2026.05.22

1on1で話すことがない?部下の沈黙を変える3つの質問と改善例

あゝ人材教育!3分ななめ読み

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多くの企業で導入されている1on1ミーティング。部下の成長支援やエンゲージメント向上を目的に、定期的に時間を設けている職場も多いのではないでしょうか。

しかし、現場のマネージャーや人事担当者の方々から、次のような切実な本音が漏れ聞こえてくるのもまた事実です。

「部下に『何か話したいことはある?』と聞いても、『特にありません』と言われて会話が続かない」
「気まずい沈黙に耐え切れず、結局上司である自分がずっと仕事の説教やアドバイスをして終わってしまう」

せっかく時間を確保しているのに、お互いにとって苦痛で不毛な30分になってしまっている。そんな悩みを解決するために、今回は特別な準備や高尚なコーチング技術を使わずに、明日からの1on1を劇的に変える具体的な方法をお届けします。


1. なぜ1on1で「気まずい沈黙」が生まれてしまうのか

定期面談の場を設けているにもかかわらず、なぜ会話がスタックしてしまうのでしょうか。よくあるオフィスの風景を振り返ってみます。

上司:「最近どう? 何か困っていることとか、話したいテーマはある?」

部下:「いえ、特にないです。順調にやれています」

〜10秒間の沈黙〜

上司:(沈黙に耐えかねて)「そ、そうか。あ、そういえは先週のあの案件だけどさ、もうちょっと進め方を変えた方がいいと思っていて。あと、最近ちょっと提出物の期限が遅れ気味じゃない?」

部下:「あ、はい……すみません、気をつけます」(そのまま上司の説教を25分間聞き続ける)

この時間は、部下にとっては「定期的にやってくるお説教タイム」であり、上司にとっては「時間を割いてアドバイスしてあげている時間」です。ここには対話が存在していません。

部下が「話すことがない」と言うのは、本当に何も考えていないからではありません。「何を話せば正解なのかわからない」「下手に悩みを打ち明けると、自分の評価が下がるかもしれない」「どうせ言っても、上司の持論を押し付けられて終わる」という防衛心が働いているケースがほとんどです。

上司側も、沈黙を「自分の指導力不足」と捉えてしまい、何か有益なことを言わなければと焦るあまり、自分の成功体験や指示をまくしたててしまいます。この焦りが、部下の口をさらに重くさせる原因になります。


2. 手ぶらで挑むからすれ違う。会話が弾まない構造的な問題

1on1の本質的な目的は、日々の業務連絡(進捗報告)とは異なり、部下が自分の仕事を振り返り、次の行動に向けた気づきを得ることにあります。しかし、多くの職場で1on1が機能しないのは、お互いに「手ぶら」でその場に臨んでいるからです。

「何かある?」というオープンすぎる質問は、部下の頭に強い負荷を与えます。白紙のノートを渡されて「何か面白いことを書いて」と言われているようなものです。特に経験の浅い若手や新入社員は、自分の課題を客観的に言語化するスキル自体がまだ未熟です。

何も持たずに会議室に入り、その場でゼロから話題をひねり出そうとするから、お互いの目線が定まらず、気まずい沈黙か、いつもの業務報告に終始してしまいます。会話を成立させるためには、精神論ではなく、場を支えるための物理的な「足場」が必要です。


3. 実例:沈黙の30分が「未来の作戦会議」に変わったあるチームの変化

ここで、1on1の進め方を少し変えただけで、コミュニケーションの質が劇的に向上した事例をご紹介します。

【事例:1冊の共有ノートから始まった対話の改善】

ある営業チームのマネージャーは、新卒2年目の部下との1on1でいつも沈黙が発生することに悩んでいました。「最近どう?」と聞いても「大丈夫です」の一点張り。業績は伸び悩んでいるのに、本音が見えない状態でした。

そこでマネージャーは対話のルールを変更し、オンラインの「1on1共有ノート」を導入しました。お互いの顔を見つめ合って話すのをやめ、PCの画面上で同じノートを一緒に見ながら進める形式にしたのです。ノートのフォーマットも極めてシンプルにしました。

・その後の姿

事前に部下が「今週うまくいったこと」「来週に向けて少し不安なこと」をノートに数行だけ書いておく運用にしました。1on1が始まると、上司は「大丈夫?」と聞く代わりに、「ノートに書いてあるこの『顧客への提案書の作成』だけど、どこに一番時間を取られた?」と具体的に問いかけました。視点がノートという共通の対象に向いたことで、部下はプレッシャーを感じずに「実は、構成案で迷っていて……」と本音を打ち明けるようになりました。気まずい沈黙はなくなり、今では具体的な業務の障壁をクリアするための作戦会議の時間になっています。

この事例のポイントは、お互いの視線を「対面(対人)」から「共有された情報(対物)」へとシフトさせた点にあります。これだけで、部下の防衛心は驚くほど和らぎます。


4. 1on1を劇的に変えるための3つの実践的なアプローチ

現場の1on1を不毛な時間にしないために、今すぐ取り入れられる3つの具体的なやり方をご紹介します。

転換①:「最近どう?」を禁止し、焦点を極小化する

「何かある?」という広い質問を一度やめてみてください。代わりに、部下が答えやすいようにテーマの範囲を狭めて問いかけます。

例えば、「今週、一番時間がかかった仕事は何だった?」「最近やった仕事の中で、10点満点中8点以上をつけられる手応えのあった作業はある?」「逆に、今一番マニュアルを見ながらじゃないと不安な業務はどれ?」といった聞き方です。焦点を絞ることで、部下は記憶を検索しやすくなり、具体的なエピソードを話し始めます。

転換②:事前の「1行メモ」を必須にする

1on1の直前、あるいは前日までに、部下側に「今回話したいトピックス」を1つだけメモに書いておいてもらいます。箇条書きの1行で構いません。

「手ぶら」で来させない仕組みにすることで、部下自身も事前に5分だけ自分の仕事を振り返るようになります。上司側も、そのメモを見てから場に臨めるため、最初の5分で迷子になることがなくなります。もし「特にありません」と書かれていたら、「じゃあ今日は、来月のタスクの優先順位について僕から話したいことがあるから、それをテーマにしよう」と、上司発信の場に切り替えても問題ありません。

転換③:アドバイスの前に「背景」を3回聴く

部下が「業務が遅れていて困っています」と口にしたとき、すぐに「じゃあこうしなさい」と解決策を提示するのを控えてみてください。上司がすぐに答えを出すと、1on1はただの指示受領の場になります。

部下が困りごとを話したら、「そうなんだ、どの部分で一番詰まってる?」「何が原因だと思う?」「ちなみに、自分ではどう進めるのがベストだと考えてる?」と、背景を重ねて聴いてみます。答えを教えるのではなく、部下自身に状況を整理させることで、自ら解決策に気づく力を育てていきます。


5. まとめ:上司が話し上手である必要はまったくない

1on1がうまくいかないと悩む上司ほど、「自分がもっと盛り上げなければ」「部下の心を開く巧みなトークをしなければ」と考えがちです。しかし、そのプレッシャーこそが、1on1を上司の独演会にしてしまう原因です。

本当に有意義な1on1を運営している人は、決して話し上手ではありません。むしろ、あらかじめ決めたシンプルなフォーマットに沿って、部下にスポットライトを当て、適度な距離で見守るスタンスをとっています。上司の役割は、回答を提示することではなく、部下が安心して自分の仕事を振り返られる環境を整えることです。

手ぶらで挑む不毛な30分を終わらせ、同じテーブルの上で課題を一緒に眺めるスタイルに変えること。来週からの1on1のあり方として、まずは「1行の事前メモ」を導入することから始めてみませんか。

1on1を機能させる4つのポイント

1.「最近どう?」を封印し、具体的な仕事の手応えや所要時間をピンポイントで聴く。

2.事前の共有ノートやメモを活用し、お互いに手ぶらで臨むのを避ける。

3.問題が起きたとき、すぐにアドバイスをせず、本人がどう捉えているかを先に深掘りする。

4.上司はアドバイザーではなく伴走者。部下自身の振り返りをサポートする立場に徹する。

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