2020.06.16

僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた

読書マニアE氏の推薦ビジネス書

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やめたいのにやめられない

あなたにはやめようと思っているのにやめられないことがありますか?
やめられないのは自分の意思が弱いから、と結論付けるのはまだ早いかもしれません。

実は、世の中の多くの製品・サービスが大衆に積極的に消費させることを意図して作られており、
あなたの意思力とは関係なく夢中にさせる仕掛けがたくさん仕込まれているだけなのです。
Facebook、Twitter、Instagram、テレビゲーム、パチンコ、スロットなど例を挙げればキリがありません。
ある研究結果によるとスマホについては、1日3時間も見ているということが分かっています。

でも楽しいからやめられない。この気持ちはとてもよく分かります。
ただ、そうしたものに夢中になっていることで、いたずらに時間を浪費してしまっていませんか?
「あぁこんな時間だ。本当は勉強したかったのにできなかったな。」
「昨日もあんまり寝てないから、昼間なのにすごい眠いなぁ。」
なんてことになっていないでしょうか。

このように短期的には欲求が満たされて気分が良くなるものの、
長期的には害がある行動に抗えない状態が『依存症』なのです。
夜通しゲームをしたりすることは楽しいですが、そのツケは必ず翌日に表れます。
それなしでいることが難しくなった体験に自ら強く執着してしまうのであれば、それは立派な依存症です。

今回はそんな依存症に関する一冊をご紹介します。

著者:アダム・オルター
訳:上原 裕美子
出版社:ダイヤモンド社(2019年7月発売)

要約

依存症を引き起こす6つの罠

①魅力的な目標
目標があるからこそ人が頑張れるという側面あるが、実際のところ目標が人生に悪影響を及ぼす。
目標が失敗すれば失望するし、成功すれば次の目標を目指さねばならず、心の休まる時がない。
現代は皆が目標達成に向かって突き進んでいる時代。
逆に言えば、魅力的な目標がない人生はつまらないという固定観念が私たちを苦しめることもある。

②不確実性のあるフィードバック
ギャンブルがそうであるように、勝ったり負けたり結果が不確実なものに人は惹かれる。
理由は簡単。常に勝つことまたは負けることが分かっていたら、勝負は全くおもしろくない。
勝つときもあれば負けるときもあるからこそ熱中する。
この勝率は50:50よりも少し高めの70%、いわゆる自分なら勝てると錯覚するほどの確率がベストで、
これをうまくビジネスに利用しているのがスロットやパチンコである。

③進歩の実感
任天堂のファミコン、スーパーマリオブラザーズが大ヒットした理由はいくつかあるが、
その一つに「最初のハードルが低い」ことが挙げられる。
スタートした瞬間から直感的に操作できるため、すぐに楽しさを味わうことができる。
説明書を読まなくても、どのボタンが何に割り当てられているのか操作しながら覚えていけるので、
上達(進歩)の実感を得ることもできる。するとプレイヤーは「あと1回、もう1回だけ」という風にして
ゲームにのめり込んでいくようになる。

④難易度のエスカレート
難易度がエスカレートするのは、基本をマスターした後も長く遊び続けたくなるための重要で不可欠な要素。
例えばテトリス。基本操作もルールも簡単だが、プレイヤーが上達するにつれてゲームの難易度も上がる。
ブロックが落ちてくるスピードが速くなり、より短い時間で操作する判断力とテクニックが求められる。
腕が上達することは脳が効率的に動くようになった証明であり、人はそこに快感を覚えるようにできている。

⑤解消されない緊張感
人は未完結のものが気になる。ドラマの次回予告、映画のラストなど先の展開が読めないものは人を虜にする。
この人間心理をうまく活用しているのがネットフリックスやアマゾンプライム。
ネットフリックスは2012年8月に「自動再生機能」を導入。
ドラマで1話目を観終わると、自動的に次のエピソードがロードされて5秒後には再生が始まるようになった。
これにより多くの人がドラマを一気に観る人が続出。
当然ながらこうした視聴スタイルは、人々からあっという間に時間を奪い去ってしまうことになる。

⑥強い社会的な結びつき
私たちは他人からどう見られているかが無性に気になる。SNSにのめり込む心理はまさにここにあり、
誰かにいいねをもらうことは社会的承認が満たされることと同義なのである。
自分が同じ考え・価値観を持つ集団にいるという安心感が得られるわけだ。
逆にSNSでの孤独とは社会的な死刑宣告とも言える。
いまやSNSだけでなくオンラインゲームなどをはじめ様々なシーンで他者との繋がりがあるため、
私たちはこの関係性を維持することに多くの時間を使ってしまっている。

E氏の私見

依存症とは短期的に見れば欲求を満たして幸せな気分にしてくれるものの、
長期的に続けていくと社会的または身体的リスクを伴うもののことを指します。

依存症ビジネスの罠から身を守り、本当に自分がやるべきことに時間を使うためには、
デジタルデバイスから一時的かつ物理的に身を置くことが有効です。
特に上述の6つの罠が仕込まれているのがスマホやPC。

そうしたデバイスから離れて、空いた時間を使って別の行動を起こしてみましょう。
運動してみる、読書をしてみる、ゆっくり食事を味わってみる、何でも構いません。
別の行動に置き換えることで依存症的な行動は緩和することができます。
そうすることで真の自由を取り戻し、自分にとって本当に価値ある時間を過ごすことができるようになります。

オンラインでいつでもどこでも誰とでも繋がることができるのは、
一見すると良いことだらけのようにも思えますが、何事もほどほどが大切。
ぜひ6つの観点から日頃の自分の行動を見つめ直して、時間泥棒から身を守りましょう。

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