増えるゾンビ社員
これまで長く賃金制度を形作ってきた日本の企業の多くは、公正な評価と処遇に近づけるために、制度設計を繰り返してきました。それが、ここへきて、政府の都合でいきなり、定年制の廃止や延長、そして、継続雇用制度の導入のいずれかを求められ、非常に困っているのが実情ではないでしょうか。
したがって、これまでの60歳定年の賃金制度に、取ってつけたかのように5年間をプラスした雇用制度が生まれているわけです。多くの微妙な延長制度は、この「取ってつけた」が原因となっています。
定年延長や継続雇用の対象者が、待遇を愕然と減らされ、漠然と、5年、場合によっては3年という時間の経過だけに身を任せているような状態さえ生じてしまいます。
忙しさにまぎれていると、1年から5年は、あっという間に過ぎてしまいます。それだけに5年という範疇では、制度設計もなく地位の上昇も下降もなく、まさに取ってつけた5年となってしまいます。
これは、人事の側面からして非常に厄介な5年間であり、社会的要請にこたえてはいるものの、5年間も中途半端な雇用を続け、その人数も増えていくことになります。この5年を有効に生かしている企業はどのくらいあるでしょうか。
延長された5年間を生かすには、確かな方針と効果的な制度設計が必要と思われます。
40年+5年にするか、45年のワークライフプランにするか、5年という歳月は、サラリーマン人生の9分の1を構成します。この9分の1を、惰性で、無意味に低空飛行を続ける完全引退までの助走とするには、長すぎるのではないでしょうか。
5年を活かす
この5年を有効に機能させるには、真の意味での「働き方の改革」をすべきです。一人ひとりの希望と個性に応じて、経験を活かすのか、全く新しいことに挑戦してもらうのか。企業としても、やりたくてもできなかった思い切った社会貢献に回ってもらうとか、新しい在宅勤務制度を模索するとか、挑戦的で役割もやりがいも生み出す可能性が潜んでいそうです。
もちろん従来通りの、経験のあるベテランが、技術やマインドを伝承していく、若い人を指導していくという本来の役割は、充分に活躍の機会も多いでしょう。しかし、この伝承が不満足なために力が落ちてしまう企業も存在するはずです。
可能性をぜひとも探ってみましょう。
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