

あゝ人材教育!3分ななめ読み

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増加傾向にある、好業績でも早期希望退職を実施する企業

東京商工リサーチが発表した「2019年(1-11月) 上場企業『早期・希望退職』実施状況」(2019年12月6日付)によると、対象期間中に早期・希望退職者を募集した上場企業は計36社、対象人数は1万1,351人にのぼり、過去最多となりました。

早期・希望退職実施企業36社のうち、約7割にあたる24社については業績不振や市況低迷が実施理由でした。

注目すべきは、アステラス製薬や中外製薬、カシオ電算機、キリンホールディングス(キリンHD)など、残りの3割の企業です。これらの企業は、業界大手で業績が好調であるにもかかわらず、将来のビジネス環境の変化を見据えた事業改革のための早期・希望退職を実施しています。

2020年以降もすでに7社が早期・希望退職者募集を予定していること、そのうち6社は業界大手で業績堅調な企業であることも伝えられており、今後の事業再編に向けた早期・希望退職者募集は増加傾向が続くとみられています。

好況時の早期・希望退職は企業の未来志向型事業改革の一環

同「上場企業『早期・希望退職』実施状況」は、2019年に業績好調な企業が早期・希望退職者を募集した理由として、以下を挙げています。

・国内市場成熟化による先行きに懸念がある
・経営体力のあるうちに既存事業の見直しを行う
・データ解析、マーケティング、研究開発など、人材が不足する領域の人材を強化する

好況時のリストラの背景に社員構成の適正化も

上述の理由以外にも、社員構成のボリュームゾーンであるバブル期入社社員対象のリストラを行いながら、重点分野への新たな人員配置によって、社員構成の適正化を図る狙いがあるとも考えられています。

定年制見直し、雇用の流動化も後押し

本報告は、大手企業を中心に、定年制度見直しへの動きが出ていることや、働き方改革による雇用の流動化が進んでいることが、業績好調な企業で早期・希望退職者募集が増えている背景にある点も指摘しています。

2019年5月に経団連の中西宏明会長とトヨタ自動車社長の豊田章男社長から、相次いで「終身雇用の継続は難しい」という意味合いの発言があったことからも、定年制見直しは経済界全体の流れであると推察されます。

70歳までの雇用延長を見据えた40~50歳代社員の早期・希望退職も

政府は2019年12月19日に社会保障改革案を発表しており、その中で、複数の選択肢の一つとして、希望者全員の70歳までの雇用継続を努力義務として盛り込んでいます。この施策が実現すると企業への人件費負担が増す反面、60歳以上の社員を対象とした早期・希望退職者募集といった対策はとれなくなります。

そのため、好況時といえども40~50歳代対象の早期・希望退職が今後増える可能性も否定できません。

本社会保障改革案では中途採用の促進についても言及されており、今後は解雇規制を緩める、あるいは雇用の流動化を進めるための法整備も見込まれます。

セカンドキャリアは社会の潮流へ「大人の学び直し」の重要性

経済界の動向や政府の社会保障改革案などからわかるように、従来のような一括採用と終身雇用がセットになった日本型雇用に代わって、中途採用と雇用の流動化、定年制の見直しなどは社会全体の潮流になっています。

このような状況を見越して、「セカンドキャリア制度」や「キャリアチャレンジ制度」といった制度を設けて、40~50歳代の社員を対象としたキャリア開発研修を実施したり、リカレント教育の支援を行ったりする企業も増えています。

上述のキリンHDでは1990年代から「セカンドキャリア制度」が導入されており、45歳以上の管理職を対象に再就職支援サポートを実施する、あるいは退職金の割り増し制度を設けるなどを行っています。

みずほ証券では、2020年1~3月に「セカンドキャリアの形成」「社外組織での活躍」を前提とした早期希望退職者を募集することが報道で明らかになっています。

SMBC日興証券では、介護との両立や退職後のセカンドキャリアを見据えた多彩な働き方を支援する意味で、2020年度からの40歳代以上の社員が対象の「週3日勤務制」、30歳代以上の社員対象の「週4日勤務制」、入社4年目社員以上の副業解禁が導入されます。

想定される早期退職やセカンドキャリア 当事者意識で早めの対応を

早期退職やセカンドキャリアはすでに現在のビジネスパーソンにとって想定内の出来事になっています。さらに、人生100年時代も目前となり、30~40歳代、あるいは20歳代のうちから、自分のセカンドキャリアや生涯にわたる働き方について積極的に考えて準備を進めることが求められています。

セカンドキャリアを考える際にもっとも気を付けたいことは、それまでの職種や職業、条件にとらわれすぎないことです。経験や実績を活かすことも大切ですが、それに固執すると、転職などがうまく進まない場合も出てきます。

ここで欠かせない発想が「大人の学び直し」です。「リカレント教育」とも呼ばれており、今ある能力を開発する、新しいスキルや能力を習得するという観点で、社会人の立場のまま自律的に学ぶことを意味します。

「大人の学び直し」を始める前に必ず考えたいのが、自分自身のセカンドキャリアに対するビジョンです。「どのような仕事をしたいのか」「何歳まで働くのか、どう働くのか」「どんな人生を送りたいのか」といったビジョンを明確にすることがファーストステップになります。

その上で、現在の仕事を粛々と進めながら、自分の立てたビジョンに沿った「大人の学び直し」の具体的な方法を検討し、実行に移していきます。

「大人の学び直し」で技術のブラッシュアップや能力開発を

「大人の学び直し」では、各自のセカンドキャリアのビジョンがさまざまであるように、学ぶべき内容も多岐にわたります。

本項では、「大人の学び直し」の一例をご紹介します。

司法書士、行政書士、税理士、社会保険労務士など―いわゆる“士業”の資格取得

資格取得によって独立開業も可能です。定年がないので、人生100年時代も生涯現役で働くことができます。

食品衛生責任者、防火管理者など―飲食業の独立開業に必要な資格

日頃の趣味を活かして飲食店を開業する際に必要になる資格です。講習を受けることで取得できます。

MBA(経営学修士号)―ビジネススクールで学ぶ経営学

都心部のキャンパスで、社会人を対象とした夜間のMBAプログラムも各種開校されています。将来の起業を考えている場合などに役立ちます。

プログラミング技術、映像デザインなどのIT系スキル―IT分野でフリーランスも

IT分野での起業に不可欠なプログラミング技術や、フリーランスやリモートワークで活用できるグラフィックデザイン、映像デザイン、DTPなどのスキルを習得します。オンライン講座や夜間開校講座があります。

用環境の変化にあわせて「大人の学び直し」で先行準備

雇用環境の変化を前向きに受け止めて、積極的にセカンドキャリアや自分らしい働き方を考えることが求められています。

この流れに不可欠になるのが「大人の学び直し」です。将来のビジョンを見越した早めの「大人の学び直し」が肝心なのではないでしょうか。

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