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あゝ人材教育!3分ななめ読み

新入社員研修の最前線で思うこと‐2015‐

2015.04.30

世間はゴールデンウィーク直前で、情報番組も旅先などレジャーの特集で華やか、楽しげだ。
通勤の車窓の眺めも新樹となり、季節はあざやかに展開する。
しかし、私たち、研修会社は今も、新入社員研修ただ中にいる。
実施のピークは4月一週・二週がピークだが、5月末までは、まだまだ強化月間だ。
新入社員研修は、受講者はもちろん、講師・研修会社にとって一年の核となる仕事の一つである。若手社員育成に事業の重きを置く研修会社は多い。いきおい会社としての評価はこの時期に集中して行われる。
その状況下、通常の数倍の量で案件が動くのだから、緊張の毎日である。システマチックに計画をしても、人間の手で運営するのだからミスもあるし、突発的なトラブルも予想される。

4月というと春の陽射しが思い起こされるが、花冷えの言葉にあるように、天候は崩れがちである。
雨が降れば電車は遅れるし、気温が下がって受講者の体調も芳しくない。
「学生から社会人への意識の切り替え」は新入社員研修に欠かせないプログラムだが、切り替えをするのは意識ばかりではない。
生活のすべてが変わっていく。社会人のリズムに慣れるまで、体は待ってはくれない。

週末をはさみ月曜日の朝に彼らと顔を合わせると、元気のない受講者がいるのが分かる。
気が張っている間は良いが、休日に体を休めて気持ちが乗らないままになるようだ。
話を聞くと、金曜日の夜に人事の方や、同期の仲間と飲んで遅くなり、午前4時頃に部屋に帰って、土曜日は一日寝て過ごしたという受講者もいた。体力のある若者の飲み方だ。
楽しそうにその日の様子を説明する彼らに「アレ?」と思う。上司との飲みの席を嫌がる世代だと思っていたからだ。「先輩の話しを聞くのが楽しい」と言って、次に誘ってもらえれば又行きたいと言う。
現実的で実質性を選ぶ傾向が数年続いたが、少し変わってきたのかもしれない。

さて、週末をはさむと受講者に疲れが見えるのは毎年のことである。
最近の研修は座学の時間をなるべく少なくし、グループワークやゲームを取り入れて受講者の気づきを促すものが多い。
故に、研修の現場そのものは和気藹々と楽しく進んでいく。しかし、新しい知識で頭をいっぱいにして一日を終える彼らは、自分でも気づかない間に緊張し、平常心ではない。
心の有り様は人それぞれだが、自分が入社した時のことを思い返していただきたい。
研修の場がすでにライバルとの競争に思えた人、何もできずこれからを不安にばかり感じた人。
何か特別な気持ちで入社一週間を過ごしたのではないだろうか。
そもそも社会人にとって集合研修は日常ではないから、新入社員に平常心を求めても無理なことかもしれない。
それに、マイペースな受講者を見て平常心を失うのは、案外こちら側かもしれないとも思う。

話しは変わるが、新入社員を送り出した家庭の日常も変わっていく。
手を離れていく娘・息子を頼もしく、又、ご自身の子育ての月日を想い、肩の荷が下りるような、幸せな気持ちでおいでのことと思う。
しかし、これもここ数年、毎年のように耳にするお話し。
息子の帰宅が遅いと言って人事に電話をかけてきたり、配属先を問い合わせてきたり。
いわゆる「子離れ」ができないでいるご両親は思った以上にいらっしゃる。
子供の意思とは関係なく、親側が一方的に行動を起こしてしまうのだから、新入社員としては迷惑な話しだが、その事柄云々よりも、そうした家庭で育った若者の自主性はいかばかりかと思ってしまう。子供は自立していて、親御さんだけが取り残されているのだろうか。
子供を想う気持ちは一つではなく、その形も家庭の数だけあることと思う。人様の家のことだから良いも悪いもないが、家庭の垣根を越えて就職先にまで影響するようでは困るのだ。

新入社員研修でのプログラムにビジネスマナーがある。敬語表現やビジネス文書には、仕事上特有の言い回しがあり、この機会に初めて知る物もあるだろう。
しかし、いつの頃からか、ビジネスマナーの項目に家庭の躾として身につける事柄も加わってきた。学校教育においても同様の事が言われるようだが、尤もだと思う。お聞き苦しいことと思うが、細かいことを言う。

・目上の人に相対するときの態度
・席を立った後の椅子の始末
・磨かれた靴をはいて出掛ける
・良い姿勢で過ごす
・女性は膝を合わせて椅子にかける

などなど。企業規模に関わらず、こうした項目は今では必須だ。研修プログラムを提供しておいて申し訳ないが、本当にこれが社会人の集合研修だろうかと自問する。いずれも躾の範疇だろうと思うからだ。

時が経ち、経験を重ねて新入社員は一流の企業人へと育っていく。これは間違いがない。
私が危惧するのは、一流の「社会人」となれるかである。

・ながら携帯で道を歩いていないか
・道いっぱいに広がって歩いていないか
・公共の場で大声で話していないか
・電車内で化粧をしていないか
・喫煙のルールは守っているか

などなど。これらも家庭の躾の範疇だと思うが、新入社員研修のプログラムには「会社の代表としての責任感」が欠かせない。
一社員の言動がその企業の社風、常識、全てと受け取られるという学びだ。
そう考えると、やはり、研修の範疇なのだろうか。
愚痴のような、お小言のような取り止めのない内容になってしまった。共感頂ければ幸いである。

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