ケーキの切れない非行少年たち
2019.12.02
ツイート非行少年たちの真実
昔から生クリームとスポンジの組み合わせが大の苦手で、
誕生日のショートケーキが苦痛で仕方なかったE氏です。
子どもながらに親に申し訳ない気持ちがあって、ずっと嫌いだとは言えず、
大人になってから打ち明けたら、随分とビックリしていました。
さて、今回の推薦書ですがケーキはケーキでも甘い話ではありません。
むしろ読み進めるにしたがって、えっそうなの?と驚くことばかり。
非行少年たちの実態を知り、学校教育ひいては社会人教育について、
色々と考えさせられました。
著者:宮口 幸治
出版社:新潮新書 (2019年7月発売)
要約
●発達上の問題が犯罪や事件に起因している
医療少年院の子どもたちは「簡単な足し算や引き算ができない」「漢字が読めない」
「図形の模写ができない」「文章の復唱ができない」ことが圧倒的に多い
●周囲の大人は気づかない
軽度知的障害や境界知能(明らかな知的障害ではないが状況により支援が必要)でも
学校の先生や親に気づかれることは殆どない
障害の傾向やサインは、小学校低学年から出始めるケースが多い
●褒める教育では何も解決しない
早期に障害に気がついたとしても、その後の支援や教育が効果を成さねが意味がない
良いところを褒めて伸ばすのではなく、"苦手なことをそれ以上させない"ことが大事
●1日5分のトレーニングで子どもは変わる
見る力や聞く力、考える力は短いトレーニングで十分に鍛えることができる
E氏の私見
未成年者の犯罪、暴力事件などのニュースを耳にすることがありますが、
その背景には周りの大人たちが気づかない障害の問題があるのかもしれません。
「最近の若い人たちは何を考えているか分からない」
「話が通じない。すぐにキレる。」
「こちらの話を全然理解しようとしない。」
などと匙を投げてしまう前に、彼らの立場から物事や世界を見る必要がありそうです。
本人たちの実情やバックボーンを知らないままに事象だけを批判しても
何ら解決には結びつきません。
本書では非行少年に共通する特徴として「5点セット+1」が挙げられています。
①認知機能の弱さ…見たり聞いたり想像する力が弱い
②感情統制の弱さ…感情をコントロールするのが苦手
③融通の効かなさ…何でも思いつくままに行動する
④不適切な自己評価…自身の問題点がわからない
⑤対人スキルの乏しさ…人とのコミュニケーションが苦手
+1 身体的不器用さ…力加減ができない
こうした特徴を見て分かる通り、非行少年たちには反省させる以前に、
何が悪かったかすら理解できないのですから、ある意味ショッキングです。
見たり聞いたり考える能力が弱いのでコミュニケーションがうまくとれず、
親や教師が懇々と説明をしても無駄骨で終わるばかりではなく、
「この子は言っても聞かないダメな子だ」というレッテルが貼られてしまいます。
そうすると本人は対人関係に支障をきたし、勉強にも挫折し、いじめを受ける。
いじめられたことによる怒りの吐口を自分よりも弱者にぶつけて、新たな被害者を生む。
そんな負の連鎖が起きてしまうことになります。
一方で軽度な知的ハンディを持つ人は、健常人とは見分けがつきにくいものです。
通常の日常会話もできるので、どこに障害があるのかと疑問を持つかもしれませんが、
最も顕著に違いが現れるのが「何かに困ったとき」なのだそうです。
イレギュラーな事態が起きた時に柔軟な対応をしたり、
臨機応変に考えて行動したりすることが苦手であるがゆえに、
思いもよらないアクションを取ってしまうことがあるのだとか。
知的ハンディを持つ子どもたちに対しては、3つの支援があると、著者は言います。
学習面、身体面(運動スキル等)、社会面(対人スキル等)です。
このうち学校教育が主に担うのは学習面と身体面であることが主となっています。
それこそ社会面は大人になってから学ぶことが多いのではないでしょうか。
まさに新入社員研修などがそうですが、対人スキルの方法、感情コントロール、
問題解決、柔軟な発想といったものは学校ではほとんど学ぶ機会がありません。
最も大切な社会面の支援が学校教育や家庭教育の中でもなされるようになれば、
非行や犯罪といった暗いニュースも減っていくのかもしれませんね。
今回は以上です。
それではまた次回お会いしましょう!