渡邉良文が語る社内勉強会のススメ【前編】
2021.10.08
ツイート2020年8月、株式会社ヒップスターゲート主催セミナーにて、代表取締役の渡邉良文が、自身の著書『勝手に人が育っていく!社員100人までの会社の社長のすごい仕掛け(かんき出版)』の内容をベースに、コロナ禍を生き抜くための企業経営の在り方を始め、社内勉強会が最強の人材育成である理由、そして自社に勉強会を根付かせるためのフローを解説しました。 そのセミナーの記録(全文書き起こし)を、全2回に分けてご紹介いたします。当日ご参加いただけなかった皆さまに、是非ご覧いただきたく存じます。
本日のキーワード「社内勉強会」とは?
本日のキーワード「社内勉強会」について、私の定義をお話しいたします。
私どもはファシリテーターを外部に委託せず、短時間で実施する学習のあり方を「社内勉強会」としています。ここでのポイントは、講師ではなく、ファシリテーターという点です。講師には、ある特定分野の専門知識や経験を、受講者に対して教えていくという役割があります。これに対し、ファシリテーターの役割は、参加者同士の意見や会話を促すことにあります。まずはここが社内勉強会の大きな特徴です。
次の特徴として、社内勉強会の開催時間が短時間であることが挙げられます。私は約3年前から企業における社内勉強会の実態調査を始めて参りましたが、約85社が、60分間という短時間で社内勉強会を実施していることが分かりました。いわゆる研修のように社員を7~8時間も拘束することなく、60分という短時間で実施する学習だということです。コロナ禍ですし、長時間密になることを避け、パッと集まって、ギュッと学んで、サッと解散できるところが、今の時代に相性の良い学習のあり方ではないかと考えます。
参加者全員のレベルアップを目的に、社員が知識や経験を持ちよって能動的に参加し、対話を通じてお互いを高め合う学習方法が社内勉強会で、ファシリテーターも参加者も、全員が対等な立場であるところが大きなポイントです。能動的であること、若しくはやらされている感が極力排除された環境で学ぶこと、そして、対話を通じてお互いが高め合っていくことが、社内勉強会の学習方法であると押さえていただければと思います。
戦時を生きる 社内勉強会で答え創りを
続いて、二つ目のテーマ「戦時を生きる、社内勉強会で答え創りを」についてです。まさに今、コロナとの闘いの2波、3波――戦時、戦いですね。弊社もかなり厳しい戦いを強いられているのが本音です。弊社では毎年4月、約4000人の新入社員をお預かりするのですが、今回は3月の第2週目あたりで、お客様から連日のように4月の新人研修の延期(無期限の延期)・中止の電話がかかってきました。それは本当に連日の対応となりました。2月までは、弊社の新人研修の受諾は会社創立以来の最高益を出す予定計画でいたにもかかわらず、3月にガラリと状況が変わってしまいました。結局4月、5月の新人研修は昨対で70%減まで落ち込んでしまったので、強烈なインパクトをもって3月の半ばを迎えることになりましたね。もう覚悟を持たざるを得ないわけです。ただ覚悟をしたからといって、状況が変わるわけでもないんですよね。私がしっかりしないとこの会社はまずいぞっていうところもありました。そこで、意識を変えていこうと。でも、私だけ意識を変えてもどうにもならない状況だったので、社員に、今の状況と1人ひとりが自立してほしいということ、意識を変えていって欲しいということを、長文でメールを打ちました。
では、どのように意識を変えて欲しかったのか。それは、答え合わせから答え創りへの意識変革でした。
平時であれば、皆様の上司や経営者、お客様――こういった方々は、会社経営や事業継続の答えを持っています。だから、その答えに会社は丁寧に、丁寧に合わせていけば、評価が上がり、売り上げにも繋がっていきました。例えば、市場のニーズをしっかりと汲み取って、それに対して適切な商品開発を行って、マーケットに投下します。そうすることで、商品は一定以上の売り上げを上げます。
これが戦時になった途端、誰も明確な答えを持てなくなってしまったんですね。まさに今、コロナの収束がいつなのか尋ねられたときに、答えを持つ人はいないと思います。そうなると収束日から逆算して、今、何をすべきかを考えられないので、手立ての判断が全くつかないのです。そうした中で、答え合わせはできないですよね。弊社の社員には、我々がイノベーションを起こすんだという気概を持って、答えをつくっていくことを、まず徹底しました。
どうすれば答えづくりができるかについてですが、例えば私どもの場合、資金調達の方法やコロナ禍での営業、お客様との接点の持ち方などを徹底的に自分の頭で考えたり、みんなの頭で考えたりしました。
4月、5月の売上は70%減ということで、仕事がほぼなくなっていたので、恥ずかしながら時間が結構余ってしまいました。弊社は4月からリモートワークに切り替えたのですが、毎朝全員で集まって、顔を合わせながら、これからのことについて話し合いました。答えは一つではありませんでした。そのことに気付けて、私は自然と勇気をもらえたんです。全員で考えた答えには、事業継続のためのアイデアやヒントが結構ありました。私も正直なところ、心が折れそうになっていましたが、社員との対話や、みんなで考えるという行為が、自分を勇気づけたんですね。自信を持ってもう一度、自分がしっかりしなきゃいけないんだと走り出す経験をさせてもらいました。
実は、このプロセスが社内勉強会そのものです。社内勉強会というのは、みんなで答えをつくり出していくということなんです。戦時において大切なことは何かというと、経営者から新入社員までが対等な立場で話し合いをしていくということ、これが事業を継続をしていく上で大事な施策なのではないでしょうか。それが、皆様にこの社内勉強会をおすすめする理由の一つです。
不測の事態は5年から10年に一度やってくると言われています。だとするならば、次の不測の事態に備えるために、社内勉強会を始める良いタイミングなのではないでしょうか。ただし、トップダウンに慣れている会社の場合、社員の方々は指示待ちの傾向が強いので、戦時だからといって「みんなで話し合うぞ!」となっても、すぐには適応しにくいですね。だからこそ、みんなで話し合って考えていくという風土づくりに、1日でも早く着手するのが良いと思うのです。コロナ禍での私の経験から、社内勉強会を勧める理由として、皆様にご紹介いたしました。
社内勉強会の本質を紐解く
ここからは、社内勉強会の本質の話に入っていきたいと思います。次の画像は、本質を紐解くにあたって鍵となる、人は何から学んでいるのかを割合で表した7:2:1の法則です。
今回は、“7”にあたる70%のオレンジ色「経験」にフォーカスしていきますね。人は、経験から学ぶと言われています。例えば、成功体験や失敗体験、自分の過去の経験から学びます。その他に、本を読んで学んだり、好きなタレントさんのYouTubeを見て話し方を真似してみたりします。デザイナーさんを例に挙げてみると、ただ街を歩いているときも、ポスターがあれば、そのデザインを見て学んでいるのだとか。つまり、興味・関心があるものに関しては、人は日常的に、能動的に学んでいるということです。誰かからコントロールされたり、義務感で学んでいるわけではありません。自分で選択して、自分で納得をしているという状態なので、非常に学びが深くなるというわけですね。70%の経験というところを押さえて、こちらをご覧ください。
学び方には三つあります。では、社内勉強会がどの学び方になるのかを紐解いていきますね。併せて、研修との違いについても感じ取っていただければと思います。
まずはフォーマルラーニングについて。これは文字通り、公式な学習のことで、人為的・計画的な学習です。集合研修、階層別研修、昇給・昇格研修、OJT、Eラーンニングがこのフォーマルラーニングに入ります。企業や人事部が選択したテーマを、義務的に社員に学ばせる学習方法で強制力があります。ですから、デメリットとしては、企業や人事部が学ばせたいと思うものと社員が学びたいものが、必ずしも一致するとは限らないということです。この乖離が大きくなるほど、やらされている感が強くなって、研修に参加しても十分な効果が得られない、ということになってしまいます。これは集合研修の永遠の課題なのではないでしょうか。
フォーマルラーニングと対極的な学びに、インフォーマルラーニング(非公式な学習)があります。人は日常的に勝手に学んでいます。それは自然発生的で偶発的な学習であり、自己啓発と呼ぶこともあります。デメリットは、企業の学んで欲しいときに学んでもらえないということが挙げられます。その理由として、参加者は自分で興味・関心があるときしか学ばないからです。
そこで私は、フォーマルラーニングの計画的な部分(学ばせたいときに学ばせる)と、インフォーマルラーニングの良い点である自然発生的な部分(興味・関心があるものについては能動的に学習する)のいいとこ取りの位置に、セミフォーマルラーニングを設定しました。もちろん、これが社内勉強会です。
セミフォーマルラーニング、つまり社内勉強会は、社員の自然発生的な学びを、複数の社員で計画的に共有しようというものです。学びの成果を共有のナレッジにすることが社内勉強会の本質です。簡単に言ってしまうと、社員1人ひとりが勝手に学んだ知識やスキルを、組織の総合力に当てていくということです。皆様のイメージと、少しずつズレが生じているかもしれませんが、このあたりが弊社が社内勉強会を推奨する所以です。
後編では、実際に社内勉強会をどうやって立ち上げていくのかについて、ご紹介していきます。私どもが推進・推奨している8つの推進フローがありますので、参考にしていただければと思います。
渡邉良文
株式会社ヒップスターゲート 代表取締役 ファウンダー
1976年、神奈川県生まれ。株式会社ヒップスターゲート代表取締役。 富士通株式会社を経て、人材育成業界へ転身。数社の研修会社にて講師、コンサルタント、営業統括マネージャーを経験。2007年、日本を代表する大手電機メーカーの新入社員1200人の研修を総合プロデュースし、大規模研修における独自のノウハウを蓄積。 2010年5月、人材教育コンサルティング会社「株式会社ヒップスターゲート」を設立。 現在は受講者を主体とした研修に注力をして商品・サービスを開発。受講者が研修に没頭できる環境を実現する「ビジネスゲーム」を提供したり、「人は誰でも、常に学習している(自ら成長できる)」をモットーに、研修内製化や社内勉強会といった、企業の人材育成の自走・自立のサポートに力を注いでいる。アーカイブ配信の申込
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