再雇用と同一労働同一賃金
政府の提言する「一億総活躍社会の実現に向けて」という取り組みの中に、非正規雇用労働者の待遇改善「同一労働同一賃金」というテーマがあります。
全雇用者の4割、その数2千万人という非正規労働者の待遇を改善し、少子化問題や経済活性化などの構造的問題を是正していきたいという大きな戦略です。
定年後の再雇用という側面から見て、定年後に嘱託社員として再契約した場合も非正規労働であり、例えば、年齢条件によって雇用形態が変わったが仕事は変わらない、しかし賃金が極端に下がったといった事例が、同一労働同一賃金の考え方に立てば違うのではないかと訴訟になっているケースもあるようです。
一方で、若い世代や、女性の就労機会としてのパートタイマーやアルバイトという形の非正規雇用は、その待遇の低さから大きな問題があり、大きく是正していかねばなりません。これに比較し、冒頭の定年後の再雇用の問題は、若年層や女性の雇用問題とは大きく異なります。
なぜなら無事に定年退職を迎えその後をどうしようかという、本人に大いに選択の余地がある事例で、生活苦や結婚・出産ができないといった大問題を抱えておらず、若年層の悩みと比べると、さほど大きくないレベルといえるでしょう。
しかしながら、同じ仕事であるのにもかかわらず、この待遇の差は何かと、心情的に理解できるのかどうか、納得がゆくことかどうか、一人の人間としては重要な問題です。
正社員とは違う役割
これまでの正規雇用従業員としての立場と、定年後の再雇用で、有期労働者に立場が変わったとすれば、仕事の意味合いも、期待される役割も異なるでしょう。完全に同じ仕事で、立場も期待も同じという状況はほとんどの場合に生じないものと仮定してよいでしょう。
先般、タクシーに乗った際に運転手さんが語ってくれた言葉があります。
「私は、年金をもらう身で、この仕事をすることができていますが、若い人ならばとても、生活していけないレベルです。ですから、若い人は会社には入ってこないのです。」
やはり、超高齢時代という局面での同一労働同一賃金というテーマは、構造的に大きな課題ではなく、実は、今後の日本を支える若者と女性の雇用と生活を安定させることが目的となるべきであり、そのための解決策の模索こそ課題であるといえるでしょう。
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