あのターザンが驚愕した!野外研修を紐解く
2014.11.17
ツイート野外研修というカテゴリーをご存じだろうか。
私どもでは「アドベンチャー研修」と呼称しているが、自然のなかの専用施設で体を動かし体験しながら学習していく研修のことだ。もともとは1971年に人間関係づくりを目的にアメリカではじまった活動で、日本で展開されるようになってからは約20年になる。やスポーツ団体でもチームビルディングの観点から研修で導入されていて、確立された評価を得ている。職場は年齢、性別、考え方など様々な立場の人と目的を共にする。好き嫌いが通るコミュニティではないので、相手のコミュニケーション能力も気になるが、自身の立ち居振る舞いは更に気にかかる。自分の対人スキルは客観的に捉えるのが難しく、修正点が分かりにくい。忌憚なく意見をしてくれる同僚や適切に指導をしてくれる先輩がいる輩は幸せだ。価値観が多様化するなか、何が善で悪なのか、明確に答えを出せないことの方が多いからだ。
アドベンチャー研修にはいわゆる「正解」がない。
ただ、利己主義や弱気、怠慢などがメンバーの心中にあると課題は達成されにくい。
どうだろう、組織内でコミュニケーションがうまくとれない原因もここにありはしないか。
野外研修は自然のなかでチームワークを駆使して課題を遂行する。課題はいくつもあるのですべては紹介できないが。
アクティビティ例その①【ザ・ウォール】
4メートルの垂直の壁をメンバー全員が乗り越える。身長、体重、運動能力などお互いの要素を考えながら達成方法を模索する。実行力、相互信頼、リーダーシップなど総合力が要求される。アクティビティ例その②【トラスト・フォール】
仲間が作った手のベッドに後ろ向きで倒れ込む。ステージ上のアーティストがファンのなかに飛び込むアレと似てるかな?恐怖心と信頼感との葛藤を乗り越えなければならない。他には指定された成果物をメンバーでDIY制作する課題などがある。
アドベンチャー研修には「正解」がないと記したが、少し補足。「方法に正解はない」の意。研修の課題はゴールが明確だ。加えて、自然という環境が大いに手伝って受講者に集中力が生まれる。
アドベンチャー研修では「私はチームに協力ができている」「私は発言を躊躇している」
又は「心中ではメンバーを批判している」など今、自分がチームに対して思う事やチームワークに如何に影響を与えているかが分かりやすい。受講者の心情が解放され、強さと弱さが明らかになるからだ。
野外に環境を移し、チームビルディングへのアプローチを変えることの効果である。
課題完遂後の振り返りでは、成功・不成功についてその原因を深く掘り下げる。メンバーはお互いを支援し共に挑戦できたか、また、支援を受ける側の受講者は謙虚であったか、卑屈ではなかったか、感謝できていたか。共同作業において各々が利己的でなかったか、ルールに対し怠慢はなかったかなど。課題遂行中は技術的に無理だと思っていたこともそれは他責なだけで、上記のような振り返りをしてみると、発想が偏っていた事やメンバー同士の協力が不十分だった事が不成功の原因である事が多い。自分が提供できる知恵や能力を惜しむことなくチームに与え、弱気を克服して実行すれば、大概のことは達成可能なのだ。
ところで、アドベンチャー研修で行う人間関係づくりは非常にシンプルだ。
課題達成に最もふさわしい陣形をとればよい。
思わぬ人物がリーダーとなりストーリー展開するかもしれない。非日常のアクティビティが課題なので、そういう事も稀ではない。しかし、お互いを尊重し、相手を責めないのが原則だ。同期入社の集まりでも、部単位での受講でも、この原則を犯してはならない。各々の個性、役職や立場を尊重しつつ協力をしあう。思い返してみて欲しい、職場でもリーダーとフォロワーが与えられた役職どおりに機能しているとは限らない。
野外研修は環境を自然に移して行う。課題も日常とかけ離れたアクティビティだ。
しかし、学習結果である“気づき”を職場へ落とし込むことが容易な不思議な研修プログラムだ。
行き詰り、混乱して自分の弱さを知る、しかし同時に支援され(または自らがメンバーを支援し、)他者貢献が有意義であることが分かる。自分の強さも見えてくるのだ。打ち克ち、プロセスを創造するたびにチームシナジーを実感できる。健全な組織を育むベースがここで出来上がる。