一億総活躍、そして生涯現役
聞こえはいいですが、現実問題としては60歳を前後に、両親の介護の必要性が出てきます。
子育てを終え、しばらくすると両親の介護に追われる。どちらもキャリアとの両立は難しく、場合によっては、数年間就業を休んで専念するほどの境遇となります。育児休業制度や介護休業制度もありますが、日本においては、気兼ねなく充分に取得できる文化はまだありません。職業人としては危機的な環境となり、普通に勤めることさえままならない、いかんともしがたい毎日が続きます。
そういった状況にあったとしたら、生涯現役という名目は通用するでしょうか。
人生に訪れる「谷」の部分では、誰もが輝く状態は理想論にすぎないということも少なからず、厳然たる事実として存在します。公的保障が十分に機能しているわけでもなく、保育や介護という分野では、その待遇の低さから、転職すら多く生じているのが社会の実情です。そのような状況を一向に解消できない政治にも国民はうんざりさせられます。
また、子供や親の存在のみならず、60歳という境界を超えた年齢の自分自身は、健康であり続けられるのか、老化という体力の衰えは目に見えない将来不安としてついて回ります。近年、60歳から70歳までは元気で若々しい人が増えていますが、人によってその程度は大きく違うでしょう。
このように考えると、この問題は、決して一つの企業だけで解決できるものでもないのが分かります。人と人があらゆる関係で支えあっているのが社会であり、その仕組みとも適合しなければ、絵に描いた餅になってしまうという事実が見えてきます。
カウンセリング制度も必要
人生の重大局面を生きていくにあたり、様々な難問が個人を襲います。まさか自分が、という想定外を迎えたときに、心のケアを誰がしてくれるのか。そのことさえも、自助の範疇なのか、特に、定年後の再雇用を迎えた人の心の悩みをケアするまではなかなか考えつかないものです。
若い現役世代の悩みに向き合うために、国としてストレスチェック制度を義務付け始めました。しかし、誰でも陥る恐れのあるメンタルヘルス的な危機は、すべての世代に共通しているといえるでしょう。このように、雇用を長く支える必要があればあるほど、従業員一人ひとりの人生に付き合う覚悟が必要となります。
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