ファシリテーションの羅針盤 ファシリテーションスキル
ファシリテーションの役割は、集団活動や会議を円滑に進めて、合意形成や有意義な結果に導くことです。そして、ファシリテーションの成功には、ファシリテーター自身のメンタルトレーニングと、スキルの習得双方が不可欠です。
今回は、ファシリテーションの第一人者である堀公俊氏の著書『ファシリテーション入門〈第2版〉』(日経文庫、2018年)の「ファシリテーション4つのスキル」をもとに、ファシリテーションの羅針盤となる“スキル”について解説します。
ファシリテーションに必要な4つのスキルとは?
ファシリテーションに必要なスキルとは、いわば円滑な議事進行を促すための外面的なテクニック、ノウハウのことです。
上述の『ファシリテーション入門』によれば、一般的な話し合い(会議)のファシリテーションには、以下の4つのスキルが必要であると述べられています。
・場のデザインのスキル
・対人関係のスキル
・構造化のスキル
・合意形成のスキル
「場のデザインのスキル」― 活発で有意義な議論の場を設計する
議論の内容や目的は何か、誰をグループに参加させるのか、議論をどのように進めるかなどを明確に示して、参加者が能動的に参加できる環境作りをします。これによって、参加者は当事者意識や協働意欲をもって議論に臨めるようになるため、議論が活性化します。
とりわけ、円滑に議論を進めるためには、例えば問題発見プロセスや問題解決プロセスなど、議論の目的とグループ事情に合ったプロセスのパターンを綿密に組み立てておく必要があります。
「対人関係のスキル」― 参加者の意見を傾聴し、さらなる意見を引き出す
参加者の活発な意見交換と討議が有意義な議論につながります。そのため、ファシリテーターは、参加者それぞれの意見に耳を傾け、時にはあらゆるコミュニケーションスキルを駆使して、参加者の本音やより斬新なアイデアなどを引き出すことも求められます。
傾聴する、適切な質問でより発展的な意見を導き出す、あるいは話者の言葉を要約するなどの言語コミュニケーション、ならびに話者の表情や目線、声のトーン、態度などの情報を汲み取る非言語コミュニケーションのスキルが大いに役立ちます。
「構造化のスキル」― 議論の体系化と論点の絞り込みを行う
さまざまな意見が出揃ったら、議論の内容を体系化し、結論につながる論点を絞り込みます。図解するなどして、参加者にわかりやすい形で提示できるとよいでしょう。
議論が中盤にさしかかり、錯綜したたくさんの情報や意見を構造化するには、ロジカルシンキングのスキルがもっとも有効です。ロジカルシンキングを取り入れると、複雑に入り組んだ問題やさまざまな意見を整理して、シンプルかつ論理的に表現できます。これによって、誰でも簡単に、現時点での問題点や優先順位、問題の根本的原因、今後の争点などの情報を矛盾なく共有できるようになります。
ロジカルシンキングにはロジックツリーやピラミッドストラクチャーなど、多くの手法があります。議論の状況にあわせて最適なスキルやツールを選択して、問題解決の糸口を探ります。
「合意形成のスキル」― 対立を解消し、合意形成と建設的な結論に導く
議論が十分行われた段階で意見を取りまとめて、合意形成を図ります。このステージでは多くの場合、それぞれの意見を主張する人同士の対立が起こることが予想されます。ファシリテーターはこうした対立を解消して、建設的な結論に導かなければなりません。
このステージで、意見が対立する人たちの一部だけが妥協したり、圧力で押し切られたりする敵対的な解決方法では有意義な合意形成は望めません。
それぞれの意見を比較評価して、その中から優れた意見を選択する方法や、win-win型のネゴシエーションスキルで着地点をみつける方法、あるいは対立解消スキルを活かして、率直な意見を出し合える場を設けてから、問題を改めて洗い直して解決策を模索するなど、さまざまなスキルを活用して合意形成への道筋をつけます。
ファシリテーション成功への道、第1歩は必要なスキルを学ぶこと
ファシリテーションの成功は、経験値の高さだけがカギを握るわけではありません。ファシリテーターとして、冷静、公正に議事を進行できる強いメンタルと、その場に応じて4つの基本スキルを自在に使いこなせる能力が何より重要です。
メンタル面の強化には、日常生活や職場を問わず、日々のメンタルトレーニングの積み重ねが大切です。一方、スキルにおいては、まずはファシリテーションのスキルについて学ぶこと、その次に実践を積むことで習得します。
ファシリテーション能力はファシリテーターだけが必要とするものではありません。今や、生産性向上や働き方改革を意識する、支援型のリーダーにとっても必須のスキルとなっていることを忘れないでおきたいものです。
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