研修のディスカッションにおいて、模造紙に書き出された内容を見ると、何かしらの違和感を覚えませんか?参加者たちが一生懸命にアイデアを出し合ったはずなのに、そこに記された言葉はどこか他人事のようで、本音を感じることができない。なぜ、研修の場で出される意見は、建前ばかりになってしまうのでしょうか?この問いについて考えてみたいと思います。
ディスカッションの目的と参加者の心理
1. 研修の目的と参加者の期待
研修のディスカッションは、一般的に新たな視点を得たり、課題を解決するための場として設けられます。しかし、参加者はそれぞれ異なる期待を持っており、その期待が本音と建前のギャップを生む要因の一つといえるでしょう。 多くの場合、参加者は「良い意見を出さなければならない」というプレッシャーを感じています。このため、自己表現よりも、他者の期待に応えることを優先してしまうことが多いのです。結果として、模造紙には「自分が本当に思っていること」ではなく、「他者が喜ぶであろう意見」が書き出されることになります。
2. 社会的な圧力と集団心理
研修の場は、しばしば集団での意思決定が求められます。このとき、参加者は「場の雰囲気」を重視しがちで、自分の意見を通すことよりも、集団に溶け込むことを優先してしまうのです。これが「建前」の意見が多くなる理由です。 また、社会的な圧力も無視できません。特に職場の関係性が影響する場合、上司や先輩の意見に反対することをためらう傾向が強くなります。このような環境では、参加者は本音を語ることが難しくなり、結果として模造紙には建前の意見が並ぶことになります。
建前が生まれる背景とその影響
1. 異なる立場や役職の影響
研修には、異なる役職や立場の人々が集まります。このため、発言に慎重にならざるを得ません。特に上司がいる場では、部下は遠慮しがちになります。模造紙に書かれる意見も、上司の期待に応えるような内容が多くなりがちです。 また、役職によって求められる意見の質も異なるため、参加者は自分の立場に合った意見を選ぶ傾向があります。このように、役職の違いが意見の内容に影響を与え、結果として本音が隠れてしまうのです。
2. フィードバックの文化とその欠如
研修の場において、参加者が本音を語るためには、安心して発言できる環境が必要です。しかし、フィードバックの文化が根付いていない場合、参加者は自分の意見が否定されるのではないかと恐れ、本音を隠してしまいます。 模造紙に書かれた意見が建前ばかりになる背景には、フィードバックを受けることへの心理的障壁が存在します。これにより、参加者は「安全な意見」を選ぶようになります。
本音を引き出すためのアプローチ
1. 安全な環境を作るために
本音を引き出すためには、まず参加者が安心して意見を表明できる環境を構築することが欠かせません。研修の始まりにおいて、参加者全員に「いかなる意見も大切に受け入れる」というメッセージを伝えることが非常に効果的です。このような姿勢を示すことで、参加者は自らの考えを自由に発信することができると感じるようになります。
さらに、発言を行った際には、フィードバックをポジティブな形で行うことも大切です。例えば、参加者の意見に対して共感を示したり、具体的な感謝の言葉をかけたりすることで、彼らは自分の意見がしっかりと尊重されていると実感することができます。こうした配慮がなされることで、参加者はより率直に本音を語ることができるようになります。
2. 小グループでのディスカッションの活用
大人数でのディスカッションでは、参加者が本音を率直に表現するのが難しいことがよくあります。そこで、小グループでのディスカッションを取り入れることが効果的です。この形式により、より親密でリラックスした雰囲気が生まれ、参加者が意見を自由に述べやすくなります。例えば、5人程度の小グループに分けることで、それぞれのメンバーが発言する機会が増え、一人ひとりの意見が尊重される環境が整います。
さらに、小グループでの議論が終わった後、全体の場でその内容を共有するプロセスを設けることで、参加者の本音がより明確に表現されるようになります。このように、各グループの意見を模造紙に記録して発表することで、表面上の建前ではなく、真実の声が反映されるようになるのです。こうしたアプローチは、参加者同士の理解を深め、より建設的な議論を生む助けとなります。
まとめ
研修のディスカッションにおいて、模造紙に書き出された内容が本音ではなく建前ばかりになる理由は、参加者の心理や集団の圧力、役職の違い、フィードバックの文化など、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、安心して意見を言える環境を整え、小グループでのディスカッションを活用することで、参加者の本音を引き出すことが可能です。 研修担当者としては、これらのポイントを意識しながら、ディスカッションを進めていくことが重要です。参加者の本音が反映された意見こそが、研修の成果を高め、より良い職場環境を作るための第一歩となるでしょう。
人材育成でお悩みの方へ、
弊社サービスを活用してみませんか?
あらゆる教育研修に関するご相談を承ります。
お気軽にお問い合わせください。
-
- 人材育成サービス
- ビジネスゲーム、階層別研修、テーマ別研修、内製化支援
-
- DE&Iサービス
- ダイバーシティ関連の研修・講演・制作および診断ツール
-
- ロクゼロサービス
- 社内勉強会を円滑に進めるための支援ツール
-
- 教育動画制作サービス
- Eラーニングなど教育向けの動画制作