連載「芝を刈らないリーダー」第3回
勉強会の準備30時間のうち、24時間は資料を形にする作業に消えている。前回はその内訳をお伝えしました。今回は社内教育を投資として捉え直し、AIで資料づくりを楽にすれば片づくのか、という疑問にも触れます。
誰かの無理で回る教育は、続かない
どの仕事にも生産性が求められるのに、教育だけはいまだにリーダーの善意に頼っています。大事な人材を育てる仕事だからこそ、誰かの無理ではなく、無理なく続く形にしたいところです。
そこで、教育を投資として見てみます。
教育の投資対効果 = 成果 ÷ 費用
成果とは、満足度のことではありません。数字に表れる変化です。費用も、作業時間だけではありません。その時間でリーダーが本来生み出せたはずの価値、つまり機会損失も含まれます。
成果に数えるもの
成約率が上がり、売上が伸びる
離職が減る
採用や育成のコストが下がる
費用に数えるもの
準備にかけたリーダーの時間
その時間でできたはずの仕事
後回しになったメンバーとの対話
成果を測るこつは、勉強会を始める前に、何が変われば成功かを一つだけ決めておくことです。報連相の勉強会なら、報告の遅れによるやり直しが減ること。営業の勉強会なら、提案から受注までの日数が縮むこと。先に決めておけば、終わったあとに効果を振り返れます。
準備の時間を、日数に置き換えてみる
仮に、毎月1回の勉強会に30時間ずつ準備をかけているとします。
いまの準備
360時間
毎月30時間 × 12回
勤務日で約45日分
型に任せて戻る時間
288時間
設計と開発 24時間 × 12回
勤務日で36日分
リーダーに残る準備
72時間
演出 6時間 × 12回
1回あたり6時間
1年のうち約2か月分の勤務日を、リーダーが資料づくりに使っている計算です。設計と開発を型に任せれば、そのうち288時間、36日分が戻ってきます。リーダーに残るのは、メンバーの前に立つための演出の準備だけです。
責任感の強いリーダーほど、自分でつくることが誠実さだと考えます。けれど投資の目で見ると、組織でいちばん代わりのきかないリーダーの時間を、資料づくりに使っている。厳しい言い方をすれば、資源の使い方を誤っています。努力が成果に届く前に、リーダーの余力が削られている。まずはそこに気づいてほしいのです。
設計と開発の24時間を手放すための型を、無料でお試しいただけます。
無料「心理的安全性の型」をダウンロードAIは道具であって、演出家ではない
AIで資料づくりを楽にしよう、という動きも増えました。ただ、AIを入れただけで会社の数字が良くなることはありません。
人件費は変わらないのですから、作業が楽になっても、空いた時間を新しい価値づくりに使えなければ、投資対効果は動きません。時間の使い方そのものを変えない限り、AIで組織は強くなりません。
もう一つ、AIで資料をつくれば済むのでは、という期待についても書いておきます。AIは情報をきれいに並べるのは得意ですが、人の行動を変える流れまでは描けません。
専門家が1時間の研修に平均43時間をかけるのは、見栄えのいい資料をつくるためではありません。どの順番で事実を伝え、どこで問いを投げれば、メンバーが自分事として考え始めるか。その流れを一つずつ組み立てているからです。
AIが出したそれらしい案を、現場で使えるように直す手間は、ゼロからつくるのとあまり変わりません。それなら最初から、専門家が検証を重ねた型を使うほうが早いのです。
AIに任せていいこと、任せないほうがいいこと
AIを避ける必要はありません。役割を分ければ、心強い相棒になります。
任せていいこと
誤字や言い回しの確認
自分の体験談を伝わる言葉に直す相談
事例や問いかけのアイデア出し
任せないほうがいいこと
勉強会の構成そのもの
自社の価値観や判断の基準
内容が正しいかの最終判断
構成は検証された型に任せ、言葉を磨くところでAIを使う。そして、内容が正しいかを疑う作業から離れた分、演出というリーダーにしかできない仕事に力を使ってほしいと思います。
次回は、教育を型と熱の二つに分ける考え方と、正解を語る人から演出家へ、というリーダーの役割の変化を考えます。
まなびスライド
資料づくりは型に任せて、リーダーは場づくりに集中する
研修業界で16年、650社を超える現場で磨いてきた学びの型を、そのまま使えるPowerPointにまとめました。100を超えるテーマから、1テーマずつ買い切りで選べます。
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対象:管理職・リーダー 所要時間:約60分 PowerPoint 本編13ページ 全ページに指導のポイントつき
- 心理的安全性とは何か
- 心理的安全性を高めるメリット
- 心理的安全性がもたらす働きやすい職場とは
- 心理的安全性の不足によって生じる4つの不安
- 信頼関係を構築する
- 発言する責任を理解させる
- 管理職・リーダーの側から問いかける
- 発言した内容に着目する
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この記事を書いた人
渡邉良文(わたなべ・よしふみ)
株式会社ヒップスターゲート FOUNDER 兼 CEO
人が勝手に育っていく職場の仕組みづくりをテーマに、株式会社ヒップスターゲートを16年かけてゼロから育ててきた。同社が研修を手がけた企業は650社を超え、現在は上場企業ビズメイツ株式会社のグループに加わっている。著書に『勝手に人が育っていく! 社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け』(かんき出版)。
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