令和時代におけるHRテックの活かし方
2019.11.29
ツイートHRテックとは―人事領域の高度IT融合サービス
HRテックはHuman ResourceとTechnologyを組み合わせた造語であり、企業の人事労務領域と先端テクノロジーの力を融合させて、新たな価値を創出するサービス のことを意味します。
HRテックを導入した企業は、クラウドを利用して従業員データを一元管理します。ここで集められたビッグデータは、給与や保険などの労務関連処理から業務改善、さらには人材活用のためのタレントマネジメントに至る幅広い人事領域において、戦略的に活用できるようになります。
日本のテック市場の夜明け
以前から、日本でも給与計算や社員の個人情報管理などの限られた領域では、自社のオンプレミスサーバーで、給与管理システムや人事管理システムを運用していました。
日本では多くの企業の人材不足が深刻化する一方で、終身雇用制度の崩壊と人材の流動化、さまざまな働き方、多様な人材、中途採用者の増加、そして企業のグローバル化など、従来の人事概念を覆すような事態に直面し、優秀な人材の確保や人材の有効活用が経営課題となってきました。
時期を同じくして、スマートフォンやクラウドシステムが浸透し、テクノロジーの飛躍的な進化によるビッグデータ解析やAIの活用も普及しました。
こうした企業の雇用情勢や技術的背景から、日本でも従来型のデータ利用ではなく、HRテックを駆使した人事ビッグデータを経営資源として活用することが急務となってきたのです。
平成時代のHRテック事情
世界的なHRテックの先駆けは、2005年設立の米国Workdayです。それ以降、米国のHRテック市場の拡大とともにWorkdayも成長を続け、2019年10月23日終値ベースで時価総額が249億米ドル超、日本円にしておよそ2兆6千億円以上の巨大企業になっています。
一方、日本ではHRテックの導入は米国にかなり遅れをとっています。HRテック後進国である日本でHRテックへの関心が急速に高まったのは、2016年に日産自動車が全社規模での「Workdayヒューマン・キャピタル・マネジメント(HCM)」の導入を発表してからでしょう。
日本でも、テックサービスのスタートアップが続々誕生
近年は日本でもHRテックサービスのスタートアップなどが続々と登場しており、とりわけ2017年頃からHRテック市場は急速に拡大しています。
日本のHRテック市場を牽引する代表的な企業をみてみましょう。
Smart HR/クラウド人事労務ソフトの日本市場シェアNo.1
従業員各自が個人情報を直接入力し、すべてのデータが自動的に蓄積されます。一元管理されたデータをもとに最新版の従業員情報が整備され、年末調整やWeb給与明細として利用することもできます。
ウォンテッドリー/国内最大のソーシャル・リクルーティング・サービス
Wantedly Visitでは、共感できるプロジェクトや企業をみつけたら、求職者は企業に直接エントリーできます。求人企業は、求職者のプロフィールをもとに、同じ志向をもつ求職者に対してスカウトメッセージを届けることもできます。ミスマッチが少ない採用を実現できるシステムです。
カオナビ/人事・配置クラウド分野でシェアNo.1「カオナビ」
全社員のスキルや評価履歴、性格などの個人情報にモチベーションまで、顔写真を切り口に、あらゆる個人情報を一元管理できます。企業の各部署は、常に最新の従業員情報を共有かつ高度に活用可能です。
進化するHRテック、令和時代の活かし方
令和時代の到来とともに、日本の本格的なHRテック時代が幕を開けました。一層の普及が期待される今だからこそ、企業にイノベーションをもたらしてくれるような、HRテックの活かし方をおさらいしておきましょう。
導入目的を明確にする
HRテック導入にあたっては、経営上のどのような課題解決のために導入し、どのような人事戦略で活用するのかを明確にしておきたいものです。
ビッグデータ解析の普及やAI化を意識するあまり、HRテックの導入自体が目的となってしまう事態は避けるべきです。
従業員情報管理にとどまらず、経営戦略の一環として活かす
一元管理する従業員情報を人事領域で活用するだけでなく、データを分析・解析して、最適な人材配置や経営上必要とする人材の育成に大いに活かすべきでしょう。
余力はヒトにしかできない業務に振り向ける
HRテックを導入すると、それまで人事担当者が行っていた処理業務を大幅に削減できます。業務効率化で生まれる余力を無駄にせず、ヒトでなければできないクリエイティブな業務に振り向ければ、生産性の向上につながります。
システムを適切にカスタマイズする
人事や労務に関する制度・慣習は企業によってさまざまです。HRテックの効果を最大化するためには、企業の人事体制や給与体系、運用実態にあわせて、システムを適切にカスタマイズした上で導入する必要があります。
令和時代のHRテック活用術
日本の企業にも急速に広がるHRテック。人事領域だけの業務効率化を目的にするのではなく、人材を重要な経営資源と考えて、人事ビッグデータを経営戦略に活用することがHRテック導入の究極の目標であることを忘れないでおきたいものです。