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お客様の声

ファミリーマートが進める「成長戦略」としてのダイバーシティ推進

2020.03.17

株式会社ファミリーマート
(写真左より)

管理本部 人事部 副部長
中村 幸恵

管理本部 人事部 ダイバーシティ推進グループ
土濃塚 友李

管理本部 人事部 ダイバーシティ推進グループ マネジャー
竹ヶ原 牧

会社概要

株式会社ファミリーマート
〒108-0023東京都港区芝浦三丁目1番21号
TEL.03-6436-7600(代表)
https://www.family.co.jp/

「あなたと、コンビに、ファミリーマート」をコーポレートメッセージとし、地域の家族のような存在を目指しフランチャイズビジネスのコンビニエンス事業を行う。日本全国に16,552店舗を展開する(2020年2月現在)。

インタビュー背景

フランチャイズビジネスによるコンビニエンス事業を行うファミリーマート。日本全国に16,552店舗を展開しています(2020年2月現在)。高校生から年配者、外国籍労働者など、多様な人々が働くファミリーマートではどのようなダイバーシティ推進が行なわれているのか。人々の生活に身近なインフラとなったコンビニエンスストアを運営する巨大カンパニーでダイバーシティ推進を担う3名に話を伺った。

「女性活躍」から真の組織活性化へ

ファミリーマートで展開されているダイバーシティ活動の経緯について教えてください。
中村
まず澤田貴司が社長に就任した2016年9月当時、社内における女性社員の活躍が非常に少ない状況がありました。澤田の言葉を借りれば「おじさんばっかり」です。弊社のダイバーシティ活動はそんな社内状況を見て、「このままでは先がない」と危機感を覚えたところに端を発しています。

翻れば、我々が営んでいるコンビニエンスストア事業の現場となる店舗には、女性のお客様も多数来店され、女性目線の店舗づくりが欠かせません。さらに、お店を支えるストアスタッフには女性も男性も関係なく、シニアの方や外国籍の方など、本当に幅広い人々が活躍しています。しかしながら、肝心の本部は多様性に乏しい状況がありました。

そこで、2017年3月に発足した社長直轄の専門組織が、「ダイバーシティ推進室」です。

ミッションとして「like Family 多様性をちからに。誰もが活き活きかがやく未来へ。」を掲げ、本格的なダイバーシティ推進の取り組みを開始しました。

ファミリーマートでは、ダイバーシティ推進活動を「成長のエンジン」として位置づけています。これからの企業の成長に欠かせないため、CSRのような取り組みではなく、経営戦略の一つとして、生き残りをかけた未来をつくる取り組みであると捉えているんです。
中村
初年度となった2017年度は、「トップダウン」「ボトムアップ」「正しいリーダーの育成」の3つを柱として、「女性の活躍」に特化した推進をし、2020年度末までの女性社員および女性管理職比率のKPIを設定しました。

主な取り組みとしては、女性活躍のためのボトムアップを目的とした「FamilyMart Women Project(FMWP)」(※注)などです。
(※注)「FamilyMart Women Project(FMWP)」
2~3年後の自分たちのあるべき姿をイメージしながら、それぞれの部門の課題を “女性同士で” 考える。課題を実際に解決するために、4週間の実証実験を行ない、最終的に成果の上がったものを称え合う「FMWPカレッジアワード」も開催した。
中村
これまで、女性は “アシスタント” 的な役割を担うことが少なくありませんでした。しかし、これらの取り組みが「女性も “企業改革の一員” である」との意識を根付かせる大きな効果を発揮しています。

また、女性の活躍のためには男性の理解と意識改革が不可欠なので、男性への働きかけも積極的に行なってきました。

現在までで、女性の離職率の低下や女性管理職の増加が見られ、日本生産性本部主催の「第3回 女性活躍パワーアップ大賞」において優秀賞を受賞するといった結果も残すまでに至っています。

それから、2018年度は課長職を対象とした「多様性マネジメント研修」や「無意識バイアスe-learning」を実施。2019年度には裾野を広げてLGBTや障害のある方、外国籍の方々についてもインクルージョンの推進を進めてきました。

全国のチームが参加する「ダイバーシティ・アワード」

2018年から行なわれている「ダイバーシティ・アワード」について教えてください。
竹ヶ原
ダイバーシティ・アワードでは、全国から価値創造に向けた活動を募集し、予選を突破したチームが最終プレゼンを行います。そして当日の会場審査で最優秀チームを決めて表彰する取り組みで、年に1回開催しています。

取り組みに関する制限は一切ありません。部門ごとの課題解決や価値創造のために自由な発想で取り組むという形でスタートしました。

最優秀チームを決めてそれぞれの素晴らしい取り組みを称えると同時に、「アワード」として開催することでより多くの社員に知ってほしいという思いもあります。多様性を活かし実際に成果を出しているチームは「自ら動き、自ら実感する」ことができています。部門ごとの自発性を引き出すためにもアワードは良い効果を発揮していますね。

多様性を活かし、自ら考え動くことが成果に繋がることを、アワードを通じて見聞きすることで、ダイバーシティに取り組もうとする組織が増えてきたんです。

初年度は現場の部門での取り組みが活発だったのですが、今年のダイバーシティ・アワードでは本部のチームが最優秀賞を受賞し、取り組みの広がりを実感しました。
中村
今回は全国からエントリーのあった40チームのうち、第1次審査を通過した6チームが本選に参加しました。
中村
7分間を持ち時間とし、各チームの1年間の取り組みについてプレゼンテーションを行なった後に、役員が講評、その後、全国からリモートで参加している社員も含めて参加者全体で審査を行うのですが、どのチームもかなり練習を積んできたことがよくわかる濃密なプレゼンテーションでした。

助ける・助けられるではなく、「個性を“価値”へ昇華する」視点へ

企画した星加先生の講演はいかがでしたか?
竹ヶ原
これまでも識者を招いての講演は行なってきましたが経営者などが中心で、専門的な知識を持ってご講演してくださった方は星加先生が初めてでした。

社員からは、「ダイバーシティがどのようなものか理解が深まった」「多様性を獲得していけるよう、マジョリティの意識改革が必要だと気づいた」といった声がありました。専門的な視点から、社員の理解を整理していただけた印象です。

ダイバーシティ&インクルージョンの活動というと、マジョリティとされる人々の頭のなかではどうしても、自分たちは「助ける側」、マイノリティは「助けられる側」という意識が生まれてしまいますよね。私自身もそうでした。しかし、星加先生のお話を伺ってその意識が変わったんです。

ファミリーマートが行なっているコンビニエンスストア事業が社会に与える価値を、多様な人々にとって意味あるものにしていくためには、「助ける」と「助けられる」の関係ではなく、一つひとつの個性や多様性をそのまま価値にしていかなければなりません。これは、2020年度に向かって取り組みを開始していくタイミングで、私たちが考えるべき非常に重要な視座だったと思います。

組織が「フラット」であることは、このプロジェクトの良さでもあり、同時にその難しさでもあります。通常の組織であれば責任者がいて、決定権を持って進めることができますが、メンバー全員がフラットな立場で意見を出し合いながら進めるので、いかにコンセンサスを取るかが重要です。ただ、能動性を持ったメンバーが参加しているので、共通のゴールが見えてくればプロジェクトは加速度的に進んでいくという側面もあります。
土濃塚
私は以前に一度、星加先生のお話を聞ける機会があり、そこでダイバーシティに対する新たな視点を得たんです。そして、今回の講演で改めて認識の整理ができました。「マイノリティ側をどうするか」だけではなく、いかにマジョリティ側の意識を変えて取り組むことができるか。そこに焦点を当てる必要があるんですよね。
ダイバーシティ・アワードに取り組むうえで、参加する社員の自発性を引き出したり、モチベーション向上を図ったりするために、どのような工夫をされましたか?
中村
去年と今年ではまったく異なるチームが選抜を通過しました。各部門の推進を見ていると、やはりリーダーの意識が大きいのだと思います。

あとは、1年、2年と重ねていくなかで、自走できるチームが増えてきたように感じていますね。「アワード」を目指して活動していくことが大きな推進力になっているのだと思います。

企画を進めるにあたっては、参加した社員が「どのようなメリットを持って帰れるのか」ということを常に念頭に置き、グローシップの小田桐社長(当時)と一緒にアイデアを出し合い、決めていきました。

DIVI@Sonyでは、毎年ダイバーシティ推進に関する意識調査を行なっています。そのなかには一般社員と管理職で差が出る設問があります。例えば、管理職はD&Iを推進している実感があっても、部下はあまり実感がないなどです。聞いてみると「実際に現場で何をすればいいかわからない」という声が多くありました。そこで現在は、社員が現場で具体的な行動に落とし込めるよう、講演会やセミナーを行なっています。
竹ヶ原
第1回のアワードを開催するにあたって、主催した私たちには「どれほどの社員、チームが参加してくれるだろうか」という大きな不安がありました。

しかし、蓋を開けて見れば、予想を上回るかなり多くのチームが自発的に参加をしてくれていたのです。各チームへの多少の働きかけはしていたものの、全国の社員の自発的なアクションがとても嬉しい結果でした。

自分たちの組織を良くするためにこの取り組みを上手に活用していたリーダーや社員もいたと思います。2年目の開催にあたっては、取り組みがうまく進まない部門から相談が来たりもしたんです。

そういった全国的な広がりがあり、2年目は体制的にも、また各チームの考案した企画内容としても、かなりパワーアップしたアワードとなりました。

これまでの苦労や出場した喜びから涙を流す社員もいましたね。
土濃塚
前回のアワードに出場できなかったチームが、今回、初出場を果たしたと歓喜の声も届きました。ダイバーシティ・アワードを一つの目標として、自分たちの伝えたいことを発信しようとしている部門が増えてきているんです。

そういったことが、今回の40チームの参加といったポジティブな結果につながっているのだと思います。

未来のために、息長く続けたい

今後の取り組みと、これから目指す姿を教えてください。
中村
これまでの3年間は、主に部門の深堀りを進めてきたイメージでしたが、次は部門を越えた横のつながりをつくっていきたいですね。

そのためにも、まずはLGBTのALLY活動を進めるプロジェクトを3月から始動させ、取り組み内容から参加メンバーとともに考えていく予定です。また、その他の横のつながりのテーマを、ダイバーシティ推進メンバーで、ああでもない、こうでもないと議論を重ねながら、新たな施策を検討しています。

ダイバーシティは息の長い取り組みです。薬で言えば「漢方薬」のようなもので、即効性があるわけではなく、飲み続けることで体質改善がされ、じんわりと効いていきます。それと同じように、何か少し施策を打ったからといって、劇的に状況が変わるものではありません。

最初は華々しく打ち出してスタートするものの、どうしても業績が悪くなると “二の次” になってしまう傾向があると思います。しかし、重要なのは継続です。

ファミリーマートでは「会社の未来のため」の位置づけとしてダーバーシティ活動を進めています。まずは継続し、ベースをつくることが私たちに課せられたミッションだと思っています。

誰もが活き活きと活躍できる。それだけでなく、いろいろな人の持つ力を結集することで、社会課題を解決していける企業になっていくことを目指して、これからも進んでいきます。
中村 幸恵 (なかむら・さちえ)
6年間の保育士経験を経て、証券会社勤務の後、1998年に株式会社サンクスアンドアソシエイツ(後のサークルKサンクス)に入社。IRに13年間従事し、2011年3月より総務部長に。ファミリーマートと経営統合後はCSR・コンプライアンス部を経て、2017年3月よりダイバーシティ推進部長。2020年3月からは人事部副部長として引き続きダイバーシティを推進。
竹ヶ原 牧 (たけがはら・まき)
大学卒業後、株式会社ファミリーマートへ入社。2年目に人事部へ配属。2度の育児休職を経て、2人目の育児休職復帰後は関連会社に出向し管理職に。2015年3月に出向解除となり、2017年3月よりダイバーシティ推進部門のマネジャーを務める。
土濃塚 友李 (とのづか・ゆり)
2011年、株式会社ファミリーマートへ入社。1年間の店舗勤務期間で店長を経験。その後6年間、SV(営業職)に従事。多様な考え方に触れることで自己変革を促す取り組みを社内でも推進したいと思い、新たな業務領域への挑戦を決意。社内のキャリアポイント制度で2018年3月よりダイバーシティ推進を担当している。

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