人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱した概念。仕事に従事している本人ですら、その存在理由を説明できず、消えてなくなっても誰も困らないと感じてしまう「無意味で不必要な仕事」のこと。社会的価値よりも、組織の虚飾や管理のために生み出される業務を指します。
「自分がいなくても、この仕事がなくても、世の中は何も変わらないのではないか」――そんな虚無感を抱えながら働く人が増えています。かつては効率化が進めば労働時間は減ると期待されていましたが、実際には、社内調整のための会議や、形式を整えるだけの書類作成など、実質的な価値を生まない業務が組織を肥大化させています。
人材開発の視点で見れば、これは極めて深刻な問題です。人間にとって最大の苦痛の一つは、自分の行為に何の意味も手応えも感じられないことです。どれほど待遇が良くても、仕事に意味を見出せない状態が続くと、社員の自己肯定感は削られ、メンタルヘルスの不調や意欲の減退を招いてしまいます。
組織を運営するリーダーの皆さんは、部下の業務の中に「誰かを満足させるためだけの儀式」や「不要な監視のための手続き」が紛れ込んでいないか、常に問い直す必要があります。本質的な価値を生まない仕事に優秀な人材の時間を浪費させることは、組織にとって最大の損失であり、成長の機会を奪うことと同義です。
仕事の「手応え」を取り戻す
ブルシット・ジョブを減らすためには、単なる業務効率化(HOW)ではなく、その仕事が誰の役に立っているのかという「目的(WHY)」の再定義が欠かせません。
形骸化した報告書をやめる、承認経路を簡略化する。こうした小さな判断一つひとつが、社員に「自分の時間は価値あることに使われている」という実感をもたらします。余計な仕事を削ぎ落とし、社員が顧客や社会と直接つながる「手応えのある業務」に集中できるようデザインすることが、これからのマネジメントの重要な役割です。
仕事が「生存のための苦役」や「虚飾の儀式」に陥らないように。一人ひとりの社員が、自分の働きによって誰かが喜び、社会が少し良くなったと誇りを持てる状態を維持すること。それが、人材開発の本質的なゴールではないでしょうか。
部下の皆さんに、今日一日の仕事で「誰を笑顔にしたか」を聞いてみてください。
もし答えに窮するようなら、そこには見直すべきブルシット・ジョブが隠れているかもしれません。
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