HRD用語【過労死ライン】
2021.10.11
ツイート過労死ラインとは、名称の通り過労死に至るリスクが高まる残業時間を指します。現在は80時間と設定されており、病気などの死に直結するリスクに加え、自殺などを誘引する可能性がある労働時間とされています。
1カ月の法定労働時間は原則1日8時間・週40時間と労働基準法32条において定めされており、明確な記載もされています。
1項 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2項 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。
引用:労働基準法32条
加えて、病気や自殺を引き起こすリスクが高まる時間として、「発症前1ヵ月間に100時間」、もしくは「発症前2~6ヵ月間平均で80時間」を超える残業を行っている場合も該当するとしています。
具体的に想定しうるリスク
残業時間が過労死ラインを超えた際には、以下のようなリスクが想定されます。
健康障害の発症
長時間労働を行うことで、脳卒中やくも膜下出血といった脳疾患、さらには心筋梗塞などの心疾患が起こりやすくなります。
このような病気、さらには睡眠障害などの健康障害は、2~6カ月間に渡り80時間を超える残業をした際に、因果関係が確認されやすいことが証明されています。
また、身体的な症状だけではなく、ストレスによるうつ病など、精神疾患を患う可能性も高いとされています。最悪の場合、自殺に至ることも少なくありません。
残業時間と36協定
36協定とは
36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定です。
過労死ラインは月の残業時間が80時間と定められていますが、企業は36協定により、申告なく従業員に80時間の残業を強いてはならないことになっています。
企業が法定労働時間を超えて残業を命じる場合、特別条項付き36協定の締結が必要になります。特別条項付き36協定を締結することで、残業時間の上限時間を一般条項よりも長くすることが可能です。
ただし、特別条項によってあらゆる残業が許容されるわけではありません。以下の規則に違反した場合には、企業は厳しく罰せられます。
・時間外労働は年720時間以内(労働基準法36条5項)
・時間外労働及び休日労働の合計は複数月平均で80時間以内(労働基準法36条6項3号)
・時間外労働及び休日労働の合計は1ヶ月当たり100時間未満(労働基準法36条6項2号)
・45時間超過は1年につき6ヶ月以内(労働基準法36条5項)
単月での計算ではなく、年間での労働時間の計算が必要となるため、十分に注意する必要があります。なお、特別条項付き36協定は月の残業時間が45時間を超える場合に締結が必要となります。
過労死ラインを超えないルール作り
過労死ラインは、日々の勤怠を注視し、しっかりと管理する必要があります。未然に健康障害を防ぐという意味でも、制度として残業を禁止する工夫や、上司・部下の1on1を有効活用するなどの工夫が必要です。
また、リモートワークが普及したことで、勤務時間の可視化が難しくなっています。勤怠管理ツールの導入やデバイスへのログイン時間のチェックなど、可能な範囲で従業員の正しい労働時間を把握することが大切です。
過労死ラインが20年ぶりに改定
2021年、20年ぶりとなる過労死ラインの改定が行われました。
ただし残業時間そのものは変化しておらず、労働時間が過労死ラインである80時間に達しない場合でも、「休日のない連続勤務」や「勤務間インターバルが短い勤務」が認められう場合には、過労死ラインが認められることとなりました。
しかし、残業時間自体が短くならなければ、過労死自体はなくならないといえるでしょう。