自由なアイディアと感性を育む取組で、時代の変化を見通す人材を育成
2019.12.24
- 農林水産省
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大曲 英男(大臣官房政策課 企画官) 写真中央
前田 収(大臣官房秘書課 企画第2班 課長補佐) 写真左
長澤 沙織(大臣官房秘書課 企画第1班 管理官) 写真右
http://www.maff.go.jp/
時代の変化を見通せる人材の育成が急務
農林水産省の中でも秘書課と政策課はどのような役割を果たしているのですか?
- 前田
- 秘書課は省内の内部的業務の取りまとめをしています。異動、採用、給与などの人事関係、働き方改革など職員が機能的に働けるよう力を注いでいます。
- 大曲
- 政策課はどのような方向性で政策を打っていくかの大きな方針を考えています。ある程度の方向性を決めて各局に下ろしていくこともあれば、各課から現場の最前線としての意見を吸い上げ政府の方針に組み込んでいくこともあります。
貴省で働く新人・若手職員はどのような人が多いと感じていますか?
- 前田
- 私が接する若手職員はしっかりしているように思います。学生時代からスマートフォンに慣れ親しみ、そのスピード感に慣れているので情報処理能力が高い。一緒に仕事をしていると「この仕事って意味がありますか?」と聞かれることがあり、それはとても良いことだと思います。仕事の意味をきちんと考えながら取り組んでくれているということですから。
- 長澤
- 長く働いていると、ともすれば色々なことが定型業務になりがち。「もっと効率よくできないか」と提案してもらえると「なるほどね」と気づかされますし、その凝り固まっていない発想がありがたい。物怖じせずどんどん自分から提案して動ける人が多いと感じています。私たちの上司も若手の意見に耳を傾けてくれることが多かったです。省のトップである事務次官も「若手の提案を受け付けたい」と定期的にメッセージで発信しています。
貴省における現在の研修体系と求められる人材像について教えてください。
- 前田
- まず、職階別の研修があります。入省してすぐは社会人のマナーや農林水産省の職員としての基礎的な知識を学びます。その後はコミュニケーション研修や企画立案能力を磨く研修、チームを引っ張っていくことが求められるようになるとマネジメント研修。最近では部下の考えを引き出すためのコーチング研修も導入していますね。これはトップダウンの指示に従うだけでなく、職員が自ら考えて動く組織になるためです。加えて、「文書の書き方」といったその都度必要と思われる研修を実施することもあります。こういった研修を通じ、例えば農林漁業者の減少による生産量の低下や、AIをはじめとした最先端技術の活用など、時代の変化を踏まえて一人一人が自分なりに政策を考え、業務の仕方を工夫できる人材となり、結果として組織的なパフォーマンスに繋がればと思います。
- 大曲
- 技術は日進月歩です。これまで続けてきたことや目の前の業務をこなすだけでは時代の流れについていけません。外部の情報にも感度の高い職員を育てていこうと、政策課では農林水産省版オープンイノベーションを推進しています。
「チーム2050」をはじめとする取組でイノベーションを推進
具体的にはどのような取組を?
- 大曲
- 2050年に向けた長期的な視野から、問題意識を広く共有するための勉強会等を行う「チーム2050」、現行の部局や政策の枠を超え、新規性に富んだ政策をメンター幹部の指導の下、研究し政策につなげる「政策Open Lab(オープンラボ)」、職員から新たな政策のアイディアを募集する「政策のタネコンテスト」のほか、インプットの量を増やそうとの意図で、毎週第2・4金曜の15時以降をその時間に充てる「スタディフライデー」の取組を行っています。「政策Open Lab」のプロジェクトは公募となっており、審査の上、採択されると業務時間の2~3割をプロジェクトに充てることができます。これらの取組を通じて職員の自由なアイディアや感性を育み、世の中の変化に対応できる柔軟な農林水産省を作りたいと思っています。
外部を交えた意見交換や勉強会を行う「チーム2050」の認知度は省の内外で徐々に向上していますね。
- 大曲
- これは2016年から始まった取組で、有志の職員が「こんなことをやってみたい」と立ち上げたプロジェクトを政策課が事務局としてバックアップするものです。「日本の食」「フードテック」など将来の政策の種になりそうなテーマなら何でも構いません。スタートアップから大手企業の関係者、農業者、地方自治体の首長、料理店の店主など多様な方を講師として外部から招き、省内で勉強会を開催したり、企業を訪問し意見交換するなどの活動を行っています。現在、平均4〜5名のメンバーが参加するプロジェクトが17存在しています。チームが開催する勉強会等は職員に周知されており、誰でも参加することが可能です。外部とのネットワーク作りはもとより、外部の知見を共有する場という意味では研修的な機能もあると言えるかもしれません。
- 長澤
- 「チーム2050」をはじめ、このような勉強会がここ数年でぐっと増えてきているというのが一職員としての実感。以前はそれぞれの局内で完結していたものが今は省全体で共有され、誰もが参加できるようになっており、毎週何かしらの勉強会が実施されている印象があります。「研修の参加促進」は働き方改革の主要テーマの一つにも掲げていて、研修に参加しやすい職場の雰囲気づくりも大切にしています。私がワークライフバランス担当として開催している「ランチ勉強会」も好評です。この勉強会は「育児」「テレワーク」などとテーマを絞り、それにふさわしい属性の職員が講師を務めます。お弁当持参で昼休みの時間に実施しているので時短勤務の人でも参加しやすい。内容も、実践できそうなことが多く、ためになると参加者の満足度は高いようです。
コミュニケーションの在り方や働き方の変化に対応できる柔軟な組織へ
イノベーションを起こすための様々な取組を実施しているのですね。ちなみに「チーム2050」の一環で、ヒップスターゲートがチームビルディングの支援に携わらせていただきました。ゲーム形式でコミュニケーションを学ぶ『ブラックジャックによろしくゲーム』はいかがでしたか?
- 前田
- 楽しみながら取り組めたのでとても盛り上がりました。漫画を題材にしている点が参加者にとって親しみやすかったと思います。
- 大曲
- 参加した職員から聞いたところによると、普段の業務では経験できないシチュエーションの中で知らない職員とコミュニケーションを取る必要があり、コミュニケーションの難しさと重要性を再認識したようです。
- 長澤
- 研修の項目の一つとしてコミュニケーションは重視していますが、それだけではなく業務改革の一環としても、コミュニケーションの活性化はとても大事な視点だと思っています。というのも、ペーパーレスの観点もあって、紙ベースで顔を突き合わせて相談していた仕事の仕方が変わり、メールでのやり取りが多くなっているからです。また、以前と比べて飲み会の機会も減っています。業務の効率化を進める上で、チャットツールの活用などの新たな働き方を模索することは必要だと思いますが、Face to Faceでのコミュニケーションも置き去りにしてはいけないと考えています。
そのほか、人材育成や研修に関して感じていることはありますか?
- 前田
- 業務の性質上、その場を離れられない職務の人もいます。そのような人は省外の施設にて1泊2日で行われる研修には参加することができません。普段の業務から離れ、OJTでは学べないことを身に付けるのが本来の目的ですので、仕方がないこととはいえ「もったいない」と思ってしまいます。eラーニングも導入していますがロールプレイングやコミュニケーションなどはカバーできませんので…。
最後に、今後の展望を教えてください。
- 前田
- 個人的な意見となりますが、時代の流れや変化を見通し、それに応じた企画立案や業務遂行ができる農林水産省になっていくべきという方針は変わらないと思います。加えて、様々な取組やきっかけを通じて組織を活性化することで、マネジメント能力などの高い職員が多くなればと思っています。当省の職員数が増えない一方で、育児や介護など制約のある働き方をしている職員もいます。様々な条件の中、限られた人員と時間の中で創意工夫をしながら成果を出していける柔軟な組織になっていく必要があると思います。
大曲 英男(おおまがり ひでお)
政策課企画官。主に農林水産省版オープンイノベーションを担当。チーム2050、政策Open Lab、政策のタネコンテスト等の取組を事務局としてサポートしながら、農林水産省の内外とアイディアなどの政策資源の流出入を行い、組織内部のイノベーションを促進する役割を担っている。
前田 収(まえだ しゅう)
秘書課課長補佐(企画第2班担当)。主に農林水産省内の研修関係を担当。省内の研修の取りまとめを行う一方で、自ら研修の一部を企画。職員の職階に応じた研修内容を考えることなどを業務とし、職員の能力向上に努めている。
長澤 沙織(ながさわ さおり)
秘書課管理官。農林水産省内の働き方改革やワーク・ライフ・バランスを担当。テレワーク・フレックスタイム制の推進や、ワーク・ライフ・バランスのためのランチセミナーの企画も行っている。業務見直しプロジェクトの事務局として、省内での働き方改革の機運を高める役割を担っている。