単身家庭からみるとよくわかる
働き方改革において避けて通れないのが、賃金の問題です。いかにワークライフバランスを目指そうとして、小手先の改善を重ねても、低賃金のままでは、特に世帯収入の厳しい家庭にとって、副業や複数の仕事を行っていくことが余儀なくされます。また、父子家庭や、母子家庭というように、支える人が少ない環境では、一人に、責任が集中して、心身を犠牲にしてまで働かなければならないという極限状態すら生んでしまうことにもなります。
人間らしい生活を送るためにも、労働に見合った賃金を保証していきたいものです。かといって、安倍総理から、財界に向けて賃金アップをと、声だけ上げるようでは、何の効果もなく、余力ある一部の大企業が少しだけ上げるという現実では、国内の雇用環境に劇的な改善を加えるような活動には到底なれません。
失われた20年から、再起を図る
この問題は、企業の個別事情によるとはいっても、日本経済の失われた20年のように、企業はどんどん外国に生産の場を求め、投資資金は海外に流れ、雇用は海外で産み、その結果、下がった売価により、国内の賃金を下げざるを得なくなり、国内の仕事自体が減少し雇用も失われるといった、相当にひどい悪循環を日本は繰り返しているといえます。
さらには、日本の得意な技術を支えていたベテランが、定年を迎えると、働き場をなくし希望を失い、海外の企業に活躍の場を求めて人が流出してしまうというような事象も発生しています。日本の技術がどんどん流出し、結果的に、海外の国の技術レベルが上がり、また、日本の競争力が失われるという状態が発生しています。
シャープの事例のような、「世界の〜」と自画自賛していたはずの企業が、海外の資本に取り込まれる事態にまでなっています。日本の製品は優秀だと決めつけて胡坐をかいていては、いつのまにか、茹でガエルとなり、世界的には特に優れてもいないというようなことが、斜陽になってしまってから認識してしまうという悲劇的な事態にまで発展します。
日本人は、長期的なことを考えるのが苦手で、変化に対応するのは遅く、目先の利益を取ることばかりに目を奪われ、大所高所で判断できる経営者が少ないというのが実情です。特に、他人と同じことをやっていれば安心するという国民性から、このような悪い流れに乗っていても、気づかず、大変な事態になってしまってから、認識するということの繰り返しのようです。
企業は人なり
ヒト・モノ・カネの三要素が経営の要素で、人件費が上がるからといって、人がいることをまるで悪いことととらえるようでは、永続的な繁栄と発展はできないということを肝に銘じ、ヒトに払う賃金もどうあるべきかを設計していかなければなりません。日本の企業は、代表取締役だけに権限が集中しすぎるため、国家をあげてもっと高い視点から、声を上げなければ、経営者も気づかないことでしょう。
トランプ大統領にとっての、「メキシコ」を「中国・東南アジア」に置き換えて、日本の問題として、考えると、これまで歩んだ日本の風潮は、経営的に見ても、どうであったのか、再度見直してこれからの日本を、そして、自社の未来を考えていく必要があるでしょう。
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