やる気と意欲の源泉を紐解く
「最近モチベが上がらない・・・」
4~5月によく聞く言葉です。モチベーションという言葉の語源は「動かす」という意味のラテン語movereだそうです。人や動物の動きを理解することがモチベーション研究の第一歩であり、その動きを説明するものがモチベーション理論です。
普段、私たちが何気なく使うモチベーション。今回はそんな言葉にフォーカスを当てた書籍を紹介します。
タイトル:モチべーションの心理学-「やる気」と「意欲」のメカニズム
著者:鹿毛 雅治
出版社:中央公論新社 (2022年1月発売)
モチベーション理論
モチベーション理論の中には、「グランドセオリー」と呼ばれる包括的で著名な理論があります。
例えば「外発的動機付けと内発的動機付け」、「期待×価値理論」などがそうです。
外発的動機付けと内発的動機付け
大学のテストを例にとって考えてみると、Aさんは単位を取らないと留年になるので必死に勉強をしています。一方でBさんはその分野を深く知ることが楽しくて勉強をしています。Aさんにとって勉強は留年を避ける目的のための「手段」ですが、Bさんは勉強すること自体が「目的」になっています。
Aさんのように目的のための手段として特定の行為を行う場合を「外発的動機付け」、Bさんのように特定の行為をすること自体が目的となっている場合を「内発的動機付け」と呼びます。
期待×価値理論
1960年代ごろから進展して今日に至るまでモチベーションの考え方に対する基盤となっているのが「期待×価値理論」です。
人間には取り組むに値する価値があるからこそ行動するという傾向があります。つまり、その価値(魅力、望ましさ)を感じれば感じるほど、その価値を手に入れるために動きます。
しかしながら、価値だけではモチベーションを十分に説明できないのも事実です。一般的にプロスポーツ選手は人気が高く、価値がある職業であると考えられますが、学生の就職先としてプロスポーツ選手が人気ということはありません。なぜなら、そこは現実的に考えて自分には無理だと諦めるからです。このような実現可能性に関わる認識を「期待」といいます。どんなに価値を感じても、実現できる可能性がなければ人は動きません。
目標があれば、人は頑張れる!?
「外発的動機付けと内発的動機付け」、「期待×価値理論」といったグランドセオリーはシンプルで分かりやすいですが、モチベーションをより精緻に説明する、理解するには少々物足りない部分があります。そこで細かい点を説明するための「ミニセオリー」が提案されるようになり、その一つに「目標説」があります。
目標説
心理学では古くから、モチベーションは「目標」の問題として扱われてきました。人は目標があるからこそ、達成するための計画を立てて、行動を起こすと考えられます。
目標説の一つとして「目標設定理論」があります。より困難で、具体的な目標(ストレッチ目標=頑張れば達成できそうな目標)がモチベーションを高め、パフォーマンスを向上させる、というものです。
他にも本書では「自信説」、「成長説」、「非意識説」などのミニセオリーに関する記述が載っています。
やる気や意欲のメカニズム、心理現象を詳しく学びたい方は、ぜひ手に取って読んでみてください。
まとめ
私の好きな格言の一つに「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」というものがあります。「脳と心の取扱説明書」とも呼ばれる心理学Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)セミナーで初めて聞きました。
私たちは他人を動機づけたり、行動させることの困難さを時に軽視しがちです。
「ここまで言ってるのに、なぜやってくれないのか」
そうして自分の期待を裏切られたことに感情が乱れ、怒ったり悲しんだりします。
しかし、それは自分自身の過剰な「期待」が背景にあるためで、相手にとっては動く「価値」がないものと感じているのかもしれません。
本書ではモチベーションに関して詳しく解説されているものの、それを理解して応用することで人をコントロールすることを目指すものではありません。メカニズムを知ることで、自分の感情の振り回されることは少なくなるでしょう。
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