これまで、働き方改革を進めるにあたっての考え方や、準備環境について述べてきましたが、次は、具体論に入ってまいりましょう。
長時間労働の問題
厚生労働省の、平成27年度の「過労死等の労災補償状況」による労災保険支給決定件数をみると、251件となっています。世に大きく報道された電通の類似事例が、251人分もあるということで、一人ひとりすべての方が報道に上がったとすると、平日にほぼ毎日、違う事例が一年中報道されるというレベルです。
長時間労働というものは、メンタル不全の状態も引き起こし、過労死にまで行きついてしまう、悪弊となっています。長時間に及ぶ労働は、百害あって一利なし、まずは変革すべき問題の筆頭にあると言えます。
よくないことを変えざるをえないのですから、この場合は、改革や変革という表現はそぐわず、働く文化や制度是正を要する必須の国家的課題と言えます。
仮に割増賃金が、100%支払われていると仮定しても、企業経営の観点からも、時間外労働による割増賃金の削減は、経費削減の意味からも大変に有用なことです。
そもそも、仕事というものは事業が永続的に繁栄を続けている限り、区切りはあっても終わりはなく、途絶えることがないものですから、何時間も延長して働くことを常としているような企業は、けじめをつけられず、無管理状態であることでしょう。もしくは、部下任せで、実態を把握すらしていないということもあるでしょう。そこには、賃金の不払いという違法なサービス残業も発生してしまう温床となります。
それでも、いきなり、完全に時間外業務ゼロ状態だけを目指すには、実態に対してそぐわず、時間外を行う場合と、抑制して行わない場合の判断の仕組みを決めればよいだけのことになります。
企業として、やる気があるかないか、経営者と働く人の取り組む意識の問題です。
本気でやる気になれば、できるものです。
高度経済成長時代には、モーレツに長い時間働けば働くほど評価されたような時代もありました。今や、働き方改革の時代には、時間的な尺度だけではなく、効率を重視し、いかに短い時間で、最大限の成果を上げるかが勝負どころとなるでしょう。
これから、AIとも競っていかなければいけない時代に、ダラダラとした働き方や生命までも犠牲にして身を粉にして働くような働き方をしていては、AIに取って代わられ、人間の働く余地はなくなるかもしれません。AIの優位性は、絶対的な速度と正確さにあります。
人間の労働を無駄とみなされることほど情けないものはありません。
働く価値を向上させて、いつの時代にも、やりがいを感じながら働きたいものです。
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