肝心なことは伝わること
さて、先に述べた文書や映像を駆使したマニュアルが完成しても、それで終わりと安心してはいけません。
元来、人を成長させることは難しく、骨の折れるものです。ましてや、世代の離れた社員同士が、先輩後輩の立場で、若い人に伝えていくことはさらに難しいことです。その世代が離れるほど、言葉や価値観が違い、伝えたいことが半分も伝わらないということも起こります。
マニュアルを使う
マニュアルに関して言うと、マニュアルタイトルの件数が多いほど、安心してしまいがちです。私見ではありますが、特に管理職にその傾向が強いように思います。しかしマニュアルを何件作成したかより、その中で、何件が使えるマニュアルかが大切です。管理職は、実務を知らないがゆえに、単に、承認の印鑑を押すだけということも多いものです。
マニュアル作成を指示しても、担当者の手元で完結してしまい、上司に承認を得ないばかりか、使われないことも起こり得ます。
ポイントは、新人に仕事を教える際に必ずマニュアルを利用することです。そうすることで、マニュアの完成度、つまり「理解のしやすさ」「時代に合った表現」「教えやすさ」などの検証ができます。業務の基本がすべてマニュアルに記載されている状態が、強い企業の維持につながります。
真実からスタートする
さて、すべての問題の出発点は真実でなければいけません。マニュアルの内容が現実とずれていたり、改善のきっかけが、嘘であったり真因でなかったりすると、成果を目指す過程自体が無駄なものになります。新人を教える際にも、新人が理解できているポイントまで戻って、そこから始めることが大切です。
当たり前だと思われるでしょうが、世の中で不正問題が繰り返される背景には、真実を包み隠して都合よく捻じ曲げてしまうことが、一つの要因となっています。小さな出発点こそ「真実を追究し真実から始める」気概が、企業を守ることにつながります。伝承の段階においても、確実に伝えるためには、わかったふり、とか、教えたつもり、では、何のための後進育成なのか、その存在意義さえ薄れてしまいます。
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